116.隔離
「スランド、ここで鹿島さんへ連絡。
オレは外の様子を見てくる」
そう言って、窓から飛び出し、通りに下りる。
ひとまず、千里眼。
街の周囲、全方向が壁に囲まれている?
いや、壁かどうかは分からない。
上空、その頂点に当たる部分、魔法陣のような文様が微かに光を放っている。
一番近くの壁へ。オレは通りを走りだした。
「駄目だ。中からは壊せそうに無い」
目の前の壁はキョウの街をドーム型に360度取り囲んでいた。
そして、ナイフを突き立てても、魔法を当てても変化がない。
硬い、のではない。
ナイフの刃を突き立てるとするするとナイフが中に吸い込まれていく。
しかし、抜いてみると傷一つ残っていない。
魔法も全て吸収されている、そんな印象だ。
試しに素手で触ってみると、微かな弾力があり押し戻される。
『そうか。どうも閉じ込められた様だな』
「外からはなんとか出来ないか?」
『分からん。外と連絡が取れないのだ』
「は?」
『ボイスチャットもメッセも、もちろん転移も、ここから外へ繋がる手段一切が使えない』
それって……。
「牢屋、みたいなもんか?」
たしか、そんな機能だったはず。
『そうだな。ログアウトは鹿島が先程試した。そちらは問題ないそうだ』
「街中の様子を見ながら、一度戻る」
『頼む。モンスターが出現してたらすぐ教えてくれ』
「分かった。一度切るぞ」
街中の様子を探りながら、スランドの待つ宿屋へ。
突然の事態に、ざわついてはいたが、モンスターの姿などはなかった。
普段より、プレイヤーの姿が少ない、そこが気になった。
「いやー、完全にしてやられたよ」
鹿島さんが苦笑しながら言う。
「街は目立った混乱は無いですね。プレイヤーの姿がほとんどありませんでしたけど」
今見てきた感想を伝える。
「それは、新マップ開放で人が少なくなってるからだろう。
聞いたか? 盛り上がってるみたいだぞ」
「へー。落ち着いたらじっくりと攻略するよ。だから、ネタバレはするなよ?」
「く、分かった」
「後は、パンクドール達も結構な人数連れて行ったからねー。
それと、南であわや戦争か? って言って野次馬も出てたみたいだし」
「あー、つまり、それが敵の狙いだと?
そしたら、まんまとやられた訳ですね」
「流石にこんなに大掛かりな手を打ってくるとはなー」
言葉とは裏腹に鹿島さんはさして悔しく無さそうだ。
むしろ、この状況を面白がっているふしすら感じられる。
「そうすると、黒幕はなんとか伯爵?」
「シシメタン伯爵。
ただ、彼も閉じ込めらていることには変わらん。
伯爵の動きを察した何者かが利用した、とも考えられる」
「それか、あえて、被害者を装っているか、だね」
ふーむ。
「で、何時までこの状況が続くんでしょう?」
オレは、問いかけてみたものの、その答えを持っている者はこの場にはいない。
「暫くは、相手の出方を待つしか無さそうだね」
解決するまでここに缶詰かー。
「とりあえず、連絡は取りやすくしておいたほうが良いだろう。
宿も、ここに移すか?」
「そうしとく。
リアルの連絡先も渡しておくよ」
「それは、鹿島に」
「ん? 別に良いけど、何で? お前でいいじゃん」
「あのさ、ジン、男女。男子と女子!」
そう言って、スランドはオレと自分を交互に指差した。
「あー、そういう事ですか。はいはい。
じゃ、鹿島さん、フレンド申請しておきますね」
「ああ。喫緊の時しか連絡しないから、安心してよ。
ま、君にその気があるなら相談事でも何でも送ってきて構わないけども」
「んー、相談というか、ずっと気になってるんですけど、お二人はどういう関係なのですか?」
改めて尋ねる。
「今、一緒に住んでるよ」
サラッと鹿島さんが答えたが、スランドは顔を赤くして視線を逸らした。
「へ、へー。そうですか」
他に、言葉がなかった。
町から出れず、目立つ行動も出来ないため、後のことは二人に任せてログアウトした。
一体、何時までこの状況が続くやら……。
少し、憂鬱になりかけていたがそんなものを吹き飛ばす出来事が。
[町に入れなくて、連絡も取れないけど無事ですか?]
リィリーからメッセージが来ていた!いや、百合谷さんか!?
どっちでも良い。と言うか、両方だ!
[完全に閉じ込められてます。
ログアウトは出来るので、暫く様子見です]
滅多に送ってこないだけに貴重なメッセージだ! 早速保護。
何の用もないのに送って来るヨーコと大違いだ。
二人を足して二で割るくらいが丁度良いんだけどな。




