111.失敗作
翌日、リビングに下りると、既に三人が待っていた。
テーブルの上には、食事の用意がしてある。
外は、夕方。
晩御飯か。
それと、客人が一人。更紗だ。
「よ、納品に来たよ」
「期待してるよ」
「先にご飯ね」
月子さんが、大きな鍋を運んできた。
あれは、パエリヤか?
「さ、みんな座って。更紗ちゃんも」
「はーい、ご馳走になりまーす!」
プリスは食後のデザートを味わうようにじっくり食べている。
「では、まずリィリーの分から。
マスターから武器も預かってるからついでにそれも渡すね」
「はーい」
仮想ウインドウをリィリーと更紗が操作する。
そして、リィリーの衣装が一新される。
「ホイ、鏡」
そう言って、更紗が大きな姿見を出現させる。
流石は服屋。そんなものも持ち歩いているのか。
「うん。バッチリ! さすがは更紗!」
黒ゴスなのは、以前と変わらないが、少し大人し目の印象。
フリルが少なくなったか?
「ま、当然ね。
で、ジンの方なんだけど……」
こちらを向き直り、仮想ウインドウを操作する更紗。
オレの仮想ウインドウ上に更紗からアイテムが提示される。
アイテム:【死竜のコート】 #ランク5 製作者:更紗
死竜の鱗を使ったロングコート。
ファーには白銀狐の毛皮と藍鴉の羽を使用している。
白のインナーはセット。
ミスリルのチェーン付き。
呪いのため一度身に着けると外せない。
物理防御値:25
魔法防御値:25
重量:12
AGI:2
INT:17
魔法防御性(中)耐熱 耐寒 防水 耐火炎 神聖術無効
装備部位:体
アイテム:【黒暴牛のブーツ】 #ランク4 製作者:更紗
黒暴牛の皮を使ったロングブーツ。
物理防御値:11
魔法防御値:2
重量:2
AGI:4
装備部位:足
「うわ、すげぇ!」
「ゴメン、素材の特性で失敗作になっちゃった」
「え? これで?」
「だって、呪いの装備だし、神聖術無効だと、回復効かないし」
白のファーに、黒の羽が混じった黒のロングコート。
……鎖、増えてるな。
腰の位置にベルト代わりの様に……。
「いや、まぁ、性能は問題ない」
そう言って、仮想ウインドウを操作し、早速装備する。
「あ、バカ! 話し聞いてた?」
「いや、問題ないんだって。あ、少し重くなってるな」
「私は止めたからね? 呪われてるから、もう外せないよ」
「いや、大丈夫」
そう言って、一時、コートを装備解除する。
「え、何で?」
「オレ、呪い解除できるの。そう言う体質」
「へー。でも、回復出来無いとしんどくない?」
「うーん、戦闘スキル的にそもそも回復するほどHPが無いから問題ないかな。
いざとなったら、アイテムで何とかするよ」
それに、神聖術無効と言うのは、霊化した時に有難い性能だ。
「ふーん。少し、釈然としないけど、まぁ気に入ったんなら良かったよ。
後、これ、オマケ。ワタシ的には微妙な品になっちゃったから」
アイテム:【カルセドニーのピアス】 #ランク2 製作者:更紗
小さなカルセドニーをはめ込んだピアス。
AGI:3
装備部位:耳
「お、サンキュ」
薄いブルーの小さな宝石のはまったピアス。
コートで少なくなったAGI補正をこれで補うのか。
「一応、前のコートも返しておこうか? 下取りしてもいいけど」
「これがあれば十分か。でも、記念に持っておこうかな」
「ちょうだい!」
デザートを食べていたプリスが、口を挟んできた。
「え? コート? でかいだろ」
「でも、暖かかったよ。また雪の所行くなら欲しい」
「じゃ、仕立て直そうか。プリスのサイズに」
「そうだね。そうしてもらおうか」
「わーい!」
「じゃ、今度持ってくるね」
「楽しみにしてるー!」
支払いを済ませたオレの財布が軽くなる。
まぁ、他に使い所が無いので別に良いのだが。
「そうそう、今度遂にルノーチに店を構えることにしたんだ!
なんで、これからもご贔屓に!」
うわー景気の良いことで。
「さてと、準備はこれで整ったわね。
行くわよ。ジン」
「おや、早速デートかい?」
残念。
塔の攻略。色気のない話だ。
「そうね」
え、そうなの?
最近、この手のからかいをリィリーが受け流す様になってるんだが、良いのかね?
「じゃ、行ってきます」
月子さんとプリスに手を降った直後、リィリーの転移でルノーチに飛んでいた。




