表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/179

108.竜の鱗

「竜、ですか」


 リィリーの装備を預けたので、今日の狩りは休み。

 リィリーはやりたいことがあるとの事で別行動。


 なので、オレは一人イズクモの教会に来ている。

 応接間で、司教に竜の伝承について尋ねようとそういう訳だ。


「ええ。なんでも神使の方が戦ったというような話を耳にしまして」


「確かに、テルファ様は死の国で竜と戦われたそうです。

 その証拠として、鱗がこの教会の宝物庫に置かれていますが」


「え!?」


 それだ!


「なんですか?」


「竜の鱗、それ、下さい」


「何をバカな。いくら神使の方といえども教会の宝をホイホイとお譲りするわけには行きません」


 ですよねー。


「えっと、いくらでしたらお譲りいただけませんか?」


「それも、些か難しいですな。値が付けられるよな代物ではありませんで。

 何せ、神使が死の国から持ち帰ったもの。

 その、由来だけで相当な価値が有るのは分かりますでしょう?」


 ふーむ。

 しかし、そこを何とか。


「では、同じ神使として、同程度の価値があるものと交換、ではどうでしょう?」


 ダメ元で、トレードを申し出る。


「それでしたら、考えないこともありませんが、その場合、相当高価なものになりますよ?」


「そうですねー。

 例えば、『聖玉』とか」


「それは、ビアーシェ将軍家の物です。

 確かに死と夜の神由来のものではありますが、そんなもの持っていたら、即お縄です」


 あ、そうか。

 聖玉が紛失したことは公になっていないのか。


「なるほど。そうですよね」


 うーん、他に交換できそうなアイテムに心当たりはない。


 ひとまずメニューを開いてアイテムボックスを眺めてみるがめぼしいアイテムなど無い。


「うーん、そうしたら、他の誰にも譲らないと約束していただけますか?」


「ええ。それはもちろん。そもそも、ここに竜の鱗があることを知っているのは、私と貴殿だけですので」


 よし、ひとまず、望みは繋がったな。

 では、交換できるような宝を探しに行こう。

 そう思って立ち上がったちょうど、その時、トントン、と扉をノックし女性が顔を見せた


「失礼いたします。司教様、儀式の準備が整いました」


「おお。そうですか。ご苦労さま。では、私もすぐに行きますので、暫くお待ちいただいて下さい」


 司教の声が、気持ち高くなる。


「畏まりました」


 そう言って、深々とお辞儀をし、部屋から辞去して行った。

 その様子を眺める司教の顔が、気持ち緩んで見える。


「あの方は?」


「訳あって、暫くここに置いている者です。

 何か仕事を、と言うので雑用などをやらせております」


 訳あって?

 ここは、駆け込み寺か何かなのか?


 それにしても。


「綺麗な人ですね」


「ええ、ええ。そうですね。それ故、苦労もしております。

 伴侶でも見つけて、幸せになって貰えばいいんですがね……」


 そう言って、司教はやや遠い目をする。


「司教様が幸せにして差し上げれば良いのでは?」


 司教が何歳なのか知らないが、見た目からは子どもがいても可笑しく無さそうに見える。

 なので、こんな言い方は見当はずれなのかもしれないが、敢えて言ってみた。


「な、何をおっしゃいますか!?私など、とてもとても……」


 ふむ。何やら悪しからず思っている様子。

 そうすると、これは宝を頂くチャンスなのでは?


「僕は、神使として、失恋の神、などという汚名は返上したいと思っているんですよ」


「はぁ」


「その為には、司祭様にも幸せになって頂きたい。

 見れば、先ほどの女性、憎からず思っているのでは?」


「そ、そんな事は……。相手もあることですし」


 なんだ、この反応。中学生か。


「実はですね、こういった物があります」


 アイテムボックスから取り出した小瓶を見せる。


「何ですか?それは」


「『惚れ薬』です」


 ミック、お手製の。

 効果の程は知らない。


「なんと!何という外道!!見損ないますな。そんな薬を使ってまで好いてもらおうなどと思っていません!」


「まぁまぁ。落ち着いて下さい。

 何も司教様に使え、だなんて一言も言っていませんよ。

 もし、好きあっているが、互いに一歩を踏み出せないと言うような人達がいたら、この薬が助けになるでしょう。

 そう言った話が広がって行けば、いずれ、失恋の神と口にする者の居なくなるかもしれません」


「そういう事でしたか……。

 一歩踏み出せない者……」


 多分、この司教は自分の事を考えているんだろうな。


「どうでしょう?この薬、竜の鱗と交換しませんか?」


 司祭は、暫し顎に手を当て考える


「……良いでしょう。宝も、倉庫で眠っているより使っていただいた方が有意義ですしな。

 暫しお待ち下さい。今宝物庫より、竜の鱗を取ってまいりますので」


 そう言って、司教は走って出て行った。

 あれは、確実に自分で使うな……。

 まぁ、効果の程は知りませんけど。


 バタバタと音がして扉が開く。



「ハァハァ、お待たせしました。これが竜の鱗です」


 差し出されたのは、両手で抱えるほどの大きさの爬虫類の皮。

 といっても、その鱗は手のひら大ほどの大きさだ。

 鑑定してみる。


 アイテム:【合成素材:死竜の鱗】


 ん?

 死竜だと?

 目的の物と若干違うが、大丈夫だろうか?

 更紗の所に持ち込んでみないと分からんな。


「では、確かに」


 そう言って、惚れ薬を渡す。


「しかし、貴方達は強引ですなぁ。何をそんなに焦っておられるやら」


 ほっとけ。

 こっちにはこっちの都合がある。

 リベンジまであと十日ぐらいしか猶予がないんだよ。


 ん?

 達って何のことだ?


「では、人を待たせてますので、私はこれで」


 惚れ薬を大事そうに懐にしまうと、司教は部屋から出て行った。


 では、更紗の所に行くとしますか。




「何これ?どこで手に入れたの?」


「内緒」


「うーん、素材としては問題無さそうだけど、ちょっと仕上がりは保証出来ないなー。

 ゴミになるかもしれないけど良い?」


「そこは更紗の腕を信じるよ」


「うわ、何そのプレッシャー」


「と言う訳でよろしく」


「はいよ。念のため今の装備も一式預かっていいかい?

 多少は改造出来るよ。

 リィリーが持ち込んだ素材の余りがあるから」


「じゃお願いしよう」


「毎度!」


「たまにはまけてくれよ」


「はっはー。かんがえとくよー。

 仕上がったら連絡するから」


「了解」


 装備一式を更紗に渡して、初期装備にローブを羽織っただけの姿になる。


 いや、縛鎖装備よりはマシなんだけどね。


 さて、久しぶりにミノさんの所に行きますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ