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11.術式分解

「これ、やべぇ……」


 たっぷり一晩悩んだオレが恐る恐る手にしたスキル【術式分解】の感想である。

 これでクソスキルだったら、迷宮最深部の玉座をメイスでボッコボコにしてやろうとか思ってた。


 術式分解。

 スキル効果は字のごとく、魔法の各種パラメータを操作できるというものだった。

 項目は[持続時間][威力][発動範囲][消費MP]などを細分化されており、各々個別に調整しつつ各項目が相互影響を及ぼしているのだ。

 [消費MP]を変えずに、[発動範囲]は狭めれば[威力]は向上、逆に[消費MP]を減少させて[発動範囲]も狭めて[威力]は変動無しなど。

 要は魔法のカスタマイズ。

 一種一パターンしか保存できないものの、再カスタマイズは何度も可能。

 で、試しに【石槍(ストーンスピア)】の[消費MP]の十割にして、[威力]を向上させてみたところ、目の前に現れたのは針の山。

 通常、地面が隆起し、高さ一メートルほどの錐形となり攻撃する魔法のはずなのだが・・・。


 まぁ、十割は極端だが、これはパラメータ振り分け次第ではとんでもない可能性を秘めているかもしれない。


 ちょっと、オレ、死に戻り覚悟でフィールドボス討伐に行ってくる。


 なんか、これなら何でも出来そうな気がする。



 出来た。


 実にあっさりと。

 道中は奇襲に気をつけつつ、千里眼駆使して、西フィールドのボス【シルバーウルフ】の元まで駆け抜ける。

 そしてMPポーション使ってMP全快。


 [消費MP]十割、[発動範囲]を極端に狭め[威力]に全振した、超々高火力【火柱(ファイヤストーム)】をお見舞いした。

 地面から一直線に立ち上る極細の火線は、まるで粒子ビーム。

 シルバーウルフが着弾と同時に蒸発する。

 一瞬で三本あったHPバー全てが全損。

 ニケさんの事前情報だと、HPバー、一本欠損する毎に取り巻きの狼がダース単位で増えるという話だったが、そんな暇すら与えなかった。

 これ、完全にバランス崩壊してないか?


<ポーン>

<西の平原ボス・シルバーウルフを撃破しました>

<ボス討伐ボーナスとしてSP10獲得しました>

<単独討伐ボーナスとしてSP30獲得しました>

無傷パーフェクト討伐ボーナスとしてSP30獲得しました>


 そしてレベルアップ。


 【ジン】 #LV.11

 HP:100

 MP:245(↑15)

 STR:14

 VIT:5

 AGI:41(↑4)

 DEX:34(↑3)

 INT:66(↑7)

 MIN:20(↑1)

 SP:140(↑10)


 いや、自分でも信じられないんだけど、まぁ全MP叩きこんでるからなぁ。


 そのまま、戦都ルノーチに到着。

 始まりの町、センヨーよりかなり広い。

 中心には王城があり、そこから放射線上に街道が整備されている様だ。

 ひとまず、王城の西にある闘技場に向かう。

 目的はもちろん、イベント「武闘大会」への参加登録である。

 参加用紙を持って受付のNPCに渡すだけで自動で登録完了となるらしい。

 まぁ、登録用端末とか置いてあっても興ざめだしな。

 登録完了と引き換えにルールブックなるアイテムを手渡される。


 ルールを確認。

 大会は二日に分けて行われる。

 23日は完全非公開の予選。一試合最大十人、一人勝ち抜け形式で最大二試合。

 24日は予選勝ち抜け16名による、トーナメントバトル。

 予選、本線ともに試合前にHP・MP完全回復。

 アクセサリー類装備禁止。

 アイテム使用禁止。

 と、こんなところか。


 一応、楓との約束もあるから優勝目指すとはいいたいが、現時点で参加者が700人強ほど。

 最終的には1,500人ぐらいは想定してるよな。ルールによると。

 予選はともかく、本線は高火力火柱だけで勝ち抜けるほど、甘く無いだろうな。

 と言うか、闘技大会でアレは封印した方が良いかな?

 毎試合「薙ぎ払え」で終わらせたら興醒めだよなー。


 などと考えていると、闘技場を出たところでばったりニケさんに遭遇。


「久しぶりー」

「あ、お久しぶりです。偶然ですね」

「ふふ。そうでもないのよ?

 ジン君がルノーチに到着したみたいだから、ここかなと思って来てみたの。

 そしたら、大当たりー!」


 ん? 何でそんな事がわかるの? この人。


「実はね、さっきから掲示板でちょっとした祭りが起きていてね。

 何でも、黒いローブを羽織ったプレイヤーが西フィールドでボスを一撃死させたらしいと。

 流石にガセなんじゃないかって意見が大半だけど、もしやと思ってね」


 あー、誰かに見られてたか。

 で、ニケさんは、オレを値踏みに来たというわけかな?


「なるほど。

 で、ニケさんはそれがオレだ、と」

「んーにわかには信じがたい話よね。

 ボスのソロ討伐は私の知る限り一人しか成功していないし。

 もし、本当ならイベントの強敵が出現かなと思って」

「闘技大会ですね。

 ここまで来れたんで、僕も参加することにしました」


 ひとまず、はぐらかす。


「そうね。もし何処かで当たることになったら正々堂々戦いましょう!」

 と言って差し出された右手を

「ええ。お手柔らかに頼みます」

 と遠慮がちに握り返す。


「ところで、この後、時間あるかしら?

 ここ、戦都で正式にギルドを立ち上げたの。

 見に来ない?」


 このまま、ニケさんのペースに飲まれるのは危険だ。

 オレの第六感が、そう言っている。


「いやー、スイマセン。

 この後、予定がありまして」

 無いけどな。


「そう? じゃ、別の機会にでも。

 別に勧誘とかじゃないからね?」

 と言って微笑む。


 ふむ。正々堂々か。

 薙ぎ払わないで勝つ方法を考えてみようか。

 

 しかし、どれだけ騒ぎになっているのだろう。

 一度ログアウトして、様子を見てくるか。


■■■■■


 いやー、非常にマズイ。

 ボスのワンキルなんか無理だ、と言う否定的な意見が大半だが、このままルノーチに居ては、ニケさん以外でも誰か声をかけてくるだろう。


 しかし、のこのこと歩いてセンヨーまで戻るのも目立つだろうし。


 あまりイベント前に手の内を明かしたくない。

 出来れば予選当日までセンヨーの迷宮に引き篭もってたいくらいだ。


 うーん、仕方ない。


 スキル:【転移】#必要SP 30


 こいつの出番だな。


 一度訪れた街に移動可能。

 つまり、センヨーまでひとっ飛びなわけだ。


 幸い、SPには余裕がある。


 再度ログインし、直ぐにローブを脱ぐ。

 そして、防具屋で黒のローブを下取りしてもらい、グレーのローブを購入。

 ついでに、ここまでのドロップアイテム類を全部売り払いそれなりの金を手に入れる。

 装備して、【転移】を取得し、センヨーへ戻る。


 ログアウトする前に、桜にメッセージを送る。


 MPポーションのおかげでフィールドボスの討伐に成功した事を簡単に書いて、改めて礼を述べておく。

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新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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