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101.年明け

 丸二日間に及ぶメンテナンスを明け、そして年も変わった一月二日。

 約束通り昼前にログイン。

 フレンドから来ていた祝賀メッセージに返信。

 それと、運営からサバイバルイベントの賞品が来ていた。



[サバイバルバトル 一日目 生存ボーナス ランクS]

[合成素材:オーパーツ 転送]


[サバイバルバトル 二日目 生存ボーナス ランクA]

[合成素材:巨人の涙]



 ふむ。素材か。

 単独だとどうしようも無さそう。

 転送とか、ちょっと心躍る名前ですね。

 今度、海猫さんあたりに相談するか。



 リビングへ下りと、いつもの面々が既に揃っていた。

 全員、お正月らしく着物姿で。


「明けましておめでとうございます。華やかですね」


 リィリーは、黒に紅白の大輪の花模様、月子さんは深緑に蝶が舞っている、そしてプリスは白に淡いピンクの花柄。

 ま、プリスは七五三にしか見えないが。


「あけましておめでとう。はい、これジンの。

 三人からのプレゼント」


 あ、オレのもあるんだ。


「お、おおう。ありがとう」


 男性用の着物と羽織。鑑定すると当然更紗製。

 メニューを操作して着替える。


 一見、黒の着物と羽織のセットなのだが、羽織紐が、金属の鎖製なのは何故ですか?


「うん。二人共、よくお似合いよ。結婚式……はちょっと違うわね。なんでしょう? 大きな七五三?」


 オレとリィリーが並んだところを見て、月子さんが感想を口にした。


「プリスは、まんま七五三ですけどね」


 意味を知ってか知らずか、ドヤ顔をした後クルクルと飛び回る。

 嬉しくてテンションが上がっているのだろう。


「それじゃ、出発ー!」




 黄色いネズミのお面を被って、右手に綿飴、左手にリンゴ飴。

 次に狙いを、チョコバナナに定めたようだ。

 しかし、両手が塞がっていてどうやって持つのか。

 そんなこと、お構いなしにプリスに次々と屋台の物を買い与える月子さん。

 あの、甘やかし過ぎじゃないですか?

 ルノーチの中央通は、かなりの人出になっているのだが、頭上を飛ぶプリスを見失うことは無い。

 月子さんはその下に付いて行っているはずだ

 とても、楽しそうに。


「次は、どうやって持つのかしらね?」


 オレとリィリーは、そんな様子を一歩離れてみている。

 苦笑しながら言ったリィリーだが、その手にはしっかりと綿飴が握られている。


「楽しそうで何より。

 しかし、すごい人だなー」


 周りを見回しながら言った。


「ギルドのみんなは、稼ぎ時だー! って張り切ってた。

 そう言えば、楓と桜もこの先でお店出してるはずよ」


「へー。それは楽しみだ」



「いらっしゃい! デートですか!?」


 楓は狐のお面を斜めに被りながら団子を売っていた。


「そうよ。良いでしょう?」


「く、あっさり返されるとは!

 ともあれ、おまけするんで、買っていって下さいね!」


 みたらしと、あんこ。

 うーん、どっちも捨てがたい。


「じゃ、一本ずつもらおうかな」


「一本ずつですか? さっき、月子さんは十本買って行きましたよ?」


 いやいや。


「ウチの天使は大食いだからな……」

「大食いならこっちも負けませんよ?更に偏食家で油揚げしか食べないんです!」


 ま、狐だからな。

 実際の狐は油揚げなんか食べないだろうが。

 そのミーちゃんは屋台の奥で我関せずと眠りについていた。


「追加持ってきたよー」


 裏から、桜が荷物を運んできた。

 頭に小さくなったプラムが乗っている。


「よう、おめでとう」


「あ、いらっしゃい。なんか、月子さんがすごい勢いで買い物してましたよ」


 放っておこう。

 あの二人、実はかなり稼いでるはずだから。


「はい!じゃ、商売の邪魔なんで、そろそろ行って下さい!」


 そう言って団子を四本手渡される。


「あ、スマン。

 て言うか、多いけど?」


「おまけです!

 『あ、おいしい。みたらし半分食べる?』『え、良いの?だって……』

 なーんて、バカなラブコメみたいな事はさせませんからー」


「いや、そんなつもりは……」


「あのね、そんなバカップルみたいなこと、しません。

 しませんから!!」


 顔を赤らめながら全力で否定するリィリー。


「ともかく、ありがとう。また今度ゆっくり遊びに行くよ。油揚げ持って」


「ハイハイ。どうせ私はおまけですしね!」




「はい」


 団子を一本手渡す。


「ありがと」


 受け取るかと思ったら、そのままかぶりついて一つ口に入れる。


 あれ?


 何時の間にかリィリーの手に綿飴とチョコバナナが。

 両手塞がってたのか。


 なんか、十分バカップルみたいなことな気がするが……。

 いや、気にするのは止そう。


「よう、バカップル」


 気付かなかったが、前から秋丸とヨーコが歩いてきていた。


「いや、違うから」


「んー?」


 何だ、その目は。


「しかし、着物とは。気合入ってるねー。更紗さんのやつ?」


「そう。年末に無理言って揃えてもらったのー」


 そう言って、リィリーは嬉しそうに袖をフリフリとする。


「いいなー。私もお願いしたいけど、ちょっと値段がねー」

「だいぶ、強気だよな」


 確かに、以前はプリスの服で結構な支払いがあった。

 今は、月子さんが買い与えてくれるのでそれに甘えているが。


「でも、その分性能も良いしね。

 これは、ただ着るだけの服だけど、普段の私の服はこんな感じ」


 そう言ってリィリーは、チョコバナナを持った左手の小指だけで器用に仮想ウインドウを操作する。


 アイテム情報を提示しているのだろう。


「へー、これは、ちょっとした鎧どころじゃない性能だな」

「なるほど。これなら、納得の値付け、かも。

 この手袋とか、特に」


 あ、オレが贈ったやつだな。多分。

 アレは素材集め頑張る分、大分値段は勉強してもらったなー。


「いーなー。買って?」


 ヨーコが上目遣いで秋丸を見る。


「バカ言え、俺の剣が先だ」

「えー、ケチー」


「この後、夕方ぐらいにギルホで新年会やるから、顔出せよ」


 秋丸は顔だけこちらに向き直りそう言った。

 ヨーコと、じゃれあいながら。

 バカップルはそっちじゃないか。


 運営さーん、ここでーす。


「了解。挨拶しに行くよ」


「おう。待ってるぞ。じゃ、後で」

「リィリー、ありがとねー。バイバーイ」




 さて。


「あの二人は、どこに行った?」


 立ち話をしているウチにプリスと月子さんを完全に見失っていた。


「あれ?先に行ってるはずだから追いかけましょう」


 とは言え、辺りは人でいっぱいだ。


 人波の中、片目だけ視界を上空に飛ばし、上からも二人を探す。

 いた。


「あっちの水風船の屋台だ」




 人を避けながら、そちらへ進んでいく。


 途中、リィリーが何人かと挨拶を交わしていた。


 生産者ギルドに、籍を置いている分オレよりは顔が広い。


 と、遠くに珍しい組み合わせを見つける。

 雪椿とネフティスが二人で歩いていた。


「あの二人、仲良いの?」

 雪椿は、白銀騎士団トレードマーク、白い鎧を身に着けていなかった。


「んー、どうもあの二人で新しくギルド立ちあげるんじゃないかって噂」


「へー。そうなんだ」


「クラウディオスは、左之助さんも抜けちゃったみたいだから、ひょっとしたら解散もあるかも、と言う噂。

 白銀騎士団の方は、やっぱり男臭いノリが合わないんじゃないかしらね」


 ふーん。

 と言うか、左之助さん抜けたのか。

 No.3じゃなかったか? いや、ニケさんが抜けた時点で順当に言えばNo.2か。


「大丈夫かね。クラウディオス」


「心配?」


 心配したところで、部外者なので何か出来る訳でもなく。


「ま、ギルド運営も大変と言うことですかね。

 オレには気ままなソロが合ってるよ」


「そうね。ジンは、そんな感じよね」


 水風船を持って、ご満悦のプリス達と合流したのはその直後。

 月子さんは両手に抱えきれないほどの食料を調達していた。




「明日から、旅行に行きましょう! 四人で!」


 公園のテーブル、その上に所狭しと並ぶ食べ物をやっつけながらそう提案してきた。


 プリスを連れてあちこち出掛けるのはしょっちゅうだが、オレとリィリーを誘うのは珍しいな。

 しかし、旅行?


「あ、ひょとして!」


 リィリーには何か思い当たることがあるのか?


「そう! 海上列車! もう予約しちゃった!」


 海上列車。

 それは、メンテナンス明けの今日から運行開始されたコハとオーシカーを繋ぐ、交通手段だ。

 『約二時間、安心・安全で、レトロな列車旅を満喫できます』

 そういう触れ込みだった。


 ま、転移使ってしまえば一瞬なので、一度行ったことがあれば、時間の短縮にはならないのだが。


「わーい! 行くー!!」

「私もー!」


 ぬー。考えてたら乗り遅れた。


 月子さんが、こちらを見る。


「お伴させていただきます」


 断る訳無いじゃないですか。


「じゃ、みんな行きたいところとかあったら調べておいてね! 明日、列車の中で相談!!」

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サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
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