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99.サバイバルイベント 二日目②
「動かないで!」
イベントフィールドから転送されたオレ達への第一声。
声の主、月子さんは大きなバスタオルを両手に、飛びかからんと身構えていた。
「泥は、大丈夫ね……」
先程まで、オレはフィールドで泥まみれになっていたのだが、転送の際に汚れは落としてくれたのだろう。
運営の心配りか。
「寒かったでしょう、お風呂用意してあるから行って来なさい」
そう言いながら、プリスとオレにバスタオルを手渡す。
「ありがとうございます。プリス、先に入って来い」
「はーい」
そう言って、プリスは飛んでいった。
「お茶入れるから、座って待ってて」
「すいません」
「寒かった?」
「少しだけ」
「これから、あんなマップも追加になるのよね。きっと」
「そうだと思います」
「そしたら、みんなで雪合戦しましょう!」
「多分、プリスの独壇場ですよ」
「それと、かまくら。作ったことある?」
「無いです。オレの所、たまにしか降らないんで」
「中で皆でおしるこ食べましょうよ」
「良いですね」
その時の月子さんは、少しだけ遠い目をしていた。




