表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/179

90.状態異常耐性

 久しぶりに、初心者迷宮の最深部に篭もる。


 ここ暫く貯めこんだ、SPの使い道。

 それを熟考するためだ。


 月子さんの家に部屋がある今、ここに来ずとも一人になれるのだが、スキル構成を考える時のはここが一番落ち着く気がする。

 ルーティーンだな。多分違うけど。


 候補は、状態異常耐性。

 この前、呆気無く呪いを掛けられ間一髪だったが、この先も同じことが無いとは限らない。

 いざとなればプリスに治してもらえる。

 そんな考えは、やはり甘かったようだ。


 スキルリストを確認。


 【耐毒】

 【耐麻痺】

 【耐沈黙】

 【耐暗闇】

 【耐呪】

 【耐石化】

 【耐魅了】

 【耐混乱】


 計8個か。


 どれもSP10なのだが、積み上げると大きい。


 とは言っても他に使う当ても無いのだが……。


 ええい、全部取得してしまおう。

 死んでからでは遅い。



 スキル欄が、豪華になった。

 これを融合。


 まず、毒と麻痺。

 【耐毒・麻痺】

 それに、沈黙。

 【耐毒・麻痺・沈黙】

 更に暗闇。

 【耐毒・麻痺・沈黙・暗闇】

 …………

 最後に混乱


 【完全耐性】


 おお!

 何か、凄そうな字面。

 知ってた!

 既に誰かが発見、公表済みの融合レシピ。

 SPが無駄にならずに済む。

 名も、顔も知らぬ誰かに向け合掌。


<ポーン>

<称号・優良健康体を取得しました>


 しかも称号付き。


 効果は?


 称号

 【優良健康体パーフェクト・ボディ

 状態異常を跳ね除ける健全な肉体。

 HP100%の時、全ステータス1.1倍。


 若干微妙な感じかも。

 ま、貰えるものは貰っておこう。


 さて、無事、スキルも取得できたのでミノさんと戦闘して戻ろうかね。




「「あ」」


 迷宮から出た、冒険者ギルドの受付前。

 見知った顔と合う。


「何してんの?」


「ヤボ用。そっちは?」


「こっちの、冒険者ギルドの様子を見に来たの。

 ついでに簡単な依頼でも受けようと思って」


「ていっても、ここにあるのは初心者向けの依頼ばっかだと思うけど」


「みたいね」


 壁に貼られた依頼を眺めていたのはミネアだった。


「それに、時折地雷みたいな依頼が混じってるから近づかないほうが良いぞ」


「おい、兄ちゃん、それは営業妨害って言うんだよ」


 横から、ギルドの主人が抗議する。


「事実だろ?」


「そういう依頼は、ちゃんと普段の行いの悪いやつの所に行くようになってるんだよ。兄ちゃんとか」


「地雷が混じってるのは認めるんだな」


「何のことだか」


「ったく……」


 そんなやり取りを眺めていたミネアだが、依頼の一つを持ってきた。


「これ、やります」


「あいよ。これをルノーチのギルドまで届けてくれ」


 と言って取り出したのは、ワインの瓶のようだ。


「ちょいと高価なワインだ。気をつけて持って行ってくれ。あんまり揺らすなよ」


 引き受けたのは、初心者用の簡単な依頼の様だ。


「分かりました」


 そう言うと、オレに向き直り「ねぇ、この後、暇なら付き合わない?」と言ってきた。


 まぁ、特に予定は無いけど。


 正直、ここのギルドの依頼、絡みたくないんだよなぁ。


「そんな顔するなら良いわよ。別に」


 あ、顔に出てたか。


「いや、そういう訳じゃなくて……。ここの依頼で酷い目に合ったことを思い出してた。

 時間はあるから、一緒に行くよ。ルノーチだろ。ついでに街中を案内しようか」


「ありがと」


 こうして、ミネアと二人でルノーチへ行くことになった。

 何故か、依頼品を静かに運ぶためと言う理由で、道中の戦闘はオレがメインで引き受けることとなる。

 まぁ、苦戦するような敵は居ないから良いけど。


「ねえ、確認なんだけど、君、佐倉だよね」


 街から離れてすぐ、ミネアがそう聞いてきた。

 そう言えば昨日、ハイドラは隣のクラスと言っていたか。


「そうだけど、オレの事知ってるの?」


 知り合い、居たかな。

 女子の知り合いは居なかったような……。


「『オレ、暫くバスケに打ち込みたいんだ。だから、ゴメンナサイ』」


 げ。


「長谷川、か?」


「そうでーす。気付かなかった?」


「え、うん。だって、メガネ掛けてないじゃん」


「は? メガネで人の顔認識してるの?」


 いや、そんな事は無いはずだけど。


 このゲームを始める前、オレはバスケ部に青春の三年間を捧げる決意をしていた。

 別に、強豪校だとか、期待のルーキーが集まったとか、そう言う話ではなく、どこにでもある高校のごく普通の部活動。

 ただ、ベンチ入りに手が届きそうだった五月の後半、目の前の長谷川から告白を受け、断ったのがさっきの台詞。

 それから、一ヶ月もしない内に、ケガで辞めることになるのだが。

 失意に追い打ちを掛けるように、七月、夏休み初日に肋骨を骨折し当面安静。

 その後、このゲームに出会うことになる。


 ケガは、もう日常生活に影響は無い。

 ただ、体育館、バスケコートに立つと、またあの痛みが蘇るのではないかという、恐怖感があり、足がすくむ……。


 いや、そんな事は別に良い。

 問題なのは、目の前にいるのが、長谷川、つまり一度振っている相手だということだ。

 その後、特に接点は無かったが……。


「えーっと、その節はスイマセンでした」


「いや、改めて謝んないでよ。バカじゃないの?

 ……何で、バスケ辞めたの?」


「……ドクターストップ」


「治らないの?」


「もう日常生活にはほとんど影響無いけど、部活はダメだろうな」


「ふーん。結構アッサリしてるのね」


「こっちだからかな。リアルで、同じこと聞かれたら、こんな風に答えられないと思う」


「なるほど。私もリアルでは、佐倉とこんな風に会話する自信なかったわ」


 フォールドボスを難なく倒して、ルノーチも視界に入ってきた。


「そう言えば、PKしてたのって、何でだ?」


「ん、転職の条件……。恨んでる?」


「いや。もう良いや。あの時は大分へこんだけどね」


「うぅ、ごめん……」


「だって、去り際に台詞がさ」

「言わないでー!」


 などと、談笑しながら歩いていると、眼前に巨大な影が出現。


「きゃ、ド、ドラゴン?」


 後ずさり、短剣を取り出すミネアをよそに、オレはそのドラゴンに近づき顔を撫でる。


「久しぶりだなープラム。また大きくなったか?」

「ギャウ」


「どうもー。久し振りですね。ジンさん」


「よ」


 ドラゴンの巨体の向こうから聞こえた桜の声に手を上げて答える。

 楓と白い毛並みの良い狐の姿もある。


「おいでーミーちゃん」


 両手を広げて迎え入れる。

 以前は、楓の頭に乗っていたが、今は大型犬ほどの大きさがある。

 飛びかかってくる姿が、マジ獣。


「こっちもデカくなったなー」


 飛びかかってきた、ミーちゃんに押し倒されながら毛並みを愛でる。


「毎回言ってますけど、何でそんなに懐いてんですかね?

 く、寝っ転がりながらドヤ顔しないで下さい!」


 楓の文句は適当に流す。


「あのー……」


 忘れてた。

 後ろでミネアが置いてけぼりになっている。


「前回、闘技大会の優勝者さん達ですよね?」


 知ってんのか。


「はい!楓です!こっちは、白狐のミーちゃん」

「桜とプラムです」


「はじめまして。ミネアと言います。WCOのプレイヤーです」


「おお、ようこそ!こちらはどうですか?」


「みんなとても楽しそうにプレイしてるなーと思いました。まだ、来て一日ですけど」


「そうですか!まぁ、中でも一番楽しんでるのがジンさんだと私は思ってるんですけど、いい加減ミーちゃんと離れて下さい!」


 ん、もうちょっと。


「で、二人はこれから狩りか?」


「はい。イベントもあるので」


「あー、あれかー」


「参加しないんですか?」


「張り付き系は、ちょっとしんどいのでパス」


「ほう。流石は、元、トッププレイヤー、余裕の上から目線ですね?」


「ええそうですが、何か?チャンピオン殿」


「くー。寝っ転がりながらのあのドヤ顔。全然チャンピオンだなんて思ってない態度!

 よろしい!今から決闘です!

 『でも、最強さんと鎖が出てたら、ぶっちぎりだよね』何て、風評被害を、今日、打ち消して見せます!」


 そんな事言われてんだ。


「面白い。返り討ちにしてくれよう!」


「あのさ、そう言う台詞は、立ってから言うべきだと思うんだ」


 そうは言うがな、ミネア。素晴らしいんだぞ。この毛並み。

 お前も触ってみればいいさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ