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暖簾  作者: 森見信一
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渡される手紙

スイートピー、マメ科の一年草。

その花言葉は「別離」。


夏の匂いが街を包み込みはじめた今日、

天へと続く白煙は彼女を乗せて消えた。


「梓の葬儀、無事に済んだよ。

ったく、嫁の葬儀に参列しないなんて

どんな神経してんだよ。」

「・・・・」

「これ梓から。」

梓の兄の史哉は隆也に1通の封筒を渡す。

封筒には梓の字で「隆也へ」と書かれていた。

そのことに隆也はすぐに気づいた。

「これ、梓が?」

「梓は入院中、俺たち家族にも内緒で

みんなに手紙書いてたんだよ。

もちろんお前にもな。」

隆也は半ば破るように封筒を開ける。

そこには確かに、筆圧が濃くて少し丸い

特徴的な彼女の字があった。

「失業して引きこもり気味のお前に

向けたメッセージだろう。

それ読んで仕事でも探せよ。」

そう言って史哉はその場を後にした。

隆也はその場に膝から崩れ落ちた。

閑散とした部屋に隆也の泣き声が響く。


玄関先には真っ赤なスイートピーが咲いていた。

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