第五話
俺は今、砂漠にいる。しかもリザードマンが生息する入口付近ではない。もっと中央部に位置する場所だ。ここでは主に岩石で作られたゴーレムが出現する。
そして、俺は昨日入手したスキルについて思い出す。
【神喰らい(ゴッド・イーター】:喰らった精霊・神の力を一部だけ行使できるようになる。
イマイチ意味がわからないが、多分、【イノセント・フレイム】がこれにあたるのだろう。
それと【精霊術師】これはMP、INTを上昇させるみたいだ。
頭の中を整理したところで、地面からゴーレムが三体出てきた。
俺は、右手をゴーレムに向けてから昨日、覚えたばかりのアビリティーを叫ぶ。
「【イノセント・フレイム】!!」
突如、右手から魔法陣のようなものが出現。そして魔法陣から紅蓮の火球が打ち出される。
それはまっすぐにゴーレムに向かって飛んで行き、着弾した瞬間。
ドゴォォォォォォン!!
一気に爆発し周囲にいたゴーレム二体を巻き込んだ。爆風が収まったあと、ゴーレムは居なかった。
すげぇ、想像以上だ。ゴーレムは動きは鈍くさほど驚異ではないのだが、その身からわかるように堅いのだ。ゴーレムは堅く、攻撃の威力もハンパないそうだが…
そのゴーレムを一撃でとか…
よし、次はインドラだな。俺はゴーレム狩りをしながらスキルのレベル、能力の研究をしていった…
さて、俺…カズキは市場にきていた。レイと別れたあと、情報収集兼金稼ぎのためである。この市場…【ミューゼル市場】は多くのプレイヤーが情報、あるいは素材なんか買うために集まる。
しかし、レイの行動力には驚いたな。あいつは実は昔からシスコン気味なところがあったからな(本人に言うと否定するが)柚希さんを取られたって情報聞いたときから、なんとなく何かスゲーことをやらかしそうな気がすると思っていたのだが…
初日でLV15だもんな、まじでびっくりした。今思えば昔からそうだった。ありえないほどの幸運の持ち主で類まれな才能、本人は自覚してなかったし人より優れていても自慢することもなかったが、本気を出せばその実力は本物だった。
ま、そんなやつだから今まで付き合ってきたんだけどな。それに若干な天然もあり俺を終始楽しませてくれた。
そんで、姉命のあいつは負けず嫌いでもあるため(主に柚希さんが関わった時限定)むちゃくちゃすると思っていたが…イフリートまで倒しやがった。恐ろしいやつめ。
そんなことを考えながら歩いていると、目的の場所まですぐに着いた。【ミューゼル市場】のメインイベント、セリが行われる場所だ。今日はここでリザードマンの素材を売る。リザードマンはレイでなければこんな序盤で手に入らない。このゲームは序盤はレベルも上がりやすくダンジョンも簡単に攻略できるが、それも東西での話だ。南北のダンジョンは敵も強くなりレベル上げも難しくなってくる。
β版でもリザードマン相手に苦戦しているパーティは何組もいた。喉から手が出るほど欲しいだろう。
そう考えると、アイツ(レイ)は化け物なんだけどな。
「お、カズキか、今日は落とすのか? それとも売るのか?」
そう言って俺に声をかけてきた男―ガロードだ。後ろにはこいつのパーティメンバーである柚希さん、アリシアさん、リシェード、アカネさんがいる。俺は後ろの四人に会釈してから答える。
「今日は売るんだよ。言っておくが超目玉だぜ?」
そう言うとガロードは「ほう」とつぶやいてから
「君のところはいつも面白いものばかり売ってくれるからね。楽しみにしてるよ」
と言って手を振りながらパーティメンバーとともに去っていった。
あいつはあまり好きじゃない。ガロードはかなり人を見下す性格をしている。パーティメンバーや俺みたいにあいつが認めた人間には普通なのがそれ以外の人間には態度を一転させる。
そんなところが嫌いなんだ。以前、β版の時にあいつからギルドに誘われたが丁重にお断りした。
なにより俺はレイや柚希さんの味方だ。柚希姉さんは実を言うとその…レイのことが真剣で好きらしい。相談されたからな。レイも脈アリな気がする。俺的には二人がくっつけばいいと思うのだが、ガロードは柚希さんに惚れてしまったらしい。そこからガンガンアタックをしている。柚希さんは気づいてないようだが…
ま、そんなこと今はいい。俺は市場の役所に申請をして、早速セリの準備をした。
俺はこのゲームではトッププレイヤーの知り合いが多い。鮮度の良い情報を常に持っていて鍛冶師としてもかなりの腕がある。だから俺が市に出場するとトッププレイヤーがそこに集まり、そしてスゴイメンツばかり揃っているので何事かと一般のプレイヤーも集まる。客はたっぷりだ。
俺の番開始十分前になると売り手の席に立つ。立ち位置は売り手用の席がありその後ろにスクリーン、そしてその前に買い手が立つと言った構図である。俺が売り手の席に行くと俺の知りうるトッププレイヤーが数人来た。それにつられぞろぞろと人が集まってくる。
時間がくると俺は早速切り出した。
「では、俺のセリを始める。俺の出す商品は…リザードマンの素材一式だ。それぞれ十個ずずを5セット用意している。さぁ、始めてくれ」
俺が言い終わるとプレイヤー達が一瞬呆けるも、すぐにセリがスタートした。
結果から言うと金はかなりの額になった。
俺はレイと合うまでの三日間リザードマンの素材を売りつつ市場で情報収集した。
あれから3日たった。俺―レイは調整の最終段階に入っていた。
俺は今、【ミズール砂漠】の最深部で砂漠の主人【リベルシード】と言われる巨大な赤サソリを相手にしている。
俺はこの三日間でまた色々と成長した。
キシェェェェ!!
サソリが咆吼し突っ込んで来る。俺は両手を下―自分の足元に向ける。
「ッ!」
力を込めるとインドラの模様が輝き、手から炎が出る。俺は範囲を最小限にとどめ、放出する。すると炎が推進力となり俺は上空に飛ぶ。
これはインドラの新しい能力みたいだ。イフリートを倒したからだろう、炎の加護を得ており先のように行使できるようになったのだ。最も操作が難しく戦闘で使えるようになったのは、ほんの三時間前位だ。
「はぁっ!」
サソリの突進を回避したあと、俺は上空から炎をまとった拳で攻撃をする。
こうすると攻撃力が格段に上昇するのである。なので本来ならばはじかれるかもしれないサソリの頑丈な甲殻を相手にしても
バキッ、グシャッ!
難なく破壊し、その下にある肉を拳の炎が焼く。あまりの激痛にサソリが悲鳴をあげる。HPバーも1/10ぐらい減る。だが俺は攻撃の手をやめない。そこから五発ほどぶち込んだところでサソリが尾を使って攻撃してきたので火炎飛行(今命名)で回避。今度は尾を攻撃する。
この三日で覚えたアビリティーだ
「【旺羅襲脚】!」
技名を叫ぶと体が自動に動く。【桜羅襲脚】はただの蹴りであるが、威力は桁外れだ。説明曰く、その一撃はすべてを断ち切る、だそうだ。
ズバァァァァン!!
俺の蹴りが炸裂するとサソリの尾が吹っ飛び、そのあとにはかまいたちが飛ぶ。これは飛び道具としても使えるな…
そしてまた、サソリを殴るとサソリは力を失ったように倒れ、粒子となって消えた。
ピコーンと頭の中に機械音が響く。レベルが上がったようだ。
レイLv29
スキル
【剛拳】Lv3 【疾脚】Lv5 【感知】Lv32 【索敵】Lv34 【神喰らい】【精霊術師】
【剛拳】とか 【疾脚】ってのは【殴り】【蹴り】が進化したものだ。あと、【神喰らい】や【精霊術師】はレベルがないみたいだ。【ダッシュ】【ステップ】に関しては俺がフレイバーを練習し始めたらなくなってしまった。
ふぅ、なんとか倒したな。フレイバーはまだしも【旺羅襲脚】を使うと消耗が激しいからな。
俺が少し休憩を休憩していると運営からメールが届いた。内容は
「ギルド【クレイオス・アタランテ】のレイがミズール砂漠を攻略しました」
やっぱりな、昨日、柚希姉さんが初心の森攻略した時も
「ギルド【熾天使の使い】のユズが初心の森を攻略しました」
というメールが届いた。多分、~が攻略ってところはボスに止めを刺した人の名前だろう。
俺は顔知られてないし、ダンジョン攻略しようが注目浴びないもんね。
俺は先に進み次のダンジョンに入る。こうすると次のダンジョンに魔方陣ですぐに行けるのだ。俺はダンジョンに入ってからすぐ街に帰還した。