プロローグ
ゲーム制作会社AOTULOSTが制作した[AST DIVER](以下ASD)は世界で初めてのVRシステムを搭載したゲームハードである。それは人が入れるサイズの箱のようなものでこの中に入ってプレイするらしい。これを利用することにより仮想の世界を体験できるらしい。そしてなんとAUTOLOSTはASTを利用したVRMMORPGを発表。名前を[Celtseed Online](以下CSO)と言うらしい。
制作チームのリーダーである水谷氏は
「俺は自分の手でモンスターと対峙するゲームをつくることが夢だったんだ」
と言っている。
そしてこのCSOが今日、発売なのである。
俺、兼元 澪も今日という日を待ち望んでいた一人だ。
これまでβ版が公表されていたのだが俺は抽選に落ちてしまった。めちゃくちゃ悔しかった。だけど今はそんなことどうでもいい。やっとCSOがプレイできるんだぜ?それぐらい水に流してあげるさ。
某大手通販サイトで予約。今日の八時には届く予定なのだ。現在は7時50分もう少しで…ピンポーン、キタコレ!
俺は印鑑を押し早速箱を開ける。中にはCSOが4つ。
「あ、澪届いたの?早くちょうだいよ」
「お兄ちゃん、早速やろう?」
「兄さん、早くやろうぜ」
そう言って玄関まで来た人物が二人。
一人目は俺の姉、兼元柚希だ。
弟の俺から見てもかなりの美人だ。長く艶のある黒髪をポーニーテールで結んでいる。紅い瞳でキリっとした目、すっと鼻筋が通っていで身長も173cmと俺と一緒で女性にしては高くスタイルもグラマラスでなんというか…エロい、弟でなければ…と思うときも少々。そんな感じで高校三年なのに大人の女性と言った感じがある。おまけに勉強では学年で10位には入るという天才。運動に関しても去年所属している陸上部の大会で短距離で県大会優勝をはたしている。文武両道で才色兼備の超人である。
二人目が俺の妹、兼元華菜。
兼元家の一番下。身長はあまり高くなく体型も…まぁ、凹凸がない。顔に関してはこれまた綺麗で父方譲りの少し薄目のブラウンの髪を肩口で切りそろえてあり、目もまんまるとしていてのほほんとした空気をしている。
運動はからっきしだが勉強は学年一位と秀才である。
三人目が…弟の兼元春樹
祖母の血が色濃く出ているようでなぜか金髪碧眼。そんで世間一般で言うイケメンというやつだ。
一年生なのに三年の先輩を倒し生徒会長へ。姉さんより頭もよく学年では三本の指に入り、所属している剣道部では個人で全国に出場するほど。まぁ、そんなんでものすご~くモテるのだがこいつ。
…ブラコンなんだ。ある時からなぜか俺を変な目で見てくるようになった。テスト前とかになると
「に、兄さん。勉強、教えてくれないかな?ハァハァ」
と、息を荒くして近づいてきた。正直キモい。
それによくわからないのがたまに柚希姉さんとバトルしている。
「貴様ァ、また僕の邪魔をするのかメス豚ァ!」
「言ってくれるじゃないこの変態! あんたこそ私の邪魔をするな!」
と俺の部屋の前で争っていることが結構見られる。この争いは何度見てもわからん。
ま、俺に関しては友達からはよく柚希姉さんに似ていると言われるかな。体の線も少し細いので女の子っぽい。頭は赤点ギリギリ。運動は走りだけなら本職(陸上部)にも負けないね。ほかはほとんど皆無だけど。
「はいはい、じゃ、早速やろうぜ」
俺たちは全員ASDをオヤジのコネで入手できているのですぐさま自室に戻りCSOを起動した。
早速起動する。すると女性の声で「キャラクター設定を行なってください」と言われた。
基本、体格や顔はいじれないらしいが髪の色や瞳なんかはいじれるらしい。
でも俺はいじらないからスルー。次に行くと「ユーザーネームを設定してください」と言われた。
名前、名前ねぇ、ま、レイでいいか。澪だとみおって読む奴が大半だからな│(そのせいでからかわれた経験がある)
次に進む「タイプを選んでください」
おk。んと何があるかな?
ストライカー:物理攻撃や防御が上がりやすくなる。
ハンター:敏捷性が上がりやすくなる。
ウィザード:魔法攻撃、防御が上がりやすくなる。
なるほど、俺のタイプを考えるとハンターだな。俺はハンターを選択した。
「職業を選んでください」
今度は何があるんだ?戦う職業は大きく分けて
剣士、格闘家、狩人、僧侶、魔法使いこの五つだ。だがそこから使う武器、戦闘スタイルでスキルや固有技が発現する。
そして俺は格闘家を選ぶ。ほかは…需要がありそうじゃん?
「キャラクター設定、インストールが完了致しました。サーバーの開始は本日9:00からです。それまではしばらくお待ちください」
今は8:50結構時間立ってるな。でも、ようやくできるんだ! 俺は十分間胸を膨らませて待っていた.
十分後。
「お待たせ致しました。では[Celtseed Online]お楽しみください」
その声を聞き俺は光に包まれた。
そこは「スゴイ」としか言いようがなかった。
バーチャルとは思えないほどのリアリティを持った街並み、中世の建物がズラリと並んでいる。向こうには大きな時計塔まで見える。
そしてなによりすごいのが人、NPCさえも本物の人のようだ。何人か俺と同じくプレイヤーなのだろう、同じような装備の人もいる。
感動だ。βテストプレイヤー│(なぜか俺以外の姉妹と弟それと友人)からすごいとは聞いていたがここまでとは思いもしなかった。
俺がしばらく感動していると。運営からのおしらせ、というボイス付きメールが届いた。
おしらせ? なんだろう。開けてみる。
「ハロー、プレイヤーの諸君、水谷だ。始めたばかりだが諸君にお知らせがある。まず一つに君たちはここから出ることはできない」
俺は、その意味を理解するのに二秒ほど時間が必要だった。それはほかのプレイヤーも同じだったのだろう。俺は、すぐにメニューを開きログアウトを押す……だがログアウトできない。
周りから叫び声が上がり出す。
「だが、心配することはないよん。ちゃんと出る方法を用意したから。それが二つ目、ゲームクリアをすることだ。ゲームクリアというのは各地にあるダンジョンのボスを倒し、最終的にラスボスを倒すことまでだね。それだけじゃ不安なんだろう?君たちの言いたいことはちゃんとわかるよ」
ふふん、と鼻を鳴らす水谷。なんかうぜぇ。お前がまいた種だろうが!
「そしてこれが三つ目だね。この中と現実とでは時間の流れが違う。そうだね、簡単に言うとここでの2年は現実での一時間だ」
現実と時間の流れが違う? これはすごい。あのクソ野郎(水谷)はゲームに関しては嘘はつかないはず。本当なのだろう。
みんなそれを理解したのだろう。近くにいた人たちもほっとした表情をしている。
「そして最後に、デスペナルティを与えるよ?。死んだら経験値の減少言ってみればレベルが下がる時もあるよ。復活するのは二十四時間後。どうだい、良心的だろ? 死んだら現実でも死…とか面白くないじゃん。ゲームは楽しまないと。
ああ、それと、あんまり悪いことばかりするプレイヤーがいると…僕がレベル0になるまで殺しに行くからな。以上だよ~」
といったところでボイスが終わった。最後の僕が殺しに行く。声だけだけどゾッとした。前に雑誌で読んだのだがあの人はゲームに命をかけているらしく
「みんなに僕の作ったゲームを楽しんでもらいたい」
と言っていたので悪いことをした奴は殺されるのだろう。
待ちに待ったCSO。ログアウトできないが現実には問題無い。ならばこのゲームたのしまないとな。