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school life  作者: 虹兎
6/6

life 6

 教室に戻ると、小塚が声をかけてきた。


 「佐藤、どうした。腹でも壊したか」

 「小塚……授業は?」

 「もう終わった」

 「………なあ」

 「どうした?正露丸ならないぞ」


 この小塚が俺をそんな目で見ているのか。

 彼女との関係をぶち壊す最低の男。自分の幸せ以外はどうでもいいような男。


 俺は逃げたい気持ちと、確認したい気持ちが入り混じり、言葉が出なかった。


 「………」

 「佐藤がなんでへこんでんのかわかんないけどさ」

 「………」





 「俺、笑ってるお前のほうが好きだなあ」





 この言葉に、俺は救われた気がした。







 その後、俺はどうしたらいいか分からず、とりあえず相沢にストーカーの阻止に失敗した事を伝えた。

 

 「相沢、ストーカー阻止できなかった」

 「そんな簡単にはいかないよ!加藤だもん」

 「加藤だもんね」

 「うん」

 「相沢、これからどうしようか」

 「ウチ、提案あるよ」

 「なに?」


 ふふん、と相沢は勿体ぶり、答えた。


 「小池君に相談しよう!」

 「誰?」


 急にクラスの奴の名前を出されても困る。


 「ひどっ!ほら、テストでクラス1位の!」

 「………ああ!」


 思い出した。クラスで一人だけ全て95点以上の天才がいたことを。

 名前は確かに小池だったような気がする。


 「ウチね!頭いい人に聞くのが一番いいと思うの!」


 なんか微妙な案に、俺は首を傾げる。


 「小池か……でも勉強ができる=頭が良いとは限らないよ」

 「じゃ!上手く話をつけてきてよ!!」

 「無視かよ!って言うかまた俺ぇ?もうやだよ」


 俺はもうこれ以上傷つきたくない。


 「上手くいけば渡辺と付き合えたりするかもよー?」

 「アイツには興味無いよ」

 「あ、そう」



 この相沢の「あ、そう」に不思議な違和感を感じた。

 何か先のことを計算してるような言葉……


 何か特別な意味を俺は感じた。






 とにかく小池とは互いに顔を知る程度の関係になろう。

 なにか共通の話題でもあれば話ができるのだが……


 そう思考をめぐらせ小池に近づくと、丁度良いものを小池はやっていた。


 詰将棋だった。


 「小池、将棋好きなの?」

 「……うん」

 「将棋やらない?」

 「………いいよ」


 俺たちは将棋を始めた。





 

 ……………負けた。完敗だった。

 「小池強すぎ………」

 「……佐藤君もなかなか」

 「いやあ、まさかここまで強いとは。結構自信、あったんだけどなぁ」


 と、ここで困った。どうやって加藤の話につなげればいいんだ?

 ここで無理やり話を変えても、乗ってくれないだろう。



 ……良いこと閃いた。

 相沢とも話が合うだろう。相沢と接触させよう。


 「相沢って知ってる?」

 「……………あの背の小さい子?」

 「そうそう。アイツも将棋好きだから、話合うんじゃない?」


 相沢から上手く話を振ってもらおう。


 「………………僕、女子とあまり話したことないから…」

 「大丈夫!俺がなんとかするよ」

 「……………じゃあ、うん」


 よし、相沢も将棋が好きだ。小池も将棋が好き。絶対話が合うだろう。

 小池を連れて教室を出るとき、確かに俺は渡辺の目線を感じた。






 

 相沢と小池は、思った通り話があった。

 「ちょ、小池君強すぎ!卑怯だよ~!」

 「………相沢さんも。佐藤君よりは強かった。」


 相沢は小池が気に入ったようだった。

 気に入る分には構わないが、本題を忘れないでほしい



 「相沢、本題」

 「あ、うん!ねぇ小池君!」

 「…………?」

 「君の脳ミソ、借りるよ!!!」


 なんて表現をするんだ相沢。







 全てを話した。

 必要な全てを話した。不要なことは話さない。たとえば俺個人の問題とか。


 「……………加藤君が」



 ほとんど相沢との対談になっていた。

 俺は話を聞きながら頭を回転させる。だからここからは終始無言だった。

 

 「小池君!!どうしたらいいと思う?」

 「……………………渡辺さんが小塚君と付き合ってたなら、小塚くんがより深く何か知ってるかもしれない……………小塚君なら僕らよりよっぽど渡辺さんを知っていると思う………だから…………小塚君にも相談したらどうかな」


 なるほど、だがなんでこんな簡単なことがわからなかったんだ、と歯痒い気持ちになった。







 相沢と小池は小塚とそこまで親しくないという理由から、俺から小塚に話をつけることになった。

 俺はなんでこんな面倒なことばかり。

 でも俺は本当に対人恐怖症なのか?だったのか?明らかに大丈夫ではないか?などと他のことを考えて苛立ちを柔らかにし、教室のドアを開ける。



 小塚と渡辺が、話していた。

 いや、正しく表現すれば渡辺が一方的に話しかけているが小塚が無視している、もしくは適当に流している。そんな会話と言えるのかわからない会話だった。


 一方通行のコミュニケーション、という表現がピッタリすぎたその光景に、俺は入る。



 二人のリアクションは、正反対だった。小塚が言っていたが、まさに白と黒。混ざっても綺麗にならない色同士の比較のようだ。

 小塚は顔だけを動かし、片手を上げ、「よぉ、元気でた?」と挨拶してくる。

 渡辺は水をかけられた猫のような反応をした後、そそくさと逃げ出した。明らかに俺を避けている。


 小塚が「なんかアイツ最近変だよな」と口を尖らせる。


 「……小塚」

 「ん?それより元気でた?」

 「ああ、うん」

 「良かった良かった」


 本題に入る。


 「小塚」

 「ん?」

 「加藤好き?」

 「………さあ」


 小塚らしくない反応だった。こんなお茶を濁すような反応、普段コイツはしない。

 何かを知ったのか?


 「何か小塚らしくない反応だね」

 「俺らしくないかな?」

 「まあ、うん」

 「全部渡辺から聞いた」


 その言葉を聞いた瞬間、色んな考えが脳内を駆け巡る。

 最悪の事態、最高の事態、何を聞いたのか、何を理解したか。


 それに俺は、対処出来るのか。


 「どこまで聞いた?」

 「加藤のやっていること」


 わかりやすい返答だった。即答だった以上、それ以外のことは聞かなかったのだろう。

 今さっき渡辺が小塚のところにいたのは、そのことを話すため。

 繋がった。


 「よし、小塚。協力してほしい」

 「断る」


 まさかの返答だった。


 「え!?なんで?」

 「アイツ……渡辺は、人に頼る癖がある」

 「ああ、確かに」


 確かに渡辺は今までも色々なことを押し付けてきた。

 加藤の告白の件、小塚の冷めてるか否かの件……


 「これ以上アイツは人に頼れば救えなくなる」

 「……確かに」

 「佐藤や相沢も、手を引いたほうがいいよ。最悪何かするにしても、相談にのる程度がいい」

 「……わかった」


 やっぱり、小塚は渡辺のことをよくわかっていた。

 だが、解決策は手に入れることは出来なかった。


 むしろその逆、だ。








 散々悩んだ結果、やっぱり俺と相沢と小池でストーカー事件を解決させることにした。


 だが打開策が全く見つからない。

 やっぱりまた放課後にでも話し合うしかないのかと結論付いた。


 そして今度は俺と相沢の二人で話すことにした。小池は塾があるとのことだった。



 だが俺の中には、小塚の言葉がまだ刺さっていた。

 これは本当に打開策になるのか?


 むしろ、逆効果なんじゃ……?







 あれこれ悩んでいても、時間は待ってくれない。





 

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