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school life  作者: 虹兎
5/6

life 5

 ――次の日。


 渡辺の調子がおかしい。明らかに俺を避けている感じだ。

 今まで渡辺と過ごしていた時間は、相沢と過ごすようになった。


 「渡辺、次の英語ってテストだっけ?」

 「し、知らないよ……」

 

 そう言って渡辺はどこかへ行く。

 俺はとりあえず、小塚に話を聞くことにした。


 「小塚」

 「………ん?」

 「なんだ、また考え事?」

 「………月」

 「月?アポロとか?」

 「いや、月なんて本当にあるのかなって」


 詳しく聞きたくなったが、本題を忘れそうだったため、とりあえずその話を流す。


 「最近さ、渡辺変じゃない?」

 「知らない」

 「そっか…」

 「……恋じゃないか?」

 「そんなのは俺が興味無い」

 「随分手厳しいな」


 次は相沢に聞くことにしたが、とりあえずさっきの話を聞いてみる。


 「で、月がどうのこうのって一体何だったの?」

 「……月は個体じゃない。気体じゃない。液体でもない。何でもないのかもしれない」

 「つまり概念ってこと?」

 「近い」

 「じゃあ月はなんなの?」

 「穴」

 「穴?」

 「真っ黒な夜空という天井に空いた穴」


 小塚の話は聞いてて飽きない。


 「穴……か」

 「天井の向こうは金の世界。それを唯一地球にいる人間に見せるものが月という穴」

 「でも、アポロは月に行ったよね?」

 「月を通って宇宙に行ったんだ」


 その発想はなかった。小塚は本当に面白い思考回路を持っている。






 次は、相沢に話を聞いてみる。


 「相沢、ちょっといいか」

 「何?チェスしない?」

 「また今度。渡辺のことなんだけど」

 「どうかした?」

 「最近、変じゃない?」

 「ああ、そのことね。知らなかった?」


 相沢は知っていたようだった。


 「教えてほしい」

 「あの子、最近ストーカーにあってるらしいよ」


 なんだって?


 「いつから?」

 「10日前ぐらいかな」

 「一週間ちょっとぐらいか……だがその時は普通だったぞ?」

 「え?うーん……じゃあ関係ないのかな」

 「いや、だけど解決はさせた方が良いと思う」


 ストーカーは誰だ?と聞こうと思ったが、言うまでもないことに気づき、ため息をつく。


 「加藤か………」

 「うん」


 まだ引きずっているのか。情けない奴め。


 「佐藤もわかってんね~」

 「まあね」

 「で、どうする?」

 「直接話してくる」

 「は?」

 「え?」

 「いや、やめとけば……?」

 「なんで?」

 「直接『ストーカーやめろ!』って言うの?」

 「ダメなの?」

 「いや…」


 面倒事はさっさと終わらせたい。その一心が俺を行動させた。






 「加藤、ちょっといいか?」

 「ちょ、びっくりした!急に話しかけてくんな!!あーあ、びっくりした!!」


 明らかにびっくりしてないだろうが。


 「話があるんだけど」

 「なんだよ!告白か!?俺そっちの趣味はないんだよねー!!」

 「違う。お前さ、渡辺になんかしてるの?」

 「………してねえし!ってかなんで渡辺!?」


 コイツ……殴りたい。


 加藤の貧乏ゆすりが速くなり、体が大きく揺れ動いている。

 明らかに動揺しているようだった。


 「身に覚えがあるよね?場所変える?」

 「早く言えよなんだよ!渡辺が何?」

 「ストーカー」

 「はい?意味不明!」

 「場所変える。ついてきて」

 「あなたと一緒にどこまでも!!」


 ついた場所は図書室。特に意味はない。

 別に渡辺には特別な感情を持っているわけではない。ただの友達だ。

 だが、今は友達として接することはおろか、会話もまともにできない状態である。

 それが嫌だから、俺は加藤と話をつけなければならない。


 「加藤、お前渡辺になんかした?」

 「なんかしたとか!お前もう知ってんでしょ!?」

 「うん、そうじゃなきゃこんな話はしないよ」

 「でも実際、お前関係なくね!?」

 「はあ?渡辺は友達だから、助けてあげるんだよ」

 「は、友達とか!……実際狙ってんだろ!?だから、お前は小塚と渡辺を別れさせたんだろ!?」

 「はあ……?」


 コイツは何を言ってるんだ。勘違いをしてるのか?

 それとも、適当な言い訳を作って逃げようとしてるのか?


 「お前最低だよ!小塚を別れさせて、自分だけ幸せになろうとしてる!」

 「誤解だよ加藤。あれは二人が話しあった結果だ」

 「良いわけすんなし!そして今度は俺まで陥れようとする気ですかぁ!?」

 「違うよ。今加藤がしていることは明らかに間違ってるってことを言いたいんだってば」

 「はいはい!お前がなにをしようと周りはそう見てしまうんだよ」

 「……え?」


 小塚もそんな目で見ていたのか…?

 加藤も?相沢も?……渡辺も?


 俺の頭の中は真っ白になっていく。


 今まで小塚は俺のことを嫌っていた?相沢も?渡辺も?

 本当は嫌だけど、仕方ないから俺と話していただけ…?

 一体俺は今まで何をしてきたんだ?


 中学校の頃の悪夢が、再三頭をよぎる。


 「……こ、こ、こ」

 「はぁ?」

 「小塚もそう思って…?」

 「今さらかよ!当たり前じゃん!」


 頭の中で、何かがはじけた。


 渡辺が最近避けていたのも、そのせいなのか?だから避けていたのか?


 だが、今加藤がしている行為は明らかに間違っている。やめさせることは変わりない。


 「……加藤」

 「はい?急にブルーか!?」

 「お前、かっこわるいよ」

 「お前ほどじゃねぇよ!他人を陥れて幸せになろうとするやつよりは!」

 「失恋したのにしつこく渡辺にしがみつくなよ」

 「なんだよ!やっぱり渡辺狙ってんのか!そうやってヒーローぶってんのも点数稼ぎか!?」

 「ヒーローじゃなくていいし、かっこわるくていいよ」

 「じゃあなんだようぜぇな!」

 「渡辺にこれ以上しがみつくのをやめろって言ってんだよ……!!俺自身なんてどうでもいい……!!!」


 加藤の表情が変わった。眉間にシワが寄る。


 「俺さあ、前から佐藤が嫌いだったんだよね」

 「……俺もお前が嫌いだよ」

 「なんか、クールぶってるっていうの?そのくせに性格は糞悪いしさ」

 「ストーカー様がよく言うよ。他人より自分の方が見易いのになんで見ないのさ?」

 「俺なんか間違ったことしたか!?」

 「したんだよ!!!」

 

 いつの間にか、俺たちは取り乱していた。

 ひたすら腹を立て、怒りや恐怖……色んな感情が足を震えさせる。


 「佐藤…お前さ、人の恋邪魔して楽しい?」

 「恋?アンダーグラウンドからこっそり女子を見つめるのが恋?辞書で引いてみろよ!!お前がやってることはストーカーだ!!!」

 「だからそういうカッコつけた言い回しがムカつくんだよ!!!」


 いつの間にか、大声を張り合っていた。


 気がつくと、ただの口喧嘩になっていた。

 図書室の先生から、「喧嘩なら外でやれ」と怒られた。

 俺たちはイライラした気持ちで教室に戻った。


 俺の行き場のない怒りは、なぜか涙に変わった。

 俺は急いでトイレに駆け込み、泣いた。




 ―みんな、俺をそんな目で見ていたのか?


 



 ――俺がしたことは無駄だったのか?






 ―――また、同じことを繰り返してしまうのか?







 授業開始のチャイムが鳴っても、俺はトイレにいた。






 






 

ようやく、話が動き出しました!

8月中には完結させたいです。

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