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school life  作者: 虹兎
4/6

life 4

 渡辺から呼び出された。

 あの日のように、図書室に。


 「佐藤君!」

 「何?」

 「聞いてくれた!?」

 「……ああ」


 聞いた。俺は小塚に、確かに頼まれた事を聞いた。

 たしか、「小塚の彼女さんのこと、まだ好き?」と聞いた覚えがある。


 その時の小塚の答えは、


 「渡辺の思想と俺の思想は白と黒だ」


 と答えた。俺が「どういう意味?」と聞くと、


 「混ぜ合わせてもきれいな色にはならない」


 と答えた。小塚らしい答えだった。俺はその答えを渡辺に伝えるべきかどうか迷う。


 もし答えれば、良くも悪くも問題は解決するだろう。だが、それは渡辺自身で解決したわけではなく、ただ俺を頼っただけである。

 それは果たして正しい解決方法なのだろうか。


 迷った挙句、俺はこう返す。


 「いや、聞けなかったよ」

 「え?なんで!?」

 「なんでって、これは渡辺の問題だろう」

 「そんな冷たいこと言わないでよ!!」

 

 少し頭にきた俺は、携帯電話を取り出して小塚にかける。少し話した後、


 「小塚、今から渡辺に代わる」

 「え?ちょ、佐藤君!?」

 「自分で聞きなよ」


 そう言って多少強引に携帯を渡辺に渡す。俺は電話が終わるまで、図書室で本を読んでいた。




 しばらくした後、渡辺が顔をぐしゃぐしゃにしながら入ってきた。


 「ふられだ…」

 「フラれた?」

 「うん……」


 渡辺は椅子に座って泣いている。俺は購買に行ってお茶を買い、ティッシュと一緒に渡辺に渡す。

 渡辺は震えた声で「ありがとう……」と言った。


 「……渡辺、帰りにラーメンでもおごってやる」

 「うん……」


 渡辺が泣き止むまで、俺たちは図書室にいた。




 雨の止んだ帰り道、俺と渡辺はラーメン屋に寄った。渡辺は泣き止んではいたが、まだヘコんでいるようだった。


 「よぉー!!佐藤じゃーん!!渡辺もー!!」


 ……なんで加藤がここにいる?


 「あ、佐藤と……渡辺………?」

 

 小塚も……


 最悪だ。こんな場所で鉢合わせするとは。

 もし加藤が、渡辺が今ヘコンでることを知ったら、必ず余計なアクションを起こすだろう。


 俺と渡辺は凍りつき、この現実を受け止めながら、カウンター席の左から順に小塚、加藤、俺、渡辺の順に座った。


 加藤はただただうるさい。食べながら喋るな。

 他の3人は静かにラーメンを食べていた。


 「なんだよー!みんなテンション低いなー!雨降ってたから!?」


 少し黙ってろ。


 「うるさい」


 小塚ナイス。

 すると小塚が俺に耳打ちをしてきた。


 「……最悪じゃないか。この状況」

 「……うん、もう泣きたい」


 俺は真っ白になった頭でラーメンを食べる。ひたすら食べる。


 「みんなテンション上がるまで帰さないからなー!!」


 迷惑極まりない。


 「少し面倒なことになってるね」


 小塚が他人事のようにつぶやく。


 「そうだね…なんか良い打開策はある?」

 「ラーメンを食べる」

 「そっか。じゃあもう大丈夫だね」


 そんな冗談を言いあい、ふざけていると、渡辺が急に席を立ち、店を出た。

 店員が焦る。


 「お客さん!?お金!!」

 「あ、僕が払うんで……」


 恐らく渡辺は、小塚を忘れたいのに目の前にいられて、現実から逃げたくなったのだろう。もしかすると、加藤のウザさに耐えきれなくなったのかもしれないが。


 「……………………」

 「……俺が払います」


 お金が、足りなかった。






 とりあえず小塚にお礼を言った後、俺は家路についた。すると、相沢からメールが来た。


 件名:ねぇねぇ

 本文:渡辺なんかあった?電話にも出ないんだけど……


 

 とりあえず、メールですべてを話す。返信が来た。


 件名:あら~

 本文:ど~んまい^_^;



 腹が立った。返信はしなかった。




 家に帰ると、布団にくるまって今日の出来事を忘れようとした。

 そんな中、渡辺からメールが来た。


 件名:ごめん

 本文:ごめん



 何だこれは。怖すぎる。ホラーか。

 とりあえず「何が?」と返信する。大体予想はつくが、返信しないわけにもいかないし、ホラーかよ!って突っ込むわけにもいかない。


 返信が来た。


 件名:Re:ごめん

 本文:変なことに巻き込んでごめん



 別に終わった事はどうでもいい。

 「いいえ、構わないです。ゆっくり休んでください」と送信した。







 

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