life 4
渡辺から呼び出された。
あの日のように、図書室に。
「佐藤君!」
「何?」
「聞いてくれた!?」
「……ああ」
聞いた。俺は小塚に、確かに頼まれた事を聞いた。
たしか、「小塚の彼女さんのこと、まだ好き?」と聞いた覚えがある。
その時の小塚の答えは、
「渡辺の思想と俺の思想は白と黒だ」
と答えた。俺が「どういう意味?」と聞くと、
「混ぜ合わせてもきれいな色にはならない」
と答えた。小塚らしい答えだった。俺はその答えを渡辺に伝えるべきかどうか迷う。
もし答えれば、良くも悪くも問題は解決するだろう。だが、それは渡辺自身で解決したわけではなく、ただ俺を頼っただけである。
それは果たして正しい解決方法なのだろうか。
迷った挙句、俺はこう返す。
「いや、聞けなかったよ」
「え?なんで!?」
「なんでって、これは渡辺の問題だろう」
「そんな冷たいこと言わないでよ!!」
少し頭にきた俺は、携帯電話を取り出して小塚にかける。少し話した後、
「小塚、今から渡辺に代わる」
「え?ちょ、佐藤君!?」
「自分で聞きなよ」
そう言って多少強引に携帯を渡辺に渡す。俺は電話が終わるまで、図書室で本を読んでいた。
しばらくした後、渡辺が顔をぐしゃぐしゃにしながら入ってきた。
「ふられだ…」
「フラれた?」
「うん……」
渡辺は椅子に座って泣いている。俺は購買に行ってお茶を買い、ティッシュと一緒に渡辺に渡す。
渡辺は震えた声で「ありがとう……」と言った。
「……渡辺、帰りにラーメンでもおごってやる」
「うん……」
渡辺が泣き止むまで、俺たちは図書室にいた。
雨の止んだ帰り道、俺と渡辺はラーメン屋に寄った。渡辺は泣き止んではいたが、まだヘコんでいるようだった。
「よぉー!!佐藤じゃーん!!渡辺もー!!」
……なんで加藤がここにいる?
「あ、佐藤と……渡辺………?」
小塚も……
最悪だ。こんな場所で鉢合わせするとは。
もし加藤が、渡辺が今ヘコンでることを知ったら、必ず余計なアクションを起こすだろう。
俺と渡辺は凍りつき、この現実を受け止めながら、カウンター席の左から順に小塚、加藤、俺、渡辺の順に座った。
加藤はただただうるさい。食べながら喋るな。
他の3人は静かにラーメンを食べていた。
「なんだよー!みんなテンション低いなー!雨降ってたから!?」
少し黙ってろ。
「うるさい」
小塚ナイス。
すると小塚が俺に耳打ちをしてきた。
「……最悪じゃないか。この状況」
「……うん、もう泣きたい」
俺は真っ白になった頭でラーメンを食べる。ひたすら食べる。
「みんなテンション上がるまで帰さないからなー!!」
迷惑極まりない。
「少し面倒なことになってるね」
小塚が他人事のようにつぶやく。
「そうだね…なんか良い打開策はある?」
「ラーメンを食べる」
「そっか。じゃあもう大丈夫だね」
そんな冗談を言いあい、ふざけていると、渡辺が急に席を立ち、店を出た。
店員が焦る。
「お客さん!?お金!!」
「あ、僕が払うんで……」
恐らく渡辺は、小塚を忘れたいのに目の前にいられて、現実から逃げたくなったのだろう。もしかすると、加藤のウザさに耐えきれなくなったのかもしれないが。
「……………………」
「……俺が払います」
お金が、足りなかった。
とりあえず小塚にお礼を言った後、俺は家路についた。すると、相沢からメールが来た。
件名:ねぇねぇ
本文:渡辺なんかあった?電話にも出ないんだけど……
とりあえず、メールですべてを話す。返信が来た。
件名:あら~
本文:ど~んまい^_^;
腹が立った。返信はしなかった。
家に帰ると、布団にくるまって今日の出来事を忘れようとした。
そんな中、渡辺からメールが来た。
件名:ごめん
本文:ごめん
何だこれは。怖すぎる。ホラーか。
とりあえず「何が?」と返信する。大体予想はつくが、返信しないわけにもいかないし、ホラーかよ!って突っ込むわけにもいかない。
返信が来た。
件名:Re:ごめん
本文:変なことに巻き込んでごめん
別に終わった事はどうでもいい。
「いいえ、構わないです。ゆっくり休んでください」と送信した。