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school life  作者: 虹兎
3/6

life 3

 ――季節は夏へと移り変わる。


 あれから俺と渡辺はだんだんと仲良くなっていった。そのきっかけはスピッツだった。

 渡辺とスピッツの話が通じると知ったとき、俺は自然と心を開いていた。

 だが、恋愛感情は存在しなかった。渡辺とは、ただ単に話が合う友達として接していた。


 俺の対人恐怖症も克服されたかの様だった。他人と話すのがそれほど苦痛ではなくなっていた。


 渡辺と仲が良くなると、自然と相沢とも仲良くなった。相沢とは将棋などのボードゲームをしたりしていた。


 渡辺はいつの間にか加藤に話をつけていたみたいだった。もちろん答えはNOだった。


 これでひとまず問題が解決したかと思えば、またもや渡辺が問題を持ち込んできた。




 ――ある日の朝。


 「最近、小塚君が冷たいんだけど……」


 小塚というのは、渡辺の彼氏である。イケメンだ。彼氏持ちなのになぜ加藤は告白したのだろうか。

 「知らんわ!」と叫びたいが、俺にはまだそこまでの勇気はなかった。


 「俺じゃなくて小塚に相談することだと思う……」

 「ちょっと小塚君に聞いてきてくれない?」


 こいつはどこまで他人任せなんだ。と心の内では思いつつも、勢いに負けてしまった俺は小塚に会いに行くことにした。まあ、恐怖症も治りかけてるし、新しく友達を作るチャンスだと自分に言い聞かせた。




 ――放課後。


 俺は、一人呆けている小塚に話しかけた。


 「……やあ」

 「………」

 「……やあ!」

 「………ん?」


 コイツ、天然か。


 「何してんの?」

 「考えてた」

 「何を?」

 「猫を」


 意味不明。


 「猫?」

 「うん」

 「猫の何?」

 「しっぽ」


 興味をそそられた俺は、話を続ける。


 「しっぽがどうしたの?」

 「あれさぁ……なんか、いいよな」

 「良い…………?」

 「便利そう」


 小塚の思考は面白い。悪い奴には見えないし、加藤とは違って仲良くなれそうだ。


 「何に使うの?」

 「回す」

 「回す?」

 「暇な時に、空中で文字描いたりとかさ」


 小塚の価値観や思考に深い興味を持てた。友達になりたい。そう思った。

 俺は渡辺の事をすっかり忘れ、小塚の世界にいた。


 「でも、俺は熊の手とか馬の足とかの方便利だと思うな」

 「だめ」

 「だめか……」


 俺は少し肩を落とす。


 「そんなの大人に利用されて終わる」


 俺はこの小塚の言葉に衝撃を受けた。


 「利用、か……」

 「便利だけど、大人に利用されない猫のしっぽが丁度良いんだよ」


 こんな会話を小塚と俺の二人きりで話していた。時間も忘れそうな瞬間だった。

 小塚は、不思議な奴だった。



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