失意
彼の代わりになると誓った次の日。
今、教室にある壇上には私がいて、その下には二十人ほどサークルの人たちがいる。がんばって声をかけて集まってもらった。
正直、あの何百人といた時から比べればほんの一握りだと思う。でも、ここから初めていくんだ。彼だってきっと最初はそうだったに違いない。
緊張でつぶれそうな自分を何とかして奮い立たせる。そうしているうちに、
「あの……」
男が話しかけてきた。
「はい?」
「壇上から降りた方が良くないですか?」
「へ?」
な、何? 言っている意味がよく分からないよ?
「いや、なんて言うか、人少ないし、そんなに大げさにしなくてもいいんじゃないかと思いまして……。」
「あ、ああ、そうですね……。」
そうか。そういえば、こんなに人が少ないんだしわざわざ壇上でやる意味なんて無いよね。
いそいそと降りてみんなの前に立つ。
「で、今日集まってもらったのは――」
話し始めてすぐ口が止まった。視線が、痛い。
たった二十人の視線なのに、体まるで金縛りに遭ったかのようにぴくりとも動かない。
「どうかしましたか?」
話しかけてきたのは女の人。やばい、何とかつなげなくちゃ……!
「あ、い、いえ大丈夫です……。」
大きく深呼吸をしてまた話し始める。
「きょ、今日はですね、次回の学議会で提出する新たな案を話し合おうと思ってみなさんに集まってもらいました……。」
よし、何とか言えた。後は……
「何か案はありますか?」
聞くだけだ。
自分の仕事を何とかし終えてほっと息をつく。でもみんなの表情が唖然としていることに気づいた。
あ、あれ? なんか間違ったこと言った?
「それだけ?」
さっき壇上を降りるように言った男の人が話しかけてきた。
「え? え?」
またしても言葉の意味が分からない。
「もっと具体的なさ、どんなことに対するどんな案、みたいなのは無いの?」
「!!」
言われて気づいた。確かに内容が漠然としすぎている。
「さすがにそれは難しいと思います……。」
また別の人から声が上がった。
それを機に口々から要望が上がる。
「え、えと、あの――」
対応し切れていない私にかけられた一言は
「あんた何で代表の代わりなんてやろうと思ったの?」
私のか細い心をおるのに十分すぎる威力を持っていた。




