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決意
いつもサークルをやっている教室に入って一人たたずんだ。
「何も……ないなぁ……。」
彼が刺されたと聞いたのは今朝のことだった。今すぐかけだしてお見舞いに行きたかったけど、病院の場所は内緒にしているらしくてそれ以上のことは分からなかった。
おかしいよね? あんなにがんばっている人がそのがんばりを一瞬で無駄にされるなんて。これじゃあ彼は、な、何のために痛みを乗り越えたのか分からないよ……。
壇上に上がって教卓から教室を見回してみる。これが彼の見ていた景色……。大勢の人がこちらを見ているのを想像するだけで血の気が引いてきた。
「……やっぱすごいなぁ西君は……。」
うつむく自分のほっぺたをあつい何かが伝っていく。いっぱい、いっぱい伝っていく。
ぬぐいはしない。
私は顔を上げると、彼の代わりになろうと心に誓った。