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希望
「……ばれ」
だれかが小さな声で言った。
「……がんばれ」
徐々にその声は大きく、そして周りに広がっていく。
大きな教室はいつのまにかがんばれの声で大変なことになっていた。
壇上の彼があっけにとられている。
……そうだよね。私にできることなんて何もないよね。……応援することしか!
「西君、がんばって……。」
引っ込み思案が邪魔をして大きな声を出せないけど。私もがんばって小さな声で精一杯に祈るよ。
その祈りが彼に届けばいい。
がんばれという大きな言葉の波の中、彼は大声で泣いた。
大丈夫だよ。みんなが一丸になってくれるんだもん。愛されすぎてて妬いちゃうけど。きっと乗り越えられる。
その日、彼は刺された。