おばあさまが、憑依した
読んでいただきありがとうございます。
「あの。。。。嫌です 」
私は消え入りそうな声で答えた。
学園の裏庭に呼び出されていた。
私の前には、仁王立ちの婚約者フレッド。
フレッドは、最近お気に入りのバーンズ子爵令嬢を連れてトンデモないことを言い出した。
バーンズ子爵令嬢を第二夫人にすると言う。
。。。。。
バーンズ子爵令嬢はおびえる私を見て、ブロンドサラサラの髪を片手でかき上げた。
「私が第二夫人で我慢してあげるって言ってるのに」
「メイジ-はなんて優しいんだ。 聞いたかアイビー!俺が婿に入るとともにメイジ-を第二夫人として迎える、これは決定事項だ!わかったな」
「そんな事お父様もお母様も許さないわ。。。」
「はー。聞こえないな、何だって?」
「そんな事!許されません!」
「お前がちゃんと説明すればいいんだよ!ちゃんと家の事を整えておけよ!わかったな」
そう言ってフレッドは私の肩を強く押した。
不意に押された私は勢いよく後ろに倒れていく、私の眼には笑うフレッドとメイジ-。
周りの景色がスローモーションの様に見えた。
大体、私はフレッドが小さな頃から大嫌いだ!
領地が近く親が仲良しだったため一緒に遊ぶこともあったが
いつも虫を投げられたり、小屋に閉じ込められたり意地悪ばかり
そのくせ口がうまくてのらりくらりと親には怒られない。(むかつくー)
フレッドには何をしても大きな声で怒鳴られるから
小さな頃はおびえて自分の言いたい事も言えなかった。
婚約もあれほど嫌だと言ったのに、気が知れた人の方がいいと勝手に親たちが決めた。
(むかつくー。)
婚約後も、関わりたくなかったけど。
婚約者としてちゃんと関係性を作りたいと努力していたのに。
こんなこと言われてまでびくびく返事するなんて、臆病な私はもう嫌だー。
スローモーションが終わり、私は木製のベンチに頭を打ち付け、意識を失った。
「じゃー。私が代わりに言ってあげるよ、ちょっと休んらっしゃい」
あれ?おばあさまの声がしたと思ったら、私は倒れた私を見下ろしていた。
おばあさまが入った私はむくりと起き上がり叫んだ。
「このクソガキが!
婿養子に入る分際で、第二夫人だと!
ふざけたこと言ってるんじゃないよ。大体そのチャラチャラした女のどこがいいんだい!
他に何人も唾つけてるんだろ~。
一番爵位が良くて、御しやすいのがこのクソガキとアイビーだったのかい?」
「ちょっと何言ってるのよ、そんな尻軽じゃないわよ!」
「あーそうかい。ロバートにマイケルにあとトマスだったかね~」
「ちょっと適当な事言わないでよ」
殴りかかろうとするメイジ-の腕をフレッドが掴む。
「どうゆう事だよ!俺以外に男がいるのか!」
「まーまー怒るんじゃないよ、クソガキも他の令嬢にアプローチしてるんだろ~
あんた達、お似合いだよ」
「俺はそんなことしてないぞ!
だいたいお前、ほんとにアイビーか?」
「アイビーに見えるかい?本当に人を見る目がないね。
それは家の息子も一緒だね!あとでゲンコツだな」
「アイビー、頭をぶつけたせいで、頭がおかしくなったのか?」
ブレッドが首をかしげながら私の顔を覗き込む。
「近づくんじゃないよ!頭がおかしいのは、あんた達二人だろ普通に考えたら
伯爵家を継ぐのはアイビーだ、そのアイビーに捨てられたらお前はただの平民だよ
そんな簡単なことも理解できないのかい?」
「え。。。男の俺が伯爵家を継ぐんだろ。それにアイビーは俺のこと好きだろ?
俺の言うことならなんでも聞いてくれるよな」
じりじりとフレッドが近づく。
(あんたなんかだいきらいよーーーーーー)
皆には聞こえないが、私は大声で叫ぶ。
「救いようがないね、私はアイビーの祖母、エリザベスだよ。
この婚約はクソガキの有責で破棄するよ!
そこのチャラ嬢にも慰謝料請求するからね!覚悟しときな」
「婚約破棄なんてしないからな!」
「ジョージの孫だけあって理解力のっかけらもないね~
そうそうジョージは学院に入る頃までたしかおねしょしてたね~。
クソガキもしてるんじゃないかい?」
「あはははは。フレッド、おねしょしてるのか?」
頭上から声がしてそちらに眼を向けると、ルカス・コールマン公爵令息が
二階のテラスの柵に寄りかかり、声を上げて笑っていた。
「なかなかの美丈夫じゃないか」
おばあさまが声をかけると
コールマン公爵令息がひらりと二階のテラスから飛び降りて来た。
「お初にお眼にかかります。私はエリザベス様と親しくさせていただいていた
アクセル・ノーマン伯爵の孫で、コールマン公爵家の3男、ルカスと申します」
「丁寧なあいさつをありがとう。アクセルのお孫さんなのね、会えてうれしいわ
お母さまはお元気?」
「はい。息災です」
私は二人の間に入り交互に顔を見る。
ん?おばあさまはコールマン公爵令息とお知り合いなの?
「ところで、私はそろそろこの体をアイビーに返さなければいけないのだけれど
コールマン公爵令息は、婚約者や恋人はいるのかしら?」
「嫡男の兄には婚約者がおりますが、次男以降は父に自由にしてよいと言われています
私には気になる令嬢がいるのですが、その令嬢には無能な婚約者がおりまして。。。。
どうしたものかと思っておりました」
おばあさまがコールマン公爵令息にこそこそ耳打ちをする。
「もしかしてその令嬢は家のアイビーかしら?」
「はい。実はそうなのです」
ルカス様の頬が少し赤らむ。
「では。
コールマン公爵令息。お母さまによろしく伝えて。
あなたならまかせっれそうだわ。両手を広げて」
ルカス様はおばあさまの言われた通りに両手を広げた。
「アイビーを頼んだわよ」
おばあさまは私の体でルカス様の胸に飛び込んだ。
飛び込んだ瞬間、おばさまと私は入れ替わり。私はルカス様の腕に包まれている。
あたたかい。
✿ ✿ ✿
ルカス 視点
母方の祖父の語る最高の友人エリザベス様は
弱きを助け強気をくじく。親分肌だが社交界では完璧な令嬢。
祖父から聞いていた列伝は痛快で、子供のころ話を聞くのが楽しみだった。
そのエリザベス様の孫が同じ学年に居ると知り、気になっていた。
孫のアイビーには、ミルクティーブラウンのふわふわの髪に澄んだ青い瞳。
かわいらしい人だったが、すでに婚約者がいた。
ただその婚約者は、横暴で無能を絵にかいたような奴だった。
一生懸命関係性を作ろうとする彼女に、いつも大きな声で怒鳴りちらす
ある意味学園では有名なカップルだ。
彼女が気の毒でもあり気にして目で追ううちに、芯の強さや周囲へのやさしさ
家を継ぐため努力する姿を見て、だんだんと彼女に魅かれていった。
あの日アイビーが、屑達に呼び出されたのを知り、後を追って裏庭が見えるテラスに行った。
万が一の時は自分が助けよう。
そして事件が起きた。奴が彼女に手を上げた時、あわててテラスを飛び降りようとしたが
飛び降りるより先にエリザベス様が現れて啖呵をきった。
その様は祖父に聞いていたエリザベス様そのものだった。
そしてエリザベス様はアイビーを俺の腕に任せてくれた。
ここからは使えるものすべて使ってアイビー守り抜く。
「アイビー嬢。僕の婚約者になっていただけませんか?」
俺は腕の中の彼女にそう申し込んだ。
「先ほどの破棄を整えましたらまたお返事させてください。
前向きなお返事ができるはずです」
頬を染めながらアイビーは答えた。
✿ ✿ ✿
おばあさま。ありがとう、この瞬間私は前を向きすすんでいくわー。
ルカス様が腕を解く。
「今日の出来事はすべて見ていました。
フレッドの不貞は私が証明します。このまま伯爵家へ同行しましょう。さあこちらへ」
私はルカス様の手を取り家へ向かった。
後ろでなにか叫んでいる人達がいたけど、もう気にもならなかった。
ルカス様と両親に今起きたことを、おばさまの事は伏せて話した。
話し終えたところで、どこからかお父様の頭に大きな桶が落ちてきた。
おばあさまのゲンコツに違いない。
その後コールマン公爵が間に入り、婚約破棄はスムーズに進み
元婚約者は、慰謝料を払うため伯爵家から席を抜かれ鉱山に贈られた。
バーンズ子爵令嬢は、北の商家に売られるように後妻に行った。
私はルカス様と新しく婚約を結び、最強のおばあさまを目標に頑張っている。
~ 終わり ~
かなり都合よく書いてしまいましたが、きっとこんな形でなくても
ご先祖様は、私たちを見守ってくれていると
思うのです。
いつも誤字脱字ありがとうございます。
評価、リアクションなどいただけると嬉しいです。




