人生は不確定で出来ている
気が付けば朝だった。カーテンを開けて朝日を吸収するように大きく伸びをした。
「僕は、あぁ。もう、行かなくて大丈夫なのか、、」
その声は、途切れ途切れで最後は声が掠れて消えていった。涙も流れたのだろうか、目元が紅く少し腫れていた。頬についた涙の乾いた後が残っていた。
現在の時刻は午前**時くらいだろうか。ふと視線を上にあげると時計があったが、その時計は秒針が動かずに同じ場所を刺し続けていた。彼は電池切れの時計を放置してスマホを開く。
「もう、こんな時間か」と呟くが動く様子はなかった。しかし、それでも体を起こして外出を試みた彼は玄関で立ち止まったまま、何度も靴ひもを結びなおした。やがて、靴ひもを結び終わると散歩をするために玄関の外に足を踏み出した。
+*+*+
いつか、この生活が終わると考えて彼は今日を生きる。明日のことは分からない、まだ今日なのだから。
「僕の人生は、表現がしがたいものなのかな」
彼は一度だけ、自分のことを語らなければいけなかった。詳細に話すことを求められた彼はもちろん話した。
その時、彼の話を聞いていた人はこう語る「彼の話は途中で何度も止まり、また最初の話へと戻る。とても言葉にできるものではない」この世界には八十億を超える人々が生きている。その中の何%が彼と同じくらいの苦痛を味わっているだろうか。
彼の過去を振り返っている間に、玄関の鍵は締まっていた。
もし彼が事前に外出をする予定があったら、彼は重い足を持ち上げて外出ができたのだろうか。
+*+*+
彼の部屋は綺麗で整理整頓ができていることがわかる。ベットの横にある机にはペットボトルに入っている飲みかけの水と薬が置いてあった。他にも整理の出来てある机の上にはいくつかの手紙が置いてあった。宛名の違う封筒が机の上に並んでいた、一人一人に対して丁寧に書かれてある。
「まぁ、なんとかなるよね」
現在の正確な時間は把握できない。散歩から帰った彼は部屋のカーテンを閉め切り外の様子が分からないからだ。この閉鎖空間で彼はベットに潜りこんだ。
布団の中から身体が出ないよう丸くなるように布団の中で彼はスマホを触っている。
しばらくすると、お腹がすいたのだろうか部屋を出てキッチンへとやってきた。冷蔵庫を開けると作り置きの総菜がいくつかあった。それと冷凍されている白米を電子レンジで温めると食事を始めた。終始無言の彼は素早く食事を終えると部屋へと戻る。
部屋に戻ると机にある薬を手に取り出すと口に含み、ペットボトルの水で流し込んだ。
薬も飲み終わった彼は、もう何かをする気力も残っておらず彼はベットに倒れこむと布団に包まり眠りについた。
+*+*+
彼の部屋には、何もない。あるのはベットの脇に置かれた一つの義足と最低限の家具だった。
彼が寝てから数時間が経過したころ部屋の静寂とは反対に外はあわただしく、救急車の音が鳴り響く。




