すべてが変わった日(いや、変わってほしい日)
【オープニングシーン – 回想】
風になびく、伝統的な侍の衣をまとった二人の影が浮かぶ——鎧ではなく、ただの布が劇的に揺れている。二人の正体は影に隠れたまま、刀と刀がぶつかる音が闇に響く。
突然、一人が後方に跳び、足を滑らせながら地面を蹴る。両手で刀を握り、儀式的な構えを取って呪文を唱える——その言葉は世界に拒まれるかのようにかすれて消えそうだ。
空気が裂ける。
そこに、何もないところから骸骨が現れる。ボロボロのフード付きローブを身にまとい、その骨格に沿って風に揺れる姿は、まるで死神のやんちゃな弟のようだ。手には異常な光を放つ大鎌を握っている。
そして——走る。
二人の男の方ではなく、彼女に向かって。
混乱の中、かろうじて見える少女が後ろに転び、骸骨に追われる。息を荒くしながら木々の間をすり抜けるが、敵は容赦ない。信じられない速度で距離を詰め、鎌を高く振り上げ——
——そのとき、もう一人の男が割って入る。
雷のように動き、刀が骸骨の鎌にぶつかると火花が散る。数秒間、彼は敵を押しとどめ、少女が立ち上がり逃げ出す時間を稼ぐ。
男はすぐには追わない。少女が先に逃げるのを見届けてから、自分が追いかける。
追いついたとき、少女はすでに追い詰められていた。骸骨を前に立たせ、逃げ道を塞ぐ男。
しかし二人目の男は迷わない。刀を掲げ、親指を切り、再び呪文を唱える——今度の呪文は別の力を宿しており、聞き取れないが存在感を放つ。
少女の体が光り始める。最初は微かに、次第に明るくなり、純白の光そのものとなる。その光は刀に吸い込まれるように渦巻き——一瞬で消えた。完全に刀の中に取り込まれる。
刀は一瞬、輝く光に包まれるが、すぐに元の姿に戻る。
影たちは依然として隠れている。男たちの顔も、刀も、意図も——すべては覆われたまま。残るのは、消えゆく光に映る少女の恐怖に満ちた顔だけ。
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【現代】
"私の名前は高道凛。今日、私は侍になる日だ。"
まあ、それが計画だ。
鏡の前で自分を見つめる。歯ブラシを口にくわえたまま、まるで狂ったセイウチのようだ。髪は三方向に跳ね、頬には歯磨き粉がついている気がする。
「伝説の戦士」の見た目とは程遠い。
吐き出して口をゆすぎ、決めポーズ——両手の人差し指を鏡に向け、親指を立て、まるで自分に決闘を挑むかのように構える。馬鹿だ。分かってる。でも伝統でもある。自分の伝統だ。大事な日の前に気持ちを高める儀式。
「できるぞ、凛。」鏡に向かってつぶやく。「今日だ。16歳。侍試験の最低年齢。絶対に合格して、隊に入り、ついに——ついに——誰にでも、ただの貧乏な街の子じゃないことを証明するんだ。」
鏡の中の自分は納得していないようだ。
「まあ、ちょっとは緊張してるかもな。」ポーズを崩しつつ、正直に認める。
"凛!"
びくっとする。下から母の声。暖かく、大きく、誰も気づかないのに、どういうわけか自分だけは驚かされる。
「はいはい!」タオルをつかみ、顔を拭きながら返事する。
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階下に降りると、母が居間で手を背中に組んで待っている。何かを隠している様子。いつものボロボロの着物、色あせた花柄、何度も縫い直された布が意志で支えられているかのようだ。そしてあの顔——泣くか笑うか、どっちかわからない顔。
「お母さん?」慎重に声をかける。「どうしたの?」
母は微笑む。目尻が細まる。「もう16歳ね、凛。つまり、正式に試験を受けられる年齢よ。」
「うん、知ってる。だから——」
「それに」母は手を背中から華麗に出し、「これを渡す時ね」と言う。
凍りつく。
その手には刀があった。
ただの刀じゃない。美しい白い刀、柄の先から白い房が垂れ、鞘には白い縄が六、七回きれいに巻かれている。朝日の中で輝いているようだ。
「お母さん…」声が震える。「これは——?」
「あなたのものよ。」母は静かに差し出す。「代々家に伝わるもの。でも…知っておくべきことがある。」
慎重に刀を手に取る。息を吹きかけたら壊れそうな気がするほど。重さは思ったよりあるが、手に馴染む。まるで自分のために作られたようだ。
「この刀には、神が封じられているの。」母は声を落とす。「低位の神よ。大したものじゃない。うちの家族…いつも恥じていた。弱い、役立たず、高道の名に恥だと言われていた。」
苦笑いするが、笑いではない。
「だから父と結婚したとき、家族に追い出されたのよ。血筋を汚すと言われてね。そして父が去ったとき…まあ、助けに来てくれなかったってこと。」
刀をさらに強く握る。「母——」
「ごめんなさい、凛。」母の目は潤み、でも笑っている。本当に笑っている。「大したものじゃないことは分かってる。高位の神が宿る豪華な刀じゃない。でも、これしか渡せない。そして…あなたを本当に誇りに思っている。」
しばし言葉が出ない。喉が詰まり、目が熱くなる。今日アイラインをつけなかったことに心底感謝する。
「母さん…これまでで一番の贈り物だ。」声が震えるが、本心だ。
貧しい育ちのせいで、ものを大切にする心を学んでいる。大きなものだけでなく、小さなものも。満ち足りた食事、温かい毛布、三つの仕事を掛け持ちしながらも毎朝笑顔を見せる母。
この刀も、ただの武器ではない。自分を信じてくれる証だ。
母を抱きしめる。刀ごと抱きしめても、母は笑う——今度は本当に。
「頑張ってこい、子供。」ささやく声。
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【試験会場へ】
歩く距離は長いが気にならない。考える時間、独り言を言う時間。まあ、ちょっと変かもしれないが気にしない。誰も見ていない。
「よし、凛。」背中の刀を整えながらつぶやく。「作戦確認。1:隊長の前でつまずかない。2:誰も侮辱しない。3:絶対に、ユウジに頭をやられない。」
思い出すだけで顔が歪む。
高道ユウジ。いとこ。高道家の金の卵。俺とは真逆——金持ち、才能あり、尊敬されていて、絶対にムカつく。
子供の頃から俺のことを嫌っている。正確には母を嫌っている。その影響で俺も。貧乏は伝染するのか?
「いいや。」小石を蹴りながら声に出す。「今日、試験に合格する。そして隊に入り、この国で一番の侍になる。ケント・ヤマトみたいに。」
ケント・ヤマト。
伝説。20年前、人類を救った男。アマツ・ミカボシ、混沌そのものが暴れ、人々を滅ぼそうとしたとき、刀に神を封じた唯一の侍。
彼のおかげで、侍制度がある。俺のような奴にもチャンスがある。
そして、父のことは大嫌い。
父は?ヤマトとは正反対。困難から逃げる臆病者。母と俺を置き去りにした。責任を負えなかったと言って。
拳を握る。
「ヤマトが世界を救えたなら、俺はせめてクソみたいな試験に合格できる。」
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試験会場は巨大だ。
予想はしていた——ここで全国の潜在侍が試される——しかし驚愕する。メインの建物だけで5階建て、白い石造りに赤い旗が風にたなびく。周囲には数百人の人々、豪華な衣装の者もいれば、俺みたいな普通の格好も。みんな緊張か興奮か、その両方か。
深呼吸して中へ。
登録は一瞬で終わる。名前、年齢、家系(口ごもる)、「高道家の落ちこぼれ分家」なんて自慢できない。番号を渡される——777。
「ラッキー番号ね」と登録係。
俺も笑う。「そうだといいな。」
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登録後、巨大なホールへ。200人以上の受験者で満員。空気はピリピリしている。みんな囁き、予測し、互いを見定める。
遠くの壇上には七人の隊長。
強さ順に左から右。噂で知っている人物もいるが、目を引くのは左端の男。
黒崎ミナト。
ランク1隊長。現役最強侍。想像より若い——20代後半くらい。黒髪は乱れ、退屈そうな表情。彼の隊は2人だけ、優秀でない限り仲間を採用しない。
プレッシャーだ。
壇上中央には巨大なガラス球。岩くらいの大きさ。微かに光り、エネルギーを脈動させている。
試験官の女性が前に出る。髪はきつく結い上げられ、厳しい顔。
「聞け!」声が響き、ホールは静まる。「試験は簡単。球に近づき、刀に封じられた神の名を言い、手を置け。球が生命力——侍としての潜在能力——を測る。スコアは1から999。ランクはこうだ:**800以上 Sランク、701~800 Aランク、601~700 Bランク、501~600 Cランク。**それ以下はDランク、合格不可。」
ざわめきが広がる。
「ただし、高得点でも合格は保証されない。七人の隊長のうち、少なくとも一人が採用に興味を示す必要がある。複数なら、最上位の隊長が優先。」
間を置き、重々しく説明。「受験の理由を忘れないでほしい。20年前、人類を守る神々は天空の島で平和に暮らしていた。しかしスサノオ、混沌の神が裏切り、人間界を攻撃。数千の侍が命を落とす。だが歴史上最強の侍、ケント・ヤマトが禁断の技でスサノオを刀に封じた。それ以来、神々は時折襲来する。だから生まれつきの潜在能力を持つ者だけを採用する。剣技は教えられるが、才能は教えられない。」
ホールは静まり返る。
「開始。」
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候補者が順に挑む。
多くは400~500台。まずまずだが隊長の目を引かない。数人が600台で、低ランク隊長の丁寧なうなずきを得る。
そして、彼が現れる。
高道ユウジ。
背が高く、ハンサム、豪華な衣装。刀は輝き、自信満々の歩き方——殴りたくなるタイプ。
遠くから目が合い、にやり。
中指を立てる衝動をこらえる。
「神の名を言え」と試験官。
「ツクヨミ」ユウジは滑らかに。「月の神。」
ざわめき。ツクヨミは高位の神、最強クラス。
手を球に置く。
数字が光る:829。
ホールは騒然。Sランク!その日最初のS。
壇上から黒崎ミナトが立ち上がる。
静寂。
「俺が採る。」コーヒー頼むみたいに無造作に。
ユウジは宝くじに当たった顔で深くお辞儀し、壇上を離れる。
通り過ぎざま、耳元でささやく。「頑張れよ、いとこ。家名を恥じるな。」
舌をかみしめ、血の味。
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ついに俺の番。
壇上へ一歩。足は微かに震える。視線が全て俺に向く。
「神の名を言え」と試験官。
迷う。母は低位の神だと言った。恥だと。しかし俺のものだ、恥じることはない。
「…名前はわかりません」と告げる。
ざわめき、笑う者も。
「手を球に置くだけだ」と試験官。
深呼吸して掌を押し当てる。
球が変動。
数字が暴れ回る——200、450、680、720、850——上昇、上昇、上昇——ついに止まる。
999。
ホールは静寂。誰かがクリップボードを落とす。銃声のよう。
「…間違いだろう」と誰か。
「999を出したのはケント・ヤマトだけ…」
手を球に置いたまま、心臓が耳に響く。
全隊長がこちらを見る。ほとんどは懐疑的、数人は疑念。誰も動かない。
ゆっくり、黒崎ミナトが立ち上がる。
「俺も採る。」言い放つ。
ホールは混乱に包まれる。
俺は?ただ数字を見つめ、これが現実か、それとも人生最大の過ちかを考えるだけ。




