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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第94話 【Sideエリザナ】国を守るためにも

フォーペウロの女王陛下視点のお話です!

 これは、フォーペウロの四聖女が聖なる泉に向かった翌日の頃。


 私はフォーペウロの首都バアゼルホにある城内の会議室にて、外交や内政事情に関連する公務に勤しんでいた。


「――以上が、今年度の国家予算における概算報告となります。女王陛下」


 重厚な会議卓に羊皮紙が擦れる乾いた音が響く。

 私はフォーペウロ王国の女王として、眼前に並ぶ政務官たちを静かに見渡した。

 今いるのはバアゼルホ王城の最上階に近い特別会議室だ。

 窓の外には幾重にも重なる巨大な防壁とその隙間に国民が暮らす家々が見える。


「ふむ……。宰相、城塞の補修および魔導障壁の再編だが、これらに割く予算はこれで十分と言えるのか?」

「はっ。現在、最北の第一隔壁を中心に物理・魔法両面からの補強工事を急ピッチで進めております。次期冬の到来までには盤石な構えとなるかと」

「よろしい。魔王軍の進軍を防ぐ盾として、我が国が折れることは許されない。引き続き、余念なく進めなさい」

「御意に!」


 宰相の力強い返答に、居並ぶ幹部たちが一斉に頭を下げる。

 私が女王陛下として治めるこのフォーペウロは城塞都市国家にして、ここから北にある魔族領を拠点とする魔王軍の進軍を防ぐ中心として機能している。

 ここが陥落すれば、南方の諸国は瞬く間に蹂躙される危険性があり、その重圧が私の両肩に重くのしかかっている。


「……では、次の議題だ。魔族の動向に変化は?」


 私の問いに諸事情でバアゼルホから離れている騎士団長の代理が沈痛な面持ちで立ち上がった。


「調査に出向いた斥候騎士の報告によりますと……魔王軍の領土は、先月比でさらに一割ほど拡大しています。北の小国ルンデルが、完全に沈黙した模様です」

「ルンデルが……。だが、先の戦いで魔王軍の幹部を数体討ち取ったはずだ。進軍の足は鈍るどころか、早まっているというのか? 根拠は何だ」

「……魔王軍が独自に開発したとされる生物兵器の量産化が進んでいると推測されます。それと、陛下……」


 少しの間、言葉を濁されたものの、口を開かれた。


「道中、魔族との直接的な交戦こそありませんでしたが、街道にて魔物、および山賊との戦闘が一度ずつ発生しました。幸い、こちらの死傷者はゼロですが……」

「そうか。それならば何よりだが、こんな時に人間同士で牙を剥き合うとはな」


 私は小さく吐き捨てた。

 信じがたいことに、魔王軍の侵攻が活発化してからというもの、北方に位置する中小規模の国家のいくつが魔族領となってしまっている。

 実力行使で滅ぼされた国なら同情したくもなりそうだが、中には魔族の力に魅了された挙句、同胞を売って延命を図ろうとする輩さえいるとのことだ。

 魔王軍に対抗するためにも世界中の国々で手を取り合って立ち向かうべきなのに、目先の利益や我が身可愛さに敵陣営に寝返るなんて酷い話だ。

 騎士が山賊と交戦した件もさっきの話が初めてではない。

 これまでにいくつもそれと同じような報告が挙がってきており、中には魔王軍や魔族と手を組んでいるのでは?と言う噂もあるが、悲しいかな、事実と認めざるを得なくなりそうだ。

 もはや否定しきれない事実として私の胸に刺さっていた。


「いずれにしても、王都の警備はもちろん、各地方自治領の監視も強化せねばならんな」

「はい。その件につきまして、私からも一つご提案が……」


 会議はより具体的な防衛策へと移り、数時間に及んだ。


「――以上をもって、本日の定例会議を終了といたします」


 宰相の閉会の辞が響き、参加した政務官が全員いなくなったことを確認した後、ようやく私は重い腰を上げた。


「はぁあ……」


 自室である執務室に戻るなり、私は椅子に寄りかかって深い溜息をついた。

 窓越しに見えるバアゼルホの街並みは一見すれば平穏そのものだ。

 だが、その平穏は何かしらのきっかけで崩れる薄氷の上に成り立つ危うい均衡に過ぎない。


「女王として、弱音は許されない。我が国の四聖女と騎士団、そしてエレミーテ王国から派遣されている勇者パーティ。彼らが命を賭して前線で戦っているのだ。私が揺らぐわけにはいかない」


 自分に言い聞かせるように呟き、私は机に山積みになった資料に手を伸ばした。


◇———


 翌朝、昨日の疲労を微かに引きずりながら廊下を歩いていると、朝の光が差し込む回廊の先から見慣れた人物が歩いてくるのが見えた。


「おはようございます、陛下。本日は雲一つない快晴、実に素晴らしい朝ですな」


 柔和な笑みを浮かべながら一礼したのはゲータス宰相だった。

 中肉中背の体に仕立ての良い華美な法衣、短い白髪とモノクル眼鏡が特徴的な中年の男性だ。

 長年に渡ってこの国の政権を握り、政治に疎い騎士団や幹部勢の相談役も担っている国の重鎮とも呼べる人物である。


「これで魔族の軍勢が北に控えていなければ、もっと清々しい朝だったのでしょうがね、ゲータス」

「ええ。レイニース様ら四聖女、アルフラド団長率いる騎士団、そして例の勇者一行もおります。加えて防衛網の再構築に向け、着々と準備を進めております。陛下の統治あればこそ、国民も平穏を保てているのです」


 好々爺のように振舞う宰相であるが、私でさえ時折、腹の底が見えない時がある。

 頼もしい半面、どこか冷徹な計算が透けて見えるのだ。


「それでゲータス。ずっと気になっていたのですが、後ろに控えているのは?見慣れない顔だが」


 私が視線を向けたのは宰相の斜め後ろに影のように立っていた女性だった。

 紫色の長い髪を後ろに束ねた黒いタイトな背広に身を包み、知性を感じさせる眼鏡をかけた隙のない佇まいであるが、昨日の会議にはいなかった人物だ。


「おや、紹介が遅れましたな。彼女は先週から私の世話役を担うことになった、ジョシュナ君です」


 紹介された女性は音もなく一歩前に出ると、流れるような所作で傅く。


「初めまして、女王陛下。先週よりゲータス宰相の秘書を務めております、ジョシュナと申します。陛下にお目通り叶う光栄、何物にも代えがたく存じます。以後、お見知りおきいただければ幸いでございます」


 傅きながら恭しく挨拶をするジョシュナ。

 透き通るような声をしながらにして、礼儀作法は完璧であり、教養の高さが伺える。


「……今後の働き、期待しています」

「ありがたき幸せにございます」

「では陛下、我々はこれで失礼いたします。くれぐれもご自愛ください」


 ゲータスが促すと、ジョシュナは再び深く一礼し、彼の後を追って去っていった。

 遠ざかる背中を見つめながら、私は鼻をくすぐる妙な残り香に眉をひそめた。

 ジョシュナと名乗った彼女の顔立ちは見惚れるほどに美しい。

 だが、それははどこか人工的で男を惑わすような妖しい魅力を帯びているように感じられた。

 花の香料のようでもあり、だが、どこか腐敗した異質な匂い。


「ジョシュナか……。さて。魔王軍との戦いも正念場だろう。気を引き締めてかからねばな」


 私は自分に対して、そう言い聞かせた。


 だが、今の私には窓の外に広がる青空が酷く不吉な色に見えて仕方がなかった。

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