第92話 阻む巨竜
「シュッ」
「ガァアアア!」
俺たちはフォーペウロの四聖女を聖なる湖に送り届けるために先を目指す中、数十の魔物の群れを相手にしていた。
だけど、相手はリスクレベルD以下のゴブリンやオークなど、俺たちや一介の騎士ならば苦も無く対処できる内容だったので、煩わしさを感じながら、問題なく始末するのだった。
だが、先に待つ聖なる湖への道がそう安々と通れるはずもないことは全員が予感していた。
「ゴォオオオオオ……」
「コイツが例の……」
「ああ。その通りだ」
大気を震わせる地鳴りのような重低音が響いてきた。
俺たちの前に立ちはだかるのはグランドドラゴンだ。
「近くで見ると馬鹿みたいにデカいな」
「サイクロプスが可愛く見えそう」
ドラゴン。その名はこの世界を生きる者たちにとって一度も聞かないことはないだろうとされる超有名なワード、いや、存在と言うべきだ。
その多くは強靭な鱗、鋼を断つ爪、巨大なコウモリのような形をした翼で空を飛び、何もかもを破壊する吐息をまき散らす。
亜種を含め、個体によって差はあるものの、基本的にリスクレベルS以上はある。
目の前にいるグランドドラゴンは四足歩行で翼を持たない亜種の一つ、『地龍』タイプだ。
しかし、飛行能力を捨てた代わりに得たその体躯は通常のドラゴンよりも一回り以上大きく、全身を覆う土色の鱗は並の魔法や剣撃を容易く撥ね返す重装甲そのものだ。
見た目に違わず、重厚感すら抱きそうな迫力がある。
「コォオオオオ……」
金色の瞳が俺たちを捉えるそれはまさに捕食者の視線だった。
「全員、戦闘態勢に入れ! 聖女様を死守せよ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
アルフラド団長の鋭い号令が飛ぶ。
騎士たちが円陣を組み、背後に控えるレイニース様たち四聖女を保護する。
ここを突破しなければ、目的地には辿り着けない。
「リュウト、来るわよ!」
「分かってる、先手必勝だ!」
俺は弓を引き絞り、二本の矢は風を斬り裂くように飛んでいく。
一本は硬質な鱗に弾かれたが、もう一本は狙い通り、奴の右目の目尻を切り裂く。
「グゴォオ!?」
驚きこそしているが、致命傷ではない。
「ガァアアア!」
「よっと!」
「ハッ!」
「フン!」
「ホーリーシールド!」
丸太のような尾が凄まじい風圧と共に薙ぎ払われるが、俺とシャーロットはジャンプで回避、ジャードは盾でいなし、メリスは光の結界を形成して砕け散った岩石の破片から後方の聖女たちを守っている。
アルフラド団長たち騎士もいるから、四聖女の方々も無傷だ。
「ジャード! 下がって!」
「おう、任せたぜ!」
前に出ているジャードは道を開けるように退き、ロリエは杖を前にかざす。
「アクアブレード!」
「ギャァアアアアア!」
青色の魔法陣から放たれたのは、極限まで加圧された超高圧の激流。
それは穏やかに流れる小川のせせらぎとはあまりにもほど遠い、鋭利な水の刃となってグランドドラゴンの身体に大きな傷を与える。
加圧された水は堅い金剛石すら削ると言われているけど、それが事実だと証明された。
「炎の精霊よ。我が持つ矢に灯を与えよ」
俺は“爆撃の矢”を番えながら、<感覚操作>で集中力を極限まで高め、朱色の魔力を矢尻に宿していく。
「ガァアアア!」
「ここ!」
「グギャァアアアア!」
ロリエによって刻まれた傷に向けて矢を放つと、傷口へと正確に吸い込まれ、刺さった箇所を中心に大爆発が起きた。
セレスティアロの恩恵もあるとは言え、威力の上昇値が半端じゃない。
内側から弾けるような大爆発がドラゴンの巨体を震わせる。
見た限りでも、肉を焼き、骨を砕く衝撃とダメージを与えられたな。
「トドメよ!天聖斬!」
「グォオオオオオ!」
爆炎を切り裂いて跳躍したのは聖剣エクスカリバーを構えたシャーロットであり、 黄金の光を纏った一閃がドラゴンの無防備な首筋へと振り下ろす。
「……グ、ォ…………」
数秒の時を経て、グランドドラゴンの巨体は断ち割られた大岩のように両断されて崩れ落ちた。
地響きが止まり、周囲に静寂が戻る。
「……ふぅ。やったな、シャーロット」
「ええ、完璧なタイミングだったわ。リュウト」
駆け寄った俺は、剣を収めた彼女と力強くハイタッチを交わす。
互いの手のひらに残る熱い感触が勝利の実感を運んできた。
「流石は皆様。見事な連携だった」
背後からアルフラド団長が俺たちを称えるような声が届く。
「特に、新しく勇者パーティに加入されたリュウト殿。見ているだけで分かった。神武具に選ばれるに相応しい実力と才覚を見せてもらった。貴殿の実力は本物だ。この私が保証しよう」
「あ、ありがとうございます」
俺はアルフラド団長から差し出された手を取り、握手を交わすのだった。
素直な賛辞を受けると照れ臭いな。
「さあ、行こう。この先に待つ聖なる湖まであと少しだ」
騎士たちも気を引き締め直し、再び歩を進める俺たちなのであった。
◇———
それから歩き続けて数時間後……。
「うぉ。ここが聖なる湖か……」
「どうだ?美しいだろ?」
日が落ちかけている鬱蒼とした森林を抜けていくと、神秘さを抱く透明感のある湖を中心に、自然の中で感じる芸術的な光景が広がっている。
周囲を確認してみたところ、魔族はおろか、魔物の気配さえまるで感じさせないくらいの清らかな空間が俺たちを包み込んでいるのだった。
「凄い。話で聞いた以上だ」
「引き込まれそうな壮麗さね」
「ここで四聖女の方々が儀式を行うのですね」
俺たちの後ろには、アイラ様、カトレア様、フローラ様、そして、レイニース様が儀式の準備を整えていた。
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