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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第91話 王女にして聖女の覚悟

「フォーペウロから若干離れた場所でこのような風景を拝めるとは、穴場とはこのことでしょうかね?」

「は、はぁ……。確かに、ここからの眺めは絶景ですね」


 朝日が昇ろうとしているごく近い小さな丘の上にいるのは俺とシャーロット、フォーペウロの第一王女にして四聖女の一角であるレイニース様だ。

 今は護衛中であるものの、それを含めて付き添っている。


「わたくしは今回の任務、いえ、その前から思っていたことがあります」

「……と、言いますと?」


 レイニース様の言葉に対し、シャーロットが反応し、俺も息を呑む。


「あなたは確か、リュウトと言いましたね」

「はい」

「わたくしは確信しているのです。エレミーテ王国の勇者パーティにあなたが来てくれたのは何よりの幸運であり、魔王軍との戦いに終止符を打つキーパーソンの一人になると信じています」

「「え?」」


 穏やかに微笑みながら、レイニース様はそう言った。

 俺とシャーロットの声が重なった。

 ただの冒険者から騎士団の一員から成り上がり、運命に翻弄されるままここにいる俺が魔王討伐の鍵?

 あまりにも過分な評価に対し、俺の頭の中で一瞬だけ疑問符が浮いたような気持ちになった。

 しかし、レイニース様の表情に冗談の色は微塵もなかった。


「ここから北へ目を向ければ、そこには魔族の支配する暗黒の領土があり、その深奥には魔王城が鎮座しています」

「はい」

「ご存じの通り、我が国フォーペウロは魔王軍の侵攻を食い止める要を担っております。いわば、最前線の盾です。……ですが、どんなに頑丈な盾もいつかは削れ、壊れます。その自覚は常に持てども、どうしても全ての攻撃を阻み、民を守れないこともあります。無力感に苛まれる夜も少なくありませんでした。」


 レイニース様は一度言葉を切り、天を仰いだ。

 その横顔には、一国の王女としての重圧と、聖女としての悲哀が影を落としているようにも見える。


「ですから、あなた方がここまで来る道中で魔王軍の幹部と何度か交戦しては倒していただいたこと、心より感謝しております」

「「……」」


 レイニース様の言っていることならば、俺も、いや、シャーロットたちも経験がある。

 俺の生まれた国であるエレミーテ王国やその周辺でも魔族と遭遇し、交戦したことはある。

 その中には、魔族に身を墜としたかつて俺の仲間であった男も含まれている。

 今は何とかなっていても、魔王を倒さない限り、本当の意味で世界に平和は訪れないだろう。


「本当に守り切れるのか不安になっている中、シャーロットたち勇者パーティが新たな神武具を手にした仲間を引き入れたという報せを聞いた時、一つの好機だと思ったのです。それがリュウト。あなたです」


 憂いを帯びた表情から一転、再び優しい笑顔を向けた。


「味方の全員が聖なる力を持ち、神武具を操る……。そんな都合の良いお話は存在しません。ですが、この勇者パーティには神武具の所有者が二人もいる。これはもはや、神が授けてくれた最大の慈悲。こんなに心強いことはありません。これもきっと、神様が導いてくれた運命なのではないかって、思えてなりません」


「「……」」


 運命……か。

 レイニース様の言葉がこれまでの記憶を呼び覚ます。

 故郷を失い、冒険者になって、当時いたパーティを自ら脱退して、エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に入って、かつての仲間と命を懸けた戦いを強いられ、神武具を手に入れて、勇者の血筋を受け継いでいることを知って、勇者パーティの一員となって魔王討伐の旅に出て、魔王軍の幹部と交戦して、俺は今ここにいる。

 かつての俺なら、そんな不確かな言葉を信じようとしなかったかもしれない。

 だが、今となっては何かに導かれているような感覚を否定できなくなっていた。


「わたくしはフォーペウロの第一王女であり、四聖女の一人。できることなら、皆様と一緒に魔王城に行きたいと思っておりますが、わたくしは王族であるがゆえ、この地を離れ、皆様と共に魔王城へ赴くことは叶いません。ですが、この国を命に代えても守り抜く。その信念だけは何があっても揺るぎません」


 まっすぐな瞳で俺とシャーロットを見据えるレイニース様。

 その双眸に一片の迷いもない。

 戦場に立つ俺たちとは別の形だけど、覚悟が本物であることを見逃さなかった。


「一国の姫様が、そこまで本気で国を守ろうって言うんだ。俺たちだって、期待に応えなきゃ勇者パーティなんて名乗れない。そうだろ、シャーロット?」


 俺が問い掛けると、シャーロットは力強く頷き、愛剣を握り直した。


「そうね。私たちは魔王を倒す剣として、最後まで戦うわ」


 俺はシャーロットと覚悟を確かめ合った。

 少し離れたところから待機しているロリエ、メリス、ジャードの視線も感じた。

 彼らもまた、同じ炎を胸に宿しているはずだ。


「今後の魔王討伐のため、今回の護衛、やり切ることをお約束します」

「ありがとうございます」


 シャーロットの決意表明を見たレイニース様は深く頭を下げた。

 その瞬間、太陽が地平線から完全に姿を現し、溢れ出した黄金の光が彼女の金髪や俺たちの装備を眩しく照らし出す。

 それはまるで、これから始まる過酷な旅路に希望の光が灯ったことを祝福するかのようだった。


「では、出発するぞ!」

「「「「「ハッ!」」」」」


 アルフラド団長の号令の下、俺たちは聖なる湖へと再び歩を進めることとなった。

 覚悟を秘めた聖女の祈りを背にしながら……。


◇———


 出発して二日後。


「どうだった?」

「魔物がいる。ここから二百メートル先に数は数十体くらいいるけど、ほとんどは大して強くない」


 俺は先んじて聖なる湖まで続くルートの確認を行い、戻ってきた。

 進路を阻む魔物がいることを共有するためだ。


「ただ、一体。正確には、二百メートルよりも更に先の方に強力な魔物の気配を感じるんだ。魔族じゃないと思うけど、恐らく、ドラゴンかそれに類する力を持つ魔物かもしれない」

「そう。だけど、通らないことには始まらないわね」

「だな」


 シャーロットやメリス、ロリエとジャードが頷く。


 阻む相手は全て蹴散らすだけだ。

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