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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第84話 【Side遊軍調査部隊】リュウトを想う者たち

明けましておめでとうございます!

本年度もよろしくお願いいたします!

今回は遊軍調査部隊のソフィア⇒ゾルダー⇒シーナの視点でお話が展開されます!

 エレミーテ王国の勇者パーティが旅立ってから一ヵ月が経とうとした頃。


「隊長。こちらの資料、まとめておきました」

「おお。サンキュー!」


 私は遊軍長部隊のトップであるモーゼル隊長に月間単位で騎士団に提出すべき活動報告をまとめた書類を渡した。

 そこから隊長が大なり小なり気になったことを数点聞かれたものの、問題なく答えていく。


「俺からは以上だ。下がっていいぞ」

「では、失礼します」

「ソフィア!」

「はい?」


 部屋から出ようとした時、私は隊長に呼び止められた。


「最近どうよ?」

「どう?……と申し上げますと?」

「リュウトがいない遊軍調査部隊についてだよ。あいつが勇者パーティの一員として旅に出てからもうすぐ一ヵ月が経とうとするだろ?」

「あぁ、リュウトのことですね」


 一ヵ月ほど前、遊軍調査部隊の第六班の一員として所属していたリュウトはエレミーテ王国の勇者パーティの一人に選抜され、そのリーダーであるシャーロットらと共に魔王討伐の旅に出た。


「ソフィアとしてはどう思うんだ?俺としては皆、表向きは変わりなく仕事しているように思っているんだが……」

「そうですね。基本的に変わりはありませんよ。ただ、リュウトがいないことを惜しんでいる者や寂しがっている者もそれなりにいると見ています」

「やっぱりそう思うか」


 リュウトがいなくなってから、遊軍調査部隊の雰囲気は少なからず変わった。

 戦力が大きくダウンしてしまったわけではないものの、配属されてからの数ヶ月で目覚ましい活躍と実績を見せている彼に一目置いている者もたくさんいる。

 そんなリュウトを好ましいと思っている者もまた同様だ。

 それだけに、隊の雰囲気も少しばかり沈んでいるようにも思えてならなかった。


「ちょっと残念でもあるんだよなぁ。今後の活躍次第では相応のポジションを用意してあげたいくらいに有能で腕も立つ。何だか未来の逸材を喪ったような気分になっちまうぜ。もちろんリュウトのことは認めているけどな!」

「はい。私自身も彼のことを部下として誇らしいと思っていることに嘘はありません。ですが、やはり虚しさも感じますね」

「言えてら」


 リュウトがエレミーテ王国騎士団に来た時、面接を担当し、採用を決めたのは私だ。

 私と同じジョブであるレンジャーのリュウトは予想していた以上の実力と才覚を見せ、どんどん成果を挙げていった。

 私は強さだけでなく、優しさや懐の深さを持った彼を好ましいと本心から思っている。

 将来、一緒に遊軍調査部隊を盛り上げることができたら、どんなに嬉しかったか。


「ですが、今は信じるだけですよ。魔王討伐を果たせば、リュウトも戻って来るはずです。その時は、皆で迎え入れたく思います」

「そうだな。あいつなら、きっと喜ばしい結果と一緒に帰って来る。それだけを願おう」

「はい。では、失礼します」


 私は隊長の執務室を後にするのだった。

 しばらく歩いていると、窓に映る遠くの景色を見ながらこう思うのだった。


 立派にやれよ。リュウト……。


◇———


「今のところ異常は無いみたいですね」

「そうだな。だが、何かあった時には即座に対応できるように心掛けろよ」

「承知しました!」


 遊軍調査部隊の第六班を率いる俺は直属の部下であるトロンと城下町を巡回している。

 一つの班を仕切る俺もこうして巡回することは珍しくない。


「ゾルダー班長」

「ん?何だ?」


 トロンが俺に話し掛けてきた。


「リュウトさんが旅に出てから一ヵ月が経とうとしてますよね?」

「そう言えばそうだな」


 話題はリュウトのことだ。

 リュウトは俺の班に所属している部下の一人だが、何とあいつはエレミーテ王国の勇者パーティの一員として旅に出ている。

 本当に凄いことだ。


「寂しいのか?」

「はい。寂しいです」

「そうか」


 正直に答えてくれた。

 確か、リュウトが遊軍調査部隊に来る直前、トロンは手に負えない魔物に襲われたところを彼に救われたことがあったな。

 それからトロンはリュウトのことを強く慕うようになった。

 任務を共にするうちに俺も一目置くようになっていったんだけどな。

 しばらくすると、隊舎に戻って来た。


「あの、俺。ちょっとした好奇心本位で班長に聞いてみたいことがあるんですけど……」

「聞いてみたいこと?何だ?言ってみろ」


 トロンが不意に質問してきた。


「ゾルダー班長はその……。悔しさとかは無いんですか?」

「え?」


 悔しさ?何に対する悔しさなのか、一瞬分からなかった。


「班長とリュウトさんって同じレンジャーですよね?遊軍調査部隊に来てから数ヶ月で多くの成果を挙げているリュウトさんは凄い人だと心から思っています。ですから、えっと……」

「……」


 トロンがしどろもどろになりかけた時、俺は口を開く。


「上司より強い部下なんて認めない!……って俺が思っているんじゃないよな?」

「うぅ、まぁ、そんなところです」


 なるほど、さっきの『悔しさ』ってそういう意味なんだな。


「本音を言ってしまえば、悔しいと思ってる」

(やっぱり!)

「確かにリュウトは類まれな才能を持ったレンジャーだと俺も思ってるさ。客観的に見ても凄いとしか言えないよ」


 俺の部下が勇者パーティの一員に選ばれるなんて、上司としてこんなに誇らしいことはない。

 今ではリュウトのことを俺は心から認めている。

 だけど、嫉妬を抱いている自分もいたりする。

 遊軍調査部隊の一班を束ねる者としてのプライドを考えれば、当然の感情だ。


「トロンの考えている通り、上司として、同じレンジャーとして、認めているさ。リュウトの才能やセンスも。それで、自分がリュウトに対して嫉妬心を感じていることもな。だけど、それでも俺は応援することを選ぶよ。離れていても、俺はあいつの上司だからな」

「班長……」

「さぁ、戻って報告書を書け。俺は少し用を足してくる」

「は、はい!」


 トロンは早足で隊舎に戻って行き、俺はそれを見送る。

 昼下がりの日光を見上げながら、願う。


 頑張れよ。……リュウト。


◇———


「おかわり~!」

「あいよ!」

「すみません、お冷も二つ!」

「あいよ!」


 仕事終わりの夜、あたしは部下であるアンリと一緒に城下町の酒場で酒を飲んでいる。

 明日は非番なので、思いっ切り飲むことにしている。


「……」

「ん?ぼんやりしてどうしたの?」

「あっ、いえ。リュウトさんがここを発ってからもうすぐ一カ月になるなって……」

「そっか。もう一ヵ月かぁ」


 さっきまで仕事の相談に乗ってあげていたんだけど、アンリはリュウトについて話題を挙げた。

 仕事に熱中していたら、一ヵ月って早いなって思わされる。


「リュウト、今頃どうしているんだろうね?」

「きっと勇者パーティの皆様のお役に立てるように頑張っていますよ!」

「あっさり言うわね」


 アンリはきっぱりと言い切った。

 前から思っていたけど、この子のリュウトへの信頼度はどんだけ高いんだろう?


「ねぇ」

「はい?」


 あたしの方からこんな質問をしてみた。


「アンリは寂しくないの?リュウトがいなくなって」

「本音を言うと、寂しいですね」

「やっぱり」

「シーナさんもですか?」

「あたしは……まぁ、うん」


 リュウトがいなくて寂しいのはあたしだけじゃない。

 かつて冒険者だったリュウトは元いたパーティを脱退してからギルドの紹介を通じて、遊軍調査部隊の一員になった。

 アンリは同期であるトロンと任務中に強い魔物に襲われてピンチだったところをリュウトに救われたことがあった。

 あたしも冒険者を経験したことがあり、リュウトの経歴を知った時には興味を抱き、教育係を務めた。


「私はせめて、もう数ヶ月は一緒にお仕事したかったんですけどね」

「あたしもよ。でも、国王陛下が決めて、あいつが参加を決めたなら仕方ないさ」

「はい……」


 あたしとアンリはそう呟きながらエールを口にする。

 入隊してすぐ、リュウトは周囲が目を見張るような活躍と貢献を見せ続け、次第に目を離さずにいられなくなった。

 自分と似たような経験を持つあたしと危機的な状況を救い出されたアンリ。

 抱く気持ちは似たようなモノか。


「それにしてもリュウトさんって本当に凄い人ですよね。初めて助けられた時からあんなに強いレンジャーは初めてって思っていますから」

「そこは同感。あたしが冒険者をやっていた頃でも、あれほどのレンジャーは見たことが無いからね」


 気配や魔力を正確に見極める感知力と弓術はいずれもレンジャーとして必須な素養だけど、リュウトの場合はそのレベルが非常に高かった。

 加えて白兵戦を得意とするジョブ持ちに劣らない剣術や身体のこなし、五感の鋭さ、バトルセンスなど、戦闘者としての技量も本物だ。

 凄い男だと感じていたけど、勇者パーティの一員に選ばれるとは思わなかった。


「それで、アンリはリュウトに憧れているってことね」

「はい!今ではリュウトさんのように立派なレンジャーになれるように頑張っています!次に会った時、成長を認めてもらえるように!」

「それは良い心掛けね」


 助けられたのもあるからか、アンリはリュウトを強く慕い、今では憧れの念を抱いている。

 そして、リュウトが旅に出てからは彼のようになろうと仕事だけでなく、以前よりも鍛錬にも力を入れている。

 身の丈に合うのが前提だけど、目指す目標がある人は必ず強くなる。

 言われてみれば、初めてアンリが入隊した時より、最近の彼女はあたしの目から見ても、成長しているのが分かるくらいに実力が伸びている。


「あたしも気張らなきゃなぁ」


 なんて、ボソッと言ってみた。


「シーナさん、何か言いました?」

「いや、何でもない。すいませ~ん、エールもう一杯!」


 咄嗟に取り繕ったけど、次にリュウトと再会したら、また強くなった私を見せるのも悪くないかもね。


「アンリ!今日は奢るから、リュウトについて語り合ってみようか!?」

「はい!リュウトさんの良いところでしたら、いくらでも言えますよ!」

「あたしだって!」


 そうしてあたしはアンリとエールの入った樽ジョッキを交わすのだった。


 リュウト。心配しなくても、あんたに憧れているアンリはちゃんと成長しているよ。


 それで……。次に会った時は、胸を張って強くなったって言い切れるくらいのあたしになるから……。

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