第83話 【Sideシャーロット】一緒のベッド
主人公と女勇者が何と!
「一人の女として、どう思っているのかって……」
「え?」
(何だ?何を考えているんだ?)
私は今、フォーペウロの王都バアゼルホにある王城の一室に泊まり、リュウトの部屋にいる。
私の言葉を聞いたリュウトはフリーズした。
二人っきりの空間に漂うのは魔物や魔族と戦う時とはまた違う独特な緊張感とどこか甘美な空気だ。
「あの時、魔王軍の幹部の一人だったテーゲムにやられかけた時、リュウトが助けに来てくれたじゃない」
「そのお礼だったら散々聞いたぞ」
「それはね。でも、何回も言わずにいられないくらい、本当に助かった」
「そ、そうか……」
リュウトは謙遜している素振りを崩さないけど、私にとっては心の底から助かる出来事だった。
テーゲムの策略で私は身体の自由を奪われ、あわや敗北してしまう寸前だったところをリュウトによって救われた。
それも、弱っている私の前に颯爽と現れて……。
そんな風に助けに入って来る姿は正直に言えば、カッコよかった。
女の子だったら誰でもそう思う。
「私ね……。どういうわけなんだろう?あれからずっとリュウトのことを考えるようになったの?」
「俺のことを?」
私はテーゲムによって生み出された媚薬と麻薬を掛け合わせたような有害物質を身体に受けてしまった時、抵抗できなくなりそうなほどに身体の底から吹き上がるような火照りと多好感が入り混じったような気分に襲われた。
そんな状態でリュウトがテーゲムと戦う姿を見て、決着を着けた後、今まで抱いたことがない感情を抱くようになった。
「旅の道中はさ、その……。人の目もあったからできなかったし、今はそれぞれが個室じゃない。だからね……」
まどろっこしい気持ちになりながら私は伝える。
「今晩だけでいいから、一緒に寝て欲しいって言うか……」
「え?は?」
リュウトは戸惑っていた。
そんなセリフを聞いたら当然だろって我ながら思ってしまう。
でも、ピンチを救われたあの時から胸の奥の高鳴りが日に日に強まっている自分にも気付いていて、この鼓動を鎮めるなら今のタイミングしかないと思えてならない。
「そ、それは。その俺は———」
「リュウトは嫌なの?」
「ほぇ?」
素っ頓狂な声を上げてしまったリュウト。
何だか可愛い。
「嫌かどうかで言えば……嫌じゃないよ」
「本当?」
「但し、今日だけだぞ!」
「分かった」
こうしてなし崩しのようにリュウトの部屋で一夜を共にする私なのであった。
一時間後……。
「「うぅ……」」
((自分は何やっているんだぁあああ!?))
リュウトと一緒のベッドで寝ることになったものの、お互いに背中合わせとなってしまっている。
おまけにどちらも一言もしゃべろうとしないから余計に気まずい空気が流れてしまっている。
自分からお願いしておいて何をしているんだ私は~?
「……」
「あのさ」
「ん?」
そこで沈黙を破ったのはリュウトだった。
「シャーロットってさ、勇者として、魔王討伐の使命があるって自覚した時、どんな気持ちだった?」
「え?」
「今まで聞いておかないでおいてあれだけどさ……」
突如としてこんな質問をしてきた。
だけど、ずっと黙ってばかりの状況も何だか嫌だったから話すことにした。
「私もね。聖剣エクスカリバーを引っこ抜いた時、自分でも驚いたし、勇者として祭り上げられた時、自分には世界を救うって重大な役割があるって思っていたんだ。だけど、その時の私は冒険者の資格を得る年齢でもなかったから、どうにも実感が湧かなくてね」
思えば、勇者として扱われるようになってから、私の人生のレールがその時に敷かれたのかもしれない。
魔王が目覚める確信的な情報を得るまでは鍛錬や必要な教育を受けるのに必死だった。
厳しい環境だったけど、自分の実力を高められて、得られた知識や経験を誰かの役に立てることを実感した時は苦労が吹き飛ぶほどに嬉しかった。
そんなサイクルを繰り返して数年、私はエレミーテ王国の国王陛下の命を受けて魔王討伐の旅に出ることとなった。
国が選んだ四人の仲間と共に。
「今こんな風になったのって、初期メンバーの一人だったクラークが再起不能になったのが転機だったのかもね……」
クラークが再起不能になった時、戦力の補填を急務とするためにエレミーテへ戻って来た時、初めてリュウトの存在を知り、巡り合えた。
最初はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に属する優秀な隊員くらいにしか思っていなかったけど、見守る間にそれだけで収まらない逸材だと直感するには充分な活躍を見せてくれた。
「それから、あなたが神武具セレスティアロを手にした時に確信した。魔王討伐の旅に絶対に必要な人だって……」
「……」
後でリュウトが初代勇者の血を引く先祖が遺した生き残りであると聞かされた時には驚天動地のような感覚になったな。
「リュウト。私、決めたの。」
私はゆっくりと寝返りを打ち、リュウトの背中に額を押し当てた。
「リュウトが守ってくれたこの命と力を、今度は私が仲間と一緒にいる未来や魔族の存在に脅かされる人たちのために使いたい。それが私の……本当の『勇者としての決意』。もう、逃げないよ。リュウトが側にいてくれたら、きっと強くいられると思うから」
私はもう、勇者だから戦うんじゃない。
自らの意志でその道を選んだのだから。
「シャーロット。お前の決意は俺も同じだ。お前が勇者として戦うなら、俺はその勇者を守る盾や剣、そして力にもなる。……約束だ」
「ッ!?」
リュウトは私の手を取った後、そう決意してくれた。
「ありがとうね……」
私は消え入りそうな声を絞り出しながら、暖かな眠りに委ねるように眼を閉じた。
◇———
「ん……。あっ……」
気が付けば、窓から朝日が差し込もうとした時に私は目が覚めた。
「うぇっ!」
すぐ隣には寝息を立てているリュウトがいる。
そうだ、そうだ。一緒に同じベッドで寝たんだっけな。
私は何も無かったように身の回りを整え、メンバーはもちろん、メイドや従者に見つからないように警戒しながら自分の部屋に戻り、何事もなかったかのようにやり過ごした。
そして……。
「ふぅう……」
自分が泊まる部屋の一室にどうにか戻ることができた。
私は自分のベッドに座り、仰向けで力なく寝そべる。
間もなく、朝日がスゥーッと照らしていく。
「リュウトの手……。暖かかったなぁ……」
なんて呟きながら、リュウトに握られた手をかざす私なのであった。
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