第82話 フォーペウロの女王陛下
一国の女王陛下が登場します!
「これから女王陛下と謁見するんだよな?」
「そうよ。恐らくだけど、魔王討伐に向けての報告とかがメインになりそう。後、クラークの後任であるリュウトの紹介もすると思う」
「だよな~」
騎士二人に連れられながら、フォーペウロの王場の廊下を歩く俺たち。
廊下や壁のほとんどが白の大理石でできており、置かれている家具や調度品、飾られている絵画は一目で分かる高級品だ。
ただ、数はエレミーテ王国の王城内と比べれば少なめであり、シンプルながらも清廉な印象を感じる。
「やはり緊張する?」
「まあな。エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊にいた時でも謁見の機会も本当に少なかったからさ」
「ふぅん」
一方、シャーロットたちは平気そうだった。
まあ、勇者パーティとしての立場上、魔王討伐のためにエレミーテ王国の国王陛下を始め、各国の王族と接点や面識を持つのも当然か。
ロリエは宮廷魔術師として、ジャードはエレミーテ王国騎士団の本隊にいた時から成果を挙げては国王陛下と顔を合わす機会は何度かあるって言ってたし、メリスは侯爵家の令嬢だからフォーマルな場に慣れているからね。
それを考えると羨ましくもある。
「時間が来ましたらお呼びします。こちらでお待ちください」
「ありがとうございます」
俺たちが通されたのは城内にある客間だった。
ソファや四角テーブル、花を挿している花瓶と必要最低限の家具しか置いていないものの、どれもこれも一流の職人によって手掛けられているのが一目で分かる品質だ。
エレミーテでも似たようなモノだけどね。
しばし待つことになった俺たちはソファに腰を掛ける。
「そう言えば、フォーペウロの女王陛下ってどんな方なんだろう?俺は初めてなんだけど……」
「う~ん。人格面は良い方だと思うよ。聖女たちのお陰もあるけど、民のことを第一に考えられる女王陛下としても認知されているし、魔族領が近くにあっても、辣腕を発揮しては国の治安維持にひたすら努めているって話よ。ただ……」
「ただ?」
シャーロットの口が数秒ほど止まる。
「ちょっとばかり、潔癖がすぎるって言うか、男嫌いなところがある感じかな?」
「何それ?」
これまた意外な情報だ。
潔癖症なのはともかく、実際に見ないと分からないが、場合によっては厄介なことになりそうな要素であるのは理解できた。
「リュウトさんはフォーペウロの女王陛下の名前はご存じですよね?」
「知ってる。確か……」
それからはシャーロットやメリスを中心にどのような人物かを伝えられては肝が冷えそうなエピソードもいくつか知ることになった。
「失礼する。謁見の手筈が整った。女王陛下がお待ちになっておられる」
そうこうしているうちにエリザナ女王陛下との謁見の時間が来るのだった。
◇———
「面を上げなさい」
白い陶器のような素材でできているだろう広く洗練された部屋、謁見の間。
そんな空間で頭を伏せていた俺たちは、女王陛下の言葉を受けてそっと顔を上げた。
陽光に照らされているかのように輝いている薄紫色の長髪と吸い込まんばかりな翡翠色の瞳、純白を基調とした身体つきの良さすら示さんばかりのドレスと顔周りをティアラや宝石で着飾る煌びやかな女性が玉座に座っている。
その人物こそ……。
「久方ぶりに顔を合わせることになったわね。エレミーテ王国勇者パーティの皆様」
城塞都市国家フォーペウロを治める女王陛下、エリザナ・ドゥ・フォーペウロ。その御方だ。
俺たちがいる両脇には護衛の騎士や神官数名がいる。
「して、こうして会えることを嬉しく思うのだが、一人。見知らぬ顔がいるな」
「はい。先の魔王軍の幹部の一人との戦いで戦線を離脱された人物の後任として、エレミーテ王国国王陛下、ルーフェン・フォン・エレミーテの推薦で加入されました、リュウト・ドルキオスでございます。以後、お見知りおきをいただきたく存じます」
「ふむ……」
勇者パーティのリーダー格であるシャーロットが率先して受け答えしている。
性別が違うとは言え、国を統べる女性ならではなのか、ルーフェン国王陛下とは一味も二味も違った威厳や圧力を感じる。
俺も場を濁さないように必死だ。
「それで。リュウト、と言ったか?」
「はい!」
やはり一国の女王なだけに、纏う風格や一つ一つの所作、発する言葉には得も知れないプレッシャーが込められている。
「そなたの素性や功績についてはルーフェン・フォン・エレミーテより伺っている。魔王討伐し、この世に安寧をもたらすことに力を振るうことを快諾されたと!」
「ッ!?」
「神武具セレスティアロの所有者として、その身を捧げると!」
えぇえええ!?
おいおい、確かに勇者パーティの一員として頑張ることは承諾したけど、何か誇大広告みたいに話が大きいのではって思うんですけど。
聞いた話では潔癖って言うか、男には当たりが強いって聞いているんだけど、これって答え方を一つ間違えたら悪い意味で、とんでもなくヤバい結果になりそうだ。
だけど、俺も一国の騎士団の一部隊の一員だから、育った国でなくとも、他国のトップの質問に答えないのは失礼極まりないと思う。
俺は周囲に悟られないように呼吸を整える。
「はい。私は勇者パーティの中では新参者でございます。ですが、私は私にできることに対し、命を賭した上で最善を尽くす所存でございます。魔王討伐を大目標とする勇者パーティの一員として、守るべきモノを守り抜きます!」
俺は伝えられるだけの決意を伝えた。
数秒の沈黙を破ったのは……?
「なるほど、なるほど。素晴らしい覚悟と信念だ。新参者がどのような考えでいるか、いささか不安に思っていたのだが、眼を見れば分かる。本物であるとな」
女王陛下の称賛の声だった。
それから立ち上がり、左手に持っている扇子を折り畳む。
「エレミーテ王国の勇者パーティ。魔王討伐のためにフォーペウロが持つ戦力や支援を引き続きすることを我が女王陛下の名の下に約束しよう!」
「ありがたきお言葉とお気持ちでございます!」
どうやら認められたようだ。
それからはシャーロットたちが一度エレミーテに引き返してから再びフォーペウロまで訪れるまでの経緯を伝えた後、謁見の時間が終わった。
「さて、長旅で疲れたであろう。魔王軍との戦いに携わる間、王都で一番の宿屋の部屋を拠点にすると良い。滞在している間の費用は我々が負担しよう。今夜はこの王城で一夜を過ごすと良い!」
「勿体なきお心遣いでございます」
こうして、俺たちは謁見の間から出て行くことになった。
◇———
俺は女王陛下から紹介された宿屋の一室にいる。
ちなみにそれぞれ個室だ。
「ふぅう。風呂も良かったな……」
食事の後、王宮にある浴室に入ったのだが、一言で表すならば、荘厳優美な空間だった。
浴槽が広いだけでなく、良い匂いまでしていたから本当に快適だった。
旅に出てから七対三の割合で野営生活と宿暮らしだっただけにね。
「女王陛下から俺への第一印象はクリアってところかな?ここから本当の意味で信頼してもらえるように頑張らなければな」
今いるフォーペウロの北には魔族領、そして、魔王城がある。
リフレッシュはできても、気を引き締めていこう。
そう決意した時、コンコンとノック音がした。
「リュウト。入っていい?」
「シャーロットか?いいぞ」
俺に何か用でもあるのか、シャーロットが扉を開けて入ってくる。
普段身に付けている防具類は脱いでおり、寝るときのラフな格好だ。
寝間着と呼ぶにはカジュアルすぎると思うけど、黒いタンクトップにホットパンツから伸びる手足はすらりと伸びており、改めて見るとスタイル抜群だ。
「どうしたんだ?」
「あのさ……。前に私とリュウトが二人っきりだった状況があったよね?」
「え?あぁ。確か峠を越える直前の野営だったな」
あの時、シャーロットと出発直前に少し話し込んでいた。
それにしても……。
「「……」」
風呂上りなのもあってか、シャーロットはどこか火照った様相であり、いつも以上に魅力的に見えてしまう。
「どうした?あの時、まだ言い足りないことでもあるのか?」
「言い足りないってわけじゃないの。私ね……その……リュウト」
耐え切れそうになくなりそうな沈黙が続こうとした時、シャーロットは口を開いた。
「リュウトは私のことをどう思っているのかなって?」
「どうって。あの時も言ったはずだけどシャーロットは仲間で———」
「そうじゃないの!」
「え?」
俺の言葉を遮るようにシャーロットは言葉を振り絞る。
「仲間としてじゃなくて、リュウトが私のことを……。同じ勇者の血筋を持つ者としても……。一人の女として、どう思っているのかって……」
「え?」
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