第77話 俺の功績
「この度は寝食を提供していただき、ありがとうございました」
「いえいえ。していただいたことを思えば、あれしきのこと……」
村の民宿に泊めてもらった翌日、俺たちは村長さんにお礼の言葉を述べた後、村人たちに見送られながら、馬車で次の目的地であるフォーペウロに向かった。
「にしても、魔王軍の幹部の一人があの村の村長に化けて潜伏していたとはな……」
「恐らく、先回りの意味で俺たちを待ち受けていたのかもしれないな。もしくは魔族領からの前線基地を作る目的もあったんじゃないかって思う」
ジャードの言っていたように、魔王軍に属する魔族がエレミーテ王国の王都近辺に隠しダンジョンのような秘密基地を作って潜伏していたケースもあった。
だとすれば、人を操る力を持っているテーゲムが化けて潜入するのも考えられる一手だし、適任だったのかもな。
「しかし、俺が村に来た段階で気付くことができていれば、もっと上手く対処できていたかもな」
「そんなことはない!」
「え?」
「あの時、テーゲムが仕込んだ薬をリュウトが気付いてくれなかったら、私たちは先手を取られて、今頃どうなっていたか分からなかった。いいようにやられていたかもしれなかった」
シャーロットはそう語るのだった。
「言えてるな。あの時はリュウト以外の誰も気付けなかったのも事実だったし、出し抜かれかけたのは確かだったな」
「魔力はおろか、匂いもほとんど無味無臭だったからね。リュウトがいなかったら、警戒心一つ抱かずに飲んでいたからさ」
「それに、リュウトさんが<鑑定>スキルをお持ちな上に僅かな匂いから成分まで見極めていただいたお陰で罠に嵌まることを事前に防ぎ、かたやシャーロットさんと共に魔王軍の幹部の一人を討伐まで果たす一助を担ってくださったんですもの。本当に助かりましたわ。ありがとうございます」
「いや、それほどでも……」
ジャードやロリエ、メリスから口々に褒められる俺なのであった。
こうして賞賛されると、自分は勇者パーティの一員だって再確認できる。
モチベーションも上がるな。
「それほどって。もっと胸を張っていいんだぞ!お前がいなかったら、今回のテーゲムが仕掛けた策にまんまと引っ掛かっていたかもしれなかったんだからな!でなきゃ、こうして五体満足でいられたかどうかも分からなかったんだしよ!」
「そうよ。あたしも魔法に関しての知識や素養には自信があるつもりだけど、魔力が全く絡まないことについては足りないところはまだまだあるからね。その点、自然現象って言うか、野性的な要素が求められるところに関してはリュウトのお陰で補えてるって思えてならないのよ。だから本当に助かったわ」
「魔族絡みのことであれば、わたくしがいち早く勘付かなければならないのに、意図せずとも、リュウトさんがそれを果たしてくれました。今回の経験を戒めにと思うと同時に感謝すべきです。ですから、本当にありがとうございます。リュウトさん」
「……」
こうして褒め言葉の並べっぱなしになったらなったで、それはそれで困るな。
「そう言えば、フォーペウロまで予定だと一週間はかかるようだな」
「あの峠を越える必要があるから、そのくらいすると思う」
俺は地図を見ながらシャーロットに伝えられる。
凄く大きい峠ではないものの、フォーペウロへ辿り着くには超えていかなければならない。
天候や道の状態ではそれ以上かかるかもしれない。
気を引き締めていこう。
◇———
「ふぅ~。食った食った」
「ごちそうさまでした」
「やっぱリュウトの料理は最高ね!」
「本当にそれ!お陰で野営も悪くないって思えるよ」
「そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」
俺たちは峠近くの麓で野営をすることになった。
日が落ちている時に平原はともかく、山の中へ入るのは相当なリスクであるためだ。
そのため、野営用のテントで一夜を過ごすことになった。
もちろん、男女別でだ。
「……」
静かに眠るジャードをよそに俺はテーゲムとの戦っている時やその前後について振り返っていた。
あのテーゲムは擬態する能力に優れていて、俺も警戒していたつもりだったのに、村長に化けていたことにはギリギリまで気付けなかった。
その上、既に奴の支配下に置かれていたことにも……。
振り返れば、テーゲムが死んだ後、村人たちは糸が切れた人形のように意識を失ってしまってから元に戻すことに勤める方が大変だった気もする。
それから俺は目を閉じて寝る。
数時間後……。
「うん。目が覚めちまったな」
起きてしまった。
外を見てみると、朝日が覗くかどうかの境目辺りに光が差し込もうとしている。
気分転換の意味で俺は外に出て、すぐ近くの遮る物が見当たらない原っぱに出た。
無理に寝付いて惰眠を貪るくらいなら、しっかり起きておいてイレギュラーに備えようと心得ることにした。
「ん?シャーロット?」
「ほえ?リュウト?」
広い草原にはシャーロットがいて、俺を確認した時、心なしか一瞬、素っ頓狂な声が聞こえた気もする。
俺は彼女の隣に立つ。
「一昨日は大変だったね。まさか、魔王軍の幹部の一人とやり合うことになるなんて思いもしなかったよ」
「そうだな」
「「……」」
何だか気まずい空気が流れているよ。
どうにかして話題を探している時だった。
「リュウト。本当にありがとうね。助けてくれてさ……」
「いっ。いいんだよ。好きでやっただけだから」
「好きで……か……。リュウトらしいや。だから……そのさ……私……」
「リ、リュウト……あのね……」
そんなシャーロットの頬はどこか赤かった。
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