第8話 森林で見つけた遺跡
リュウトのスキルの一部が明かされます。
「ここが例の森林だ」
「……」
俺が所属しているエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の第六班一行は調査場所である森林の入り口までやって来ている。
「俺とアンリ、トロンは少しぶりですけどね」
「はい。ここでリュウトさんと初めて会った場所ですから……」
「リュウトさんと出会った事を鮮明に思い出しますよ」
そう、俺がアンリやトロンと初めて出会った場所でもあるのだ。
仕事の意味でまた訪れるなんて……ある意味感慨深いな。
「これより、調査に入る。リスクレベルBのマッドオーガが現れたと言うことは、何かしらの理由で這い出た可能性が高い。調査を主としつつ、更なるイレギュラーも想定して行動するように!」
「「「「「ハッ!」」」」」
ゾルダーさんの号令の下、俺達は行動を開始した。
魔物と遭遇しては戦闘になるパターンは主に三つある。
一つはダンジョン内で出くわすパターンであり、もう一つは何かしらのきっかけでダンジョンから出てくるパターン、最後にとてもイレギュラーな理由で自然発生するパターンである。
魔物は本来、ダンジョンに棲み付いているのが大半だ。
ダンジョンは様々なきっかけで発生してはその中で魔物が生み出され、生きながらえて住処としている。
言ってみれば、魔物はダンジョンが生み出す魔力によって生きているとも捉えることができる。
ダンジョン内で魔物同士が共喰いするケースも珍しくないからな。
その中で何らかの理由によって魔物がダンジョンから抜け出して外界に出てしまうパターンもそれなりの確率であり、冒険者ギルドがそれを嗅ぎつけては依頼として張り出し、冒険者に解決をお願いしている。
今回の一件も本部を含めた冒険者ギルドにお願いすればってところであるが、王都の近くで起きたのもあって、まずは俺たち遊軍調査部隊が駆り出される事になった。
周囲の警戒を怠らないようにしつつ、第六班一同は森林の中を進んでいる。
「この森林って危険な場所なんでしょうかね?」
「ううん。王都の離れにある森林の中では薄暗くて不気味ではあるけど、資材や薬草が採れた話が何度もあるから、資源が取れる場所であるのは確かよ。ただ、リスクレベルBのマッドオーガどころか、最低のEであるゴブリンが発見された記録はなかったのよ」
俺の質問に対し、シーナさんが答えてくれた。
「言われてみると、マッドオーガどころかゴブリン一匹の気配すらありませんね」
「だからこそ、今回の調査は重要な事柄なんだ。もしもダンジョンが発見されたとなれば、魔物がそこから溢れ出ては近隣の町村にも被害を及ぼす危険性が高い。原因の解明は大事だが、小規模ならば我々の手で解決しておきたい次第なんだ」
「そうなんですね」
ゾルダーさんの言う通り、遊軍調査部隊だけでどうにかできる案件ならばその場で解決しておきたいのは確かでも、想像以上に大きなトラブルに発展しまう可能性を発見したら、騎士団が総力を挙げて動くか高ランクの冒険者パーティを複数募って解決に動かざるを得なくなる。
何にしても、原因の解明を第一にしつつも、危機的状況になれば命が最優先だ。
それから進んで一時間が経った。
「進んでいくにつれて静かになってきましたね」
「何か不気味に思えてきます」
「そうだな。気持ちは分からなくもないけど——ッ!?」
「リュウト?」
アンリとトロンが不安がる中、俺は一つの音を聞き取った。
瞬間……。
「ピギョッ?」
「「「「ッ!?」」」」
俺は目にも止まらぬスピードで弓矢を放ち、撃ち抜かれた一匹の鳥型の魔物がピクピクと震えた後に息絶えた。
その魔物を俺は見る。
「コイツはハンターオウルと言う魔物ですね。鳥類型の魔物の中では小さい方の部類ですが、とても柔らかい羽毛やしなやかな筋肉のお陰で限りなく無音で飛べる特技を持つんですよ。そのため、リスクレベルCの魔物の中でも厄介な魔物です。あっ、羽毛とか解体しておきましょう。魔道具や衣類の材料になりますので、換金すればそれなりの値段になりますよ」
「「「「「……」」」」」
俺が仕留めた魔物の名前や特徴について語っていると、ゾルダーさんたちは少し固まっていた。
すると……。
「おいおいおいおいリュウト!何というセンスをしているんだ!」
「はい?」
「はい?じゃねえよ!ハンターオウルって魔物自体は俺も知っているよ。しっかり集中しないと奇襲にも気付けないくらいに羽音が小さいことも含めてさ!俺が驚いているのはそれに気づく感知力と弓矢を射るスピードだよ!」
「は、はあ……」
「はあ。じゃないわよ!あたしも投げナイフで迎撃しようとしたけど、それ以上にアンタが察知して弓を手に取って矢を引いて撃つまでの流れが途轍もなくスムーズで速いし!しかも狙いはものの見事に眉間だし!」
ゾルダーさんとシーナさんは中々の剣幕で迫り、アンリやトロンたち隊員も驚いている。
それからすぐに逸る気持ちを抑えるようにゾルダーさんは咳払いを一つ挟んだ。
「まあ、ハンターオウルによる奇襲を防ぐことができた。リュウト、感謝する」
「いえ、滅相もございません」
「さあ、奥へ進むぞ」
それから俺たちは気持ちを切り替えて前へ進んでいった。
この後、ゴブリンの他にもリスクレベルDのオークやゴブリンの上位種であるシニアゴブリンと言った魔物たちが何匹か出てきたものの、ゾルダーさんとシーナさんを筆頭に上手く連携して対処していった。
ゾルダーさんは弓の腕前はもちろん、全体を冷静に見る視野の広さもあり、隊員たちが力を引き出せるように的確な指示を出しており、班長らしいリーダーシップを見せてくれた。
シーナさんはロングナイフと投げナイフを武器に身のこなしの軽さを活かした立ち回りで魔物を翻弄しては隊員たちのフォローをしていった。
かつては冒険者だっただけに、魔物を相手取る時の対処法も素晴らしかった。
アンリとトロンたち隊員も落ち着きながら、目の前の魔物を討伐する事に成功した。
「フッ!」
「「ガッ!」」
俺は弓矢を二本同時に射出してハイウルフ二体を瞬殺した。
奥へ進むと魔物と遭遇する確率は少なからず上がっているが、マッドオーガ以上に強い魔物は出てきていないため、落ち着いて対処できている。
近くに魔物の気配も感じないため、俺はハイウルフの解体を始めている。
「今度はリスクレベルDのハイウルフ二体を相手取っては一度に二本の矢を構えて、それぞれの眉間と心臓を貫いて即死。俺も弓術には自信があるものの、リュウトもとんでもない技量の持ち主だな」
「恐縮です」
「いやいや、もっと自信持っていいわよ。あたしもリュウトのような感知力と弓術の腕前を持ったレンジャーはいつ振りって思っているくらいだし!」
「それに、魔物の解体処理も丁寧ですよ。このハイウルフの爪も牙も無駄なく正確に解体できていますから、良い武器や魔道具を作る材料としてもすぐに使えそうですよ!」
「はい!私も可能であれば、いろいろと教えて欲しいですし、特訓相手になって欲しいとさえ思ってます!」
「お、俺でいいなら……」
ゾルダーさんやシーナさん、アンリやトロンが随分と持ち上げてくれるなって思うものの、悪い気もしなかった。
そんな風に誉め言葉を並べられたこと……この数年であまり無かったから……。
それから森林に入り、時に魔物と戦闘しながら進んでいく。
数時間が経過した頃だった。
ここでやってみるか。
俺はレンジャーならばほとんどの者が会得しているスキルの一つであり、魔力や気配を感じ取りやすくさせる<感知向上>を使う。
続いて、自分が持っているスキルの一種にして、五感の一部が鈍くなるのと引き換えに強化したい感覚を研ぎ澄ます<五感操作>も使用する。
俺が数年前、独学で会得したオリジナルスキルだ。
俺は目を閉じながら、視覚と味覚を鈍くする代わりに聴覚と触角を鋭敏にして、集中力を高めていく。
すると……。
「ん?」
「どうした?リュウト?」
「ちょっといいですか?」
俺はほんの僅かな……それこそ、全神経を集中させなければ気づくことも、認知することも叶わないだろう、特殊ながらも不気味さを帯びたような魔力の残滓を感じた。
そして、五感を研ぎ澄まして気取った方に手を伸ばし、うっすらと手応えを感じると同時に大きな布のような薄い膜で覆われた物を強引に引っぺがすように振り払う。
「な?隠し通路?」
「この森林にこのような通路があるとは……」
目に飛び込んだのは薄暗くも微かな光が差し込んだような得体の知れなさを粛々と抱かせるような広大な一本道だった。
俺たちは不思議に思いながらも、周囲を警戒しながら奥へ奥へと進んでいく。
そして……。
「これは……?」
「こんな遺跡が隠し通路の奥にあったとは……」
森林の最奥に辿り着くと、茂った緑に包まれながらも、どこか怪しさを感じさせる遺跡のような入り口がある。
「リュウト、よく見つけたな」
「まあ、スキルを使ってどうにかってところですね」
俺はゾルダーさんから功を労われた。
他の皆が遺跡のような光景に驚く一方、俺がその場で考えること数十秒……。
「これまでの事象から鑑みて、考えられる仮説があります。それは……」
「「「「「それは!?」」」」」
俺は一つの仮説に辿り着いた。
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