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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第75話 勇者だって頼ってもいい

 魔王軍の幹部の一人であるテーゲムの手にかけられそうになったシャーロットを守るように乱入した俺は聖弓セレスティアロを構えている。


「おかしいな。余計な奴がもう一人紛れたところまでは覚えていたんだけど、どうやってここまで来たのかな?」

「さっきも言っただろ?シャーロットの声が聴こえたからだって!」

(聴こえた?確かリュウトには<感覚操作(センス・コントロール)>があったな。だが、それだけでここまで辿り着けるとは到底思えない。まさか?)


 倒れたまま動けないシャーロットは違った場所にいたはずの俺がどうしてここにいるかを思案し、一つの仮説を導き出したような顔になっている。


「シャーロット!大丈夫か?」

「あっ。うん……」


 俺は懐から体力や魔力を回復させるポーションを取り出し、シャーロットに投げ渡す。

 だが、その手は覚束ないようにも見える。

 目立った外傷は無い辺り、精神攻撃みたいなことでもされたのか。


「リュウト……ごめんね」

「はい?」


 ポーションを飲み干せたシャーロットが謝罪の言葉を述べた。

 少し回復したようにも見えるが、まだ立てる状態じゃない上にその表情は悲痛に満ちているようにも見えた。


「勇者パーティのリーダーである私が新参者のあなたにこんな姿を見せるなんて、情けない話よね」

「……」

「可能な限り、弱みを見せないようにしてきたつもりだったのに、醜態を晒すとは恥でしかな———」

「別にいいだろ。そのくらい」

「え?」


 俺は断じ切るように言った。


「勇者と言っても、一人の人間だよ。得手や不得手もあるなら、向き不向きも一つや二つもそれはあるだろう。いちいち気に病まなくてもいいさ」

「ッ!」


 不甲斐なさを詫びたがっているシャーロットだけど、俺にはそんなの関係ない。

 俺自身、仲間のピンチを救うために好きで来ているんだからな。

 冒険者時代から中衛を担ってきた俺にとっても、前衛や後衛のピンチや尻拭いに何度も付き合ってきたんだから、今更それを苦労と思わない。


「今の間だけでも、頼れる相手がいる時は頼ってもいいさ。勇者だって、一人で戦っているんじゃないんだからな!」

「リュウト……」


 そう言い切る俺はテーゲムと再び向き直る。


「一応聞くが、お前は魔族か?」

「そうとも。俺は魔王軍の幹部の一人であるテーゲムだ。もしかすると、お前は勇者パーティの新参者か?」

「そうだ。シャーロットをこんなにしたのはテメエか?」

「だったら?」


 澄ましたような顔で言うテーゲムに対し、俺が見せたのは……。


「シュッ!」

「うおっ?」

(構えて撃つまでの動作が早くてスムーズだ)


 弓矢の早撃ちだった。

 その一矢は回避したテーゲムの頬を通り抜け、その皮膚を斬り裂く。


「リュウト、気を付けて。そいつは自分で調合した薬をばら撒いてくるわ」

「分かった!」


 シャーロットの忠告を受けた俺は力強く頷き、目を開きながらテーゲムを見据える。

 なるほど。神武具に選ばれたシャーロットに外傷を与えることなくこんな風にしたのが薬によるモノだとしたら納得だ。


「まさかとは思うが、俺が特殊な薬を生み出すだけだの魔族と思ったか?」

「むっ?」


 次の瞬間、テーゲムは両手から魔法陣を展開させると、小さなフラスコのような瓶の数々を手元に出現させる。

 俺は<鑑定>スキルで何なのかを確認する。

 結果は“ヴィロイン”を含めた麻薬成分や有害物質が大いに盛り込まれた薬液だと判明した。


「フンッ!」

「うおっ?」

「毒や呪いが効かない神武具持ちでも、劇薬には適うまい。勇者と揃って果てるがいい!」


 投げつけられた瓶は俺の足元で割れ、散らばった液体は瞬く間に気化していく。

 なるほど、以前やり合った魔王軍の幹部の一人だったギルダスとは対照的に小細工を弄するタイプってことか。


(その液体には “ヴィロイン”の他にも少しの摂取で命を落とし得る多種多様な劇薬の他にも俺の体液も混ぜてある。加えて、口や鼻を塞ごうとも、皮膚からも体内に侵入していくタイプだからな。さあ、悶え苦しめ!)


 テーゲムは勝ち誇ったような表情で俺たちを見ていた。

 そこで俺は弓矢を引いているセレスティアロを地面に向けて構え、射出した。

 ()()()()()()()()を添えて……。

 矢が地面とぶつかった時だった。


「うぉおお!?」

(何だ?魔法効果のある矢か?いや、それを使う素振りは無かった。だとしたら一体……)


 当たった箇所から旋風が巻き起こり、テーゲムは戸惑っている。

 風はすぐに止んだ時、俺は口を開いた。


「あのヤバそうな劇薬の気体は全部吹き飛ばしたぞ」

「え?は?」


 俺の言葉を聞いてもテーゲムは納得していないことをアピールするような表情を見せている。

 一応、<魔力確認(マナチェック)>で気化された劇薬が辺りを舞っていないかも確認しておいたため、ハッタリではない。


「貴様が撃ったのはタダの弓矢のはずだろ?何をしたんだ?」

「お前もいろいろ教えてくれたからな。今度は俺も教えてやらないとな」


 今しがた起きたことを受け入れられない様子のテーゲムに向けて俺はこう答えた。


「これは聖弓セレスティアロ。神武具の一つだ。そして、ただの弓矢で風を発生させることができたのはな……。撃つ直前、俺が風の精霊に力を貸すように助力を請うたからなんだよ」

「な?なん……だと?」


 俺がそう断言すると、テーゲムは自分の顔を一気に青くするのだった。

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