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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第二章

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第71話 【Sideアンリ】あの人のようになるために……

アンリ視点のお話です。

このお話をもって、第二章は終了となります。

 リュウトさんが勇者パーティの一員となり、旅に出てから三日後。


「ゾルダー班長。こちら、ご確認をお願いします!」

「おう。分かった」


 日が暮れる夕方、私は今日の分の仕事で起きたことを記した業務報告書を作成し、直属の上司にして、第六班の班長であるゾルダーさんに渡したところだ。


「うん、問題は無いな。今日は上がってもいいぞ」

「はい。お疲れ様です」

「おう、お疲れさん」


 ゾルダーさんから言われて仕事を切り上げるのだった。


「アンリ、お疲れ。もう上がり?」

「お疲れ様です。シーナ副班長。はい、今日はこれで終了です」


 廊下を歩いている時にすれ違ったのは同じく上司であるシーナ副班長だ。

 どうやら巡回から帰って来たところのようだ。


「アンリ、この後一杯どう?奢るわよ」

「ありがとうございます。ですが、今日は遠慮しておきます」

「そう?お疲れさん」

「お疲れ様です!」


 いつもなら誘いに乗るところだけど、今日はそんな気持ちになれず、断りを入れた後に私はその場を去った。


「……。トロンとか誘ってみるか」

(心なしかアンリ。最近、飲みに誘っても来ないことが増えてきてるような……?)


◇———


「よし。前よりは当てられるようになってきた」


 私はエレミーテ王国騎士団が保有している屋外の訓練場におり、そこで私は弓術の鍛錬に励んでいる。

 ここ最近、自主練する時間を確保しては自分の実力を高めていくのに余念がない。


「あ~。やっぱり上手くいかないな」


 私は最初に刺した矢の一番後ろの部分である、矢筈と呼ばれる箇所に当てる継ぎ矢と言う技法をやってみたけど、十回中十回、物の見事に失敗だ。


「それにしても、リュウトさんはよく一回で成功できますね」


 今は勇者パーティの一員となり、魔王討伐の旅に出ているリュウトさんの弓術は正に神業レベルと言ってもいい技量の持ち主だ。

 弓の腕前だけじゃなく、白兵戦でも遊軍調査部隊のトップであるモーゼル隊長にも決して遅れを取らないほどに優れている。

 大掛かりな仕事も参加しては目覚ましい成果を挙げ続けているから、今じゃリュウトさんに一目置いている人は大勢いる。


「まだまだ遠いな~。あの人には……」

「今日も一人で自主練か?」


 一人悶々としてたら、一人の女性の声が届いた。


「お姉ちゃん!」

「聞いてるぞ。ここ最近、毎日のように日課の鍛錬に加えて、終了後の自主練をしているとな」


 遊軍調査部隊の副隊長であり、実の姉であるソフィアお姉ちゃんだ。

 私と同じようにラフな格好をしていることから、どうやら自主練に取り組むようだ。


「シィ!」

「おぉお!」


 お姉ちゃんの弓の腕前は遊軍調査部隊の中でもトップレベルであるだけに、放った矢は正確に的のど真ん中を射貫いた。

 私でも易々とできない。


「シィ!」

「あっ!惜しい!」


 どうやらお姉ちゃんも継ぎ矢に挑戦しているようだけど、惜しくも外れた。

 お姉ちゃんでも難しいことをやろうとしている私って……ちょっと背伸びが過ぎちゃったかな?

 それから私たちは淡々と弓術の稽古に励んでいった。


「飲むか?」

「あ、ありがとう」


 しばらくすると、一息つくために休憩を取ることとなり、私はお姉ちゃんから飲み水が入っているボトルを受け取り、口の中を潤す。

 水分補給は大事よね。


「それにしてもアンリ。ここのところ、自主練をする時間や質も増えてきているような気もするんだけど、どうしたんだ?」

「まぁ、一言で表現するとしたら……。もっと強くなりたい。フワッとした言い方だけど、理由としてはそうなるかな」

「なるほど……」

「次にリュウトさんと再会したら、今よりもずっと強い自分を見せたいからさ!」


 私はそう答えた。

 今よりも強くなりたい、実力を高めたいのは紛れもなく、私の本心だ。


「あまり無理はしないで欲しいな。立派な姿を見せたい気持ちは分かるけど、それで身体を壊してしまったことを彼が知ったら、それこそ悲しむんじゃないか?」

「そこまで自分のことが分からないほど馬鹿じゃないよ!私だって遊軍調査部隊の一員だし、子供じゃないよ!」

「そこまで言ってないんだが……」

(こんなに自己主張が強かったっけ?この子?)


 それからは数時間、お姉ちゃんから弓術の他にも剣の扱いや近距離戦の心得まで、私の身体の疲労がピークに達するまで鍛錬に励むのだった。


◇———


「はぁあ~。疲れた!」


 自主練を終えた私は騎士団の寮の一室にある自室に戻った後、シャワーを浴びて寝間着に着替えた後、ベッドでドカッと寝転んだ。


「確かに……ちょっと意識しすぎていたのかもね。私……」


 私はリュウトさんが旅立つ直前にこう告げた。


——リュウトさん。あなたが凄いことを成し遂げようとする素晴らしい人物になるんでしたら……。私もそれに報いれるくらいの人になります!

——リュウトさんが魔王討伐の旅に出た後に会えるとすれば、数ヶ月後、数年先になるかもしれませんけど……。だから、その間を経て、次に出会った時には今以上に一皮も二皮も剝けている自分になれるように努力します!


 正直に言って、遊軍調査部隊の一員になったばかりの頃はこんな気持ちを抱かなかった。

 入隊してしばらく経ったある日、王都の周辺を巡回していた時、リスクレベルBのマッドオーガと言う魔物に襲われたことがあった。

 そこへまだ冒険者だった頃のリュウトさんが颯爽と現れて私を救ってくれた。

 その時、私の中にある何かが変わった。

 それからすぐにリュウトさんが入隊して私が所属する第六班に配属されてから、彼は目覚ましい活躍を見せ、目に見える実績を挙げ続けた。

 神武具を手にして、遂には、勇者パーティの一員となるまでになった。

 ただただ、誇らしかった。


「あの人のようになるにはもっともっと努力しないといけないけど、それって実力だけじゃないよね……」


 リュウトさんは強いだけじゃなく、優しくて勇敢で人との繋がりも大切にする人だ。

 お姉ちゃんと同じくらいに尊敬しているし、憧れの存在だ。

 強いだけの人にはそんな感情を持てるはずがないんだから。


「そうだよね。人との付き合いも疎かにしてはいけないよね」


 私はここ数日、訓練ばかりでどこか張り詰めていたかのような気持ちを抱いていたけど、人として大事なことを忘れてしまったままじゃ、あの人に会わす顔がない。

 無意識のうちに履き違えていたんだ。


「よし!まずは……」


 私はベッドから起き上がると、自分の机に座り、太いペンを握って紙に文字を書き出していった。

 少しして……。


「出来た!」


 『リュウトさんのような凄いレンジャーになる!』と、でかでかと紙に書かれている。

 目に見える形で目標を再確認できるようにするためだ。

 それから私は日課とすること、心得ることまで、紙に書いていく。


「こんなところかな?」


 全部書き終えると、壁に張り出した。

 リュウトさん並みの実力になるのは凄い努力は必要だけど、あの人に胸を張って成長できたって認められる自分になりたい。

 それが今の私の目標だ。


「明日からまた頑張ろう!」


 そう決意する私なのであった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


・2025年12月18日は『第二章 あらすじ』

・2025年12月19日は『登場人物設定』

・2025年12月20日は『第71話 北へ』


を公開予定です!


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