第68話 【Side元・戦鬼の大剣メンバー】それぞれの日常
元・戦鬼の大剣のメンバーだったビーゴルとアキリラ視点のお話です!
リュウトが勇者パーティの一員となって旅に出た翌日。
「お~い!これも荷台に運んでくれ!」
「おう!」
俺の名前はビーゴル。
エレミーテ王国の王都から遠く離れた町村にある野菜が育つ畑で俺は農作業に勤しんでいる。
王都エメラフィールのような華やかさや賑やかさとは程遠いくらいに静かではいながら、同時にのどかな場所でもある。
俺は実家にある畑にて、鍬を手に旬の野菜を耕しているところだ。
「ビーゴル!一旦休憩しようぜ!」
「分かった!兄貴!」
半分近くまで進めたところで農夫である兄に声を掛けられ、少しの休息を取ることになった。
「ふぅう……」
「この調子だと、今日中に終わりそうだな」
「だといいけど」
休憩を兄貴と取っている時だった。
「見た感じだと、切断されたって言ってた腕の調子は悪くなさそうだけど、どうだ?」
「まぁ、大丈夫ってところだな。さっきみたいに鍬を持って畑を耕したりはできるし、重い物を持って歩くもできつつあるから、上々ってところだな」
「そうか」
ジョブは戦士である俺が家族の営む農家の仕事をやっているものの、数ヶ月前まではAランクの冒険者パーティ『戦鬼の大剣』のメンバーだった。
しかし、リーダー格だったガルドスの暴走が原因で取り返しのつかない事態を招いた末に解散となった。
その時に俺は生きるか死ぬかの重傷を負い、片腕も斬り飛ばされた。
幸いにも腕は引っ付いてくれたものの、冒険者として再起するのは到底不可能と言われてしまい、最終的には引退せざるを得なくなった。
今でこそ、こうして農作業ができるくらいには回復したものの、冒険者に戻れない後悔や事実は今でも残っている。
「兄貴、今日中にやらなきゃいけないことって他にあったっけ?」
「あるとしたら、今日の分の事務作業や夕方に作物を買い取りに来る業者の対応くらいかな?」
「そっか。じゃあ、事務作業の方を手伝いながら教えてもらってもいいか?少しは覚えていかなきゃだからさ!」
「分かった。時間は空けとけよ」
「サンキュー」
「……」
「兄貴?」
休憩を兼ねて今日やるべきことを確認し終えた時、兄貴が俺の顔をジッと見ており、思わず問いかける。
「お前、変わったな」
「え?」
「昔はやんちゃ坊主そのものだったお前が今ではこうして家業を真剣に手伝ってくれて、家族を思って行動してくれている。あんなに家業を継ぐのを嫌がっていたお前がだ」
「ちょっ、止してくれよ」
正直に言って、昔の俺は家業を継ごうなんて考えていなかった。
小さい頃に俺が住む町を訪れた冒険者パーティによって繁殖しては作物を荒らす魔物を見事に解決する姿を見たこと、おとぎ話や冒険譚にのめり込んだこと、ジョブが戦士であることを知ったのをきっかけに冒険者を志した。
まぁ、ロマンを求めたってところだ。
だけど、今では冒険者を止めることになってしまい、こうして農夫に落ち着いている。
「俺も学んだんだよ。いろいろとな」
「いろいろ?」
「ああ。本当にいろんなことをな……」
「そうかい。もうすぐ親父や兄さんも帰って来る。さっさと終わらせようぜ!」
「おう!」
休憩を終えた俺は気持ちを切り替えて、再び農作業に勤しむのだった。
あいつら……今頃どうしてるのかな?
何てことを思いながら……。
◇———
王都より南にある一つの街。
「いや~、魔術師の君がいてくれて、結界の張替えがスムーズに進んだよ。本当にありがとう」
「いえいえ、このくらいでしたら問題ないですよ」
あたしはアキリラ。
魔術師であるあたしは生まれた街の結界を張る仕事を終えた。
この町には魔力を込めることによって張り出される結界によって、外部から魔物が侵入してくるのを防いでくれる。
そのため、王都ほどではないが、治安は比較的良い。
「流石はAランクの冒険者パーティにいただけあるな!」
「ま、まぁ。あははは……」
「またよろしくな」
「任せてください」
「これ、少ないけど謝礼金だ。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
数ヶ月前までのあたしはAランクまで登り詰めた冒険者パーティ『戦鬼の大剣』の一員だった。
だけど、パーティのリーダー格にして、起ち上げた時からの仲であったガルドスが暴走の末に魔族へ身を墜としてしまった挙句、彼の死や仲間だったビーゴルの冒険者として再起不能な重傷を負ったことも重なり、生き残った元メンバーと話し合いの末に解散となった。
今は冒険者稼業を行っておらず、生まれ故郷の町に戻っており、魔術を活かせる仕事をもらいながら生計を立てている。
「謝礼金ももらったし、買っていってあげるか」
目に付いた八百屋で果物を数点購入したあたしはある場所へと向かった。
「あっ!アキリラしゃん!」
「アキリラお姉ちゃん!」
「「お帰り!」」
「ただいま」
「何それ?果物?」
「食べたい食べたい」
「分かった分かった」
それは町の教会だ。
あたしが帰って来ると教会で育てられている身寄りのない子供たちが駆け寄って来た。
「あっ、アキリラ。お帰りなさい」
「ただいま、シスター」
教会の扉からは黒の修道着に身を包んだ壮年のシスターも出てきた。
それから子供たちの相手をすることになり、気がつけば夕暮れになっていた。
「全員、寝付いたわ」
「お疲れ様」
夜も更け、食事やお風呂を済ませた子供たちが眠った頃、あたしはリビングでシスターと二人っきりになった。
「あなたこそお疲れ様。今日は町の結界を張るお仕事をしたんですってね。買ってきた果物もその時に頂いたお金で買ったのでしょう?」
「うん。たくさんは買えなかったけど……」
「そのお陰で子供たちも大喜びしていたのよ。立派なことよ」
「ありがとう」
「それにしても、あんなに小さかったアキリラがね……。冒険者として町を出たお陰なのか、七年前と比べると、良い意味で変わったように思うわ」
「もう、シスターったら……」
今いる教会はあたしが生まれ育った場所であり、向き合っているシスターはあたしの育ての親だ。
物心が着いてなかった頃、あたしはシスターに拾われた。
幼い頃からシスターは両親のいないあたしのことを愛情深く育ててくれた。
魔術師のジョブを授かったあたしは十五歳になった時、冒険者稼業を始め、それからすぐにガルドスとビーゴルに出会い、『戦鬼の大剣』を結成した。
安定的に稼げるようになってからは少しだけど、教会にも寄付していた。
「そこまで褒められたモノじゃないよ。冒険者になってからも失敗したことは何度かあるし、実際に大きな失敗をしたから、こうして町に戻って来る結果になっちゃったし……。今振り返ると、あ~あって後悔しちゃったこともたくさんしたからね……」
あたしは頭が痛そうに左手で額を抑える。
「それでも、あなたは成長したと思うわ。見ていたら分かる」
「本当かな?」
「ええ。大きな挫折を経験してしまうことは決して恥じゃないわ。冒険者として培った経験や磨いた技術はこの先のあなたを必ず助けてくれる。そして、誰かを救える。私はそう信じているよ」
「シスター……」
「困ったことがあったら、遠慮なく相談なさい。あなたの人生はまだまだこれからなんだから……」
「うん!」
シスターのお陰で、また頑張ろうって思えるようになった。
冒険者だけがあたしの人生の全てじゃない。
そうよね……?リュウト。
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