第66話 旅立ちの時
リュウト、勇者パーティの一員として旅立ちます!
出発の日を迎えたこの頃。
俺は勇者パーティのリーダー格であるシャーロットさん、同メンバーのロリエさんとメリスさん、ジャードさんと門の近くに立っている。
そんな中でだ。
「中々に大掛かりな見送りだな」
「ですね……」
少し驚いたような表情をしている俺とシャーロットさんの視線の先には数十人の集団ができている。
「リュウト、頑張れよ!」
「お前ならやれる!」
「しっかりな!」
「信じてるぞ!」
勇者パーティの一員となった俺を見送るため、何と遊軍調査部隊のほとんどの隊員が来ている。
モーゼル隊長やソフィア副隊長だけでなく、俺が所属している第六班の班長であるゾルダーさんや副班長のシーナさん、アンリやトロンたちもいる。
その中にはセアラ様やリリナもいる。
中々の騒ぎになっているな。
「皆、見送りに来たんですか?」
「当たり前だろ?それに、数ヶ月は戻って来れないだろうから、ギリギリまでお前の顔を見ておきたいんだよ」
「それは嬉しいです」
そう言うモーゼル隊長は気さくに笑う。
「リュウト。その格好、魔王討伐の旅に出るために用意したんだな?」
「はい」
ソフィア副隊長の言うように、今の俺は遊軍調査部隊の隊服ではなく、冒険の旅に出るような服装だ。
カーキ色を基調とした隊服を参考にしたようなデザインであり、心臓を始めとする急所を守ることに焦点を置いた強化革鎧も付けている。
リスクレベルAのミノタウロスやギガオークなどの魔物の皮膚を数種類織り込んだ特殊仕様のため、そんじょそこらのよりもかなり丈夫であり、それでいて軽い。
陛下がお抱えの錬金術師や魔道具師を嗾けてまで用意して下さったならば、大事に使わないとだな。
加えて、革製の指ぬきグローブにくっつくようにバングルが両手に一つずつはめられており、これらは戦闘や旅を補助する魔道具だ。
「にしても、旅に出る格好も様になっているぜ」
「うん。まるで冒険者に戻ったかのような姿ね!」
「とても素敵です!」
「カッコイイです!」
「あ、ありがとう……」
ゾルダーさんやシーナさん、アンリやトロンたちも揃いに揃って褒めるものだからリアクションに困ってしまいそうだ。
だけど、シーナさんのセリフを聞いたら、素直にそう思ってしまう。
また、冒険の旅に出られるんだって……。
「リュウト!」
「はい!」
そこへモーゼル隊長が俺に話しかけてきた。
その表情は真剣そのものだ。
「俺はお前が遊軍調査部隊の一員になってくれたことを心から嬉しく思っているのに嘘は無い。本心を言えば、ずっといて欲しい。そう思ってならないくらいの存在だ。だが、魔王討伐と言う使命を抱える勇者パーティの一員となったならば、しっかりと送り出すのもやぶさかではない!」
シリアスな空気が流れて数秒……。
「だから、リュウト!お前はお前にできることを!お前だからできる何かを勇者パーティの皆様に与えるように努めてくれ!」
「ッ!?」
モーゼル隊長からの真っ直ぐな激励だった。
側にいるソフィア副隊長や後ろに控えるゾルダーさんやシーナさん、アンリやトロンも「頑張ってくれ!」ってメッセージが伝わって来る。
「皆……。ありがとうございます」
俺はそう伝えるのだった。
「リュウトさん」
「はい?」
そこへセアラ様が話し掛けてきた。
「わたくしより一言。リュウトさんの旅に幸があることを心よりお祈り申し上げます。それから……。メリスとも上手くやれることも願います」
「はい!」
そう言うセアラ様は柔和な笑みを浮かべており、実妹であるメリスさんも照れ臭そうにしている。
その時に。
「リュウト!」
「ん?」
「あの……その……」
続いて前に出てきたのはリリナであり、その顔には愛しさと切なさが入り混じっているようだった。
前日に会っておいたけど、長い旅になることは大いにあり得るので、こうして顔を合わせることはしばらく叶わなくなってしまう。
見つめ合うこと数秒……。
「きっと帰って来てね。待ってるから」
「ああ!」
互いに再会を約束する言葉だった。
俺の胸にはリリナからもらった五角形の盾を模したデザインの青味が交じった銀色の首飾りがある。
これに誓って、為すべきことを為さないとだな。
「馬車の準備もできたようだな。そろそろ行こう」
「はい!では、行ってくる!」
そして、俺たち勇者パーティは騎士団が保有している馬車の荷台に乗り、目的地へ向けて動き出すのだった。
俺は互いに見えなくなるまで皆に向けて手を振り続けた。
◇———
「見えなくなったな」
見送ってくれた仲間たちが視界に捉えられなくなるまでに進んだ俺たちはシャーロットさんたちと向かい合う。
「改めて、よろしくお願いします」
「「「「……」」」」
俺が丁寧にお辞儀すると、無言の時間が数秒続いた。
「リュウト、一つ言いたいことがある」
「はい?」
するとシャーロットさんが口を開く。
「あなたもこうして魔王討伐の旅に私たちと出ることになったんだ。だから、これからは敬語や敬称はなしにして欲しいんだ」
「え?」
「先の遠征の時は騎士団と協力関係だったから丁寧な態度を通していたんだろうが、今は同じパーティの仲間だ。それに、年齢も近いこともあるから、堅苦しい話し方は無しにしたいと思う」
それは呼び捨てや気さくな話し方の要求だった。
冒険者時代に所属していた『戦鬼の大剣』でも年齢差に関係なくため口だったな。
「勇者パーティと言っても、特別視して欲しいわけじゃないからね。だから、私のことは気兼ねなくシャーロットって呼んで欲しい」
「あたしのこともロリエって呼んでもいいよ」
「わたくしのこともメリスとお呼び下さい。旅の時だけでも、わたくしが貴族令嬢であることは忘れても構いませんよ」
「俺もジャードって呼んでいいぜ」
「皆……」
表情から見ても、フランクな付き合いをして欲しいと分かる。
冒険の旅に出るのだから、よそよそしい話し方をするのも無粋な話かもしれないな。
「分かった。ジャード。ロリエ。メリス。そして、シャーロット。これからもよろしくな!」
「ええ。こちらもよろしくね。リュウト!」
俺はシャーロットさ、じゃなくてシャーロットから差し出された手を取り、互いに力強く握手を交わす。
そして、果たすべき使命と未知の挑戦と共に、俺の新たな旅が幕を開けるのだった。
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