第65話 【Side勇者パーティ】出発前夜
視点がジャード⇒メリス⇒ロリエ⇒シャーロット⇒リュウトの順で変わります!
勇者パーティ出発前日。
「再び、魔族領に突入するのだな?」
「ええ。クラークが抜けた穴も補填されましたので……」
俺の目の前にいるのはエレミーテ王国騎士団のトップであり、上司でもあるシュナイゼル団長だ。
夜の帳が降りた頃、俺は団長の執務室にある応接セットで酒を飲み交わしている。
俺が勇者パーティの一員として魔王討伐の旅に出る前夜には毎回やっている。
「して、その後任であるレンジャーの名前はリュウト・ドルキオスと言ったな。どのように感じた?」
「そうですね。一言で申し上げるのであれば……。ポテンシャルの塊のようなレンジャーですね。弓術や剣術もクラークと同等。いえ、それ以上ではと見ています」
「ほう。お前がそこまで言うとはな」
話題は新たに勇者パーティの一員となったリュウトについてだった。
シャーロットたちからも聞いていたけど、先日、模擬戦のようなことをリュウトと行った。
鍛錬を重ねてきたからなのか、普通に知られているレンジャーよりも腕力があるのは確かであるが、俺には遠く及ばない。
正面からの押し合いならば、間違いなく俺に分があるだろう。
だが、相手の攻撃や動きを読む能力に優れており、戦闘センスは非常に高い。
「もしかしたら、魔王討伐に良い影響をもたらしてくれると思いますよ」
「そうか。だが、無茶はしすぎるなよ」
「分かってます」
そう言いながら、俺はグラスに入ったワインを煽るように飲むのだった。
◇———
「明日か……」
わたくしは実家のお屋敷の自室にいます。
旅に出たらしばらくは実家もとい、王都に戻ることは叶いませんので、時間が許す限りは家族と過ごすようにしています。
「魔王討伐の旅は過酷を極めていくことでしょうね」
窓に映る月を眺めながら、ティーカップに入ったハーブティーを口に入れました。
「はい?」
「メリス。今いいかしら?」
「どうぞ」
ノック音がしたので、私は入室の許可を出しました。
入って来たのは……。
「あら?まだ眠れない感じかしら?」
「お姉様?」
私と同じ聖女であり、わたくしの姉であるセアラ・フォルティーネ。
わたくしは勇者パーティの一員として魔王討伐の旅に出ている一方、お姉様は王都の平和を守るために日々、尽力されております。
侯爵の爵位を授かっているフォルティーネ家ですが、家族構成は両親とお姉様、そして、このわたくしです。
お姉様は長女であるため、家督を継ぐことも視野に入れております。
そのため、家の後継者であるお姉様を過酷な魔王討伐の旅に行かせるよりも、次女であるわたくしが名乗りを挙げたのです。
「ええ。まぁ……」
「隣、いいかしら?」
「はい、どうぞ」
お姉様はわたくしの隣にある椅子に腰を掛けました。
「明日、また行くのよね?今度はリュウトさんと一緒に……」
「はい」
勇者パーティの一員にレンジャーのリュウトさんが加わることは姉も存じております。
もちろん、リュウトさんに勇者の血が流れていることも……。
「メリス。リュウトさんを見てどう思ったのかしら?」
「リュウトさん?そうですね……」
わたくしは自分から見てのリュウトさんについてお姉様に話しました。
「そう。あなたも同じことを思っているのね」
「はい。お姉様もリュウトさんのことを?」
「ええ。最初に見た時はどこにでもいるような、遊軍調査部隊の一隊員としか見ていなかったわ。だけど、彼と共に行動する機会や戦う姿を垣間見る内に、只者ではない何かを持っているって思わせてくれた。後に聖弓セレスティアロを手に取り、勇者の血を引いているって知った時には納得がいくって認める自分もいるわ」
そう語るお姉様は子供のように目を輝かせている、まではいきませんが、本心からリュウトさんを認めているって思わせるような表情もしていました。
男性相手には警戒心の強いお姉様が心を開いたように話す姿を見て、わたくしも意外に感じました。
「お姉様がそこまで褒めるなんて……。でも、わたくしもリュウトさんだったら、信じても良いって思わせる期待感があるんですよ。だから、リュウトさんと共に最善を尽くし、勇者パーティのお役に立てるように努めます」
「うん!あなたならできるわ!」
そう頷くお姉様の顔は優しくも暖かかったのでした。
◇———
「……」
あたしは勇者パーティが拠点にしている自分の部屋で魔術書を読み込んでいた。
明日は新たなメンバーとなったリュウトを迎えてから初めての旅立ちとなる。
「相手がタフネスに優れたギルダスだったとは言え、シャーロットやメリスはもちろん、リュウトにはいろんな意味で助けられたからなぁ……」
これまでもあたしは魔王軍の幹部と交戦してきたことはあるし、最終的に上手く行ったことはあれども、反省すべき点を見つけては会得すべき魔術や講じるべき手段を考えては行動に移してきたつもりだ。
ギルダスとの戦いでは、「あれ以上の頑強さを備えた幹部格がいるのか?」や「魔王が幹部格さえ霞むようなタフネスを持っていたら?」ってことを遠征している時に移動している時や拠点に戻って来てからずっと考えている。
「いざとなれば、リュウトと共に主砲を担うことになるかもしれないわね」
リュウトは聖弓セレスティアロを携えて魔王軍との戦いに身を投じることになる。
彼の弓術は先のギルダスとの二回目の戦いから見ていたけど、あたしの目から見ても驚愕せざるを得なかった。
おまけに剣の腕前もジャードに後れを取らないモノもあるため、パーティでは中衛を担うこととなるのは間違いない。
「そうだ。確かあれがあったな」
あることを思い出したあたしは自分用の“マジックバッグ”から一つの魔道具を取り出す。
「これ、リュウトにとっては絶対に助けになる物よね?」
◇———
「ふぅう。このくらいにしておこう」
私は拠点としている勇者パーティの邸宅の屋上におり、稽古用の木剣で素振りをしている。
本当だったらもう数時間するつもりだけど、オーバーワークになると却って身体に悪いので、ここで切り上げることにした。
「明日か……」
翌日、リュウトと言うレンジャーを新しい勇者パーティの一員として迎え入れて初の魔王討伐の旅に出る。
「あの時もこんな感じの風が吹いていたな……」
そよぐ夜風は涼しすぎない、心地良さを覚えさせる感触だ。
それは私が勇者に選ばれて初めて、魔王討伐の旅に出る前日を思い出させる。
最初の旅ではロリエとメリス、ジャードとクラークの五人であり、何度も魔王軍の幹部と交戦してきた。
しかし、ある時にギルダスと戦った時、クラークは再起不能になるほどの重傷を受けてしまった。
その時の状況と記憶は今でも覚えていて、後悔もしている。
「だけど、繰り返しはしない。もう二度と……」
新たな勇者パーティのメンバーとなるリュウトはただのレンジャーではない。
彼には勇者の血が流れている、つまり、私と同じだ。
遠征の時に遭遇したギルダスとの戦いでは普通のレンジャーで収まらないような戦いぶりを見せてくれた。
聖弓セレスティアロを手にした事実を鑑みれば、納得もできる。
私たちの魔王討伐の旅に大きな恩恵をもたらしてくれると確信している。
「絶対に魔王を倒す。そして……」
仲間も世界も守り抜く。
そう自分に誓いながら胸に拳を当て、輝く満月を見上げるのだった。
◇———
「ごめんね。準備で忙しいはずなのに……」
「いいんだ。ほとんど終わっているから」
俺は王都のとある酒場の個室にいる。目の前にいるのは冒険者時代の仲間であったリリナだ。
彼女に呼び出された。
「リュウト。あのね……」
「うん……」
リリナは事前に用意していたであろう、紙袋からある物を取り出した。
横に短く縦に長いタイプの小さめなケースだ。
「これは?」
その中身は五角形の盾を模したデザインの青味が交じった首飾りだった。
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