第60話 神武具を取る
(良い意味で、)とんでもないことが起きます!
「着いたぞ!」
「オォオオオオ!」
ギルダスとの戦いを征した俺たちは目的地である神殿へと辿り着いた。
門のように並ぶ柱や壁面は純白が基調となっており、辺りに漂わせる空気は美しさや神々しさを感じる。
「リュウト。目が子供のようにキラキラしているぞ」
「いえ、生きてる間にこんな経験ができるなんて思ってもみなかったので……」
俺自身、本物の神殿を見るのは初めてであり、アンリやトロンら若手勢の目は燦燦と輝いている。
一方、シャーロットさんたち勇者パーティやソフィア副隊長らベテラン勢は訪れた経験があるのか、観光スポットを眺めるかのように落ち着いて見ている。
「それで、この神殿の中に神武具が収められていると……」
「そうだ。勇者の持つ聖剣もこことは別の神殿で抜いたそうだ」
ソフィア副隊長曰く、シャーロットさんが持つ聖剣エクスカリバーも神武具の一つであり、勇者を始めとする特別な力を秘めた者にしか手に取ることができず、誰でも彼でも使える代物ではないとのことだ。
もしかしたら、勇者パーティの誰かが使うのかな?
あるいは神武具だけでも手に入れて、魔王軍に渡ってしまわないように保管するのか?
どうなんだろうな。
そう思いながら神殿へと入っていく。
「随分と静かですね」
「神武具が収められているからかもしれないな」
「なるほど……」
神秘さを感じさせる外観とは裏腹に中は道を照らす程度の明かりや奥へと続く通路があるだけだ。
俺たちが歩く足音以外、何一つ聞こえない静寂さに包まれている。
魔物やトラップの気配は全く無いものの、この静かな空間が却って不気味に思えてきそうだ。
いや、神殿の中でそんなことを思案するのは失礼だな。
しばらく歩いていると……。
「広いな」
「ああ。それに、綺麗だ」
俺たちは神殿の最奥と思しき部屋まで辿り着いた。
部屋の上部にはカラフルなステンドグラスのようなモノがはめ込まれており、そこから差し込む光が美しくて品を感じさせてくれる。
感心していると、ある物が目に飛び込む。
「ソフィア副隊長、あれって?」
「えぇえ!神武具の一種とされる……。聖弓セレスティアロ!」
部屋の奥には一つの武具が飾られている台座がある。
形は比較的シンプルだけど、白銀を基調にした洗練されつつも豪華さを感じさせるような弓を模したようなデザインだ。
俺も<感覚操作>や<魔力確認>などのスキルを活かしながら、改めて周囲を警戒してみたけど、何かが飛び出すような兆候は無かった。
「魔物やトラップの類が飛んで来る気配は無いですね。分かることがあるとすれば、台座に飾られている神武具から神々しくも清廉な何かを感じるくらいですね」
「そうか……」
「……」
そう感じ取った俺の意見に対し、ソフィア副隊長は納得し、シャーロットさんは神妙な面持ちで俺を見ていた。
するとシャーロットさんが口を開く。
「では、リュウト。一緒に来てくれないか?」
「「「「なっ!?」」」」
「え?それはどういう……?」
聞いたら何だ?
まるで、「あの神武具を取るのを手伝ってくれ」とでも言ってるような流れになっているじゃないか?
アンリやシーナさんも抗議したがるような素振りを見せるも、ソフィア副隊長が両腕を広げながら、「今は黙っていて欲しい」とアピールするような仕草を見せ、二人は何も言わずに引き下がった。
「突然のことで戸惑っているかもしれないのは分かっているつもりだ。だが、どうしても必要なことなんだ。どうか頼む。万が一の時には私が責任を全て負う」
「はぁあ……。分かりました」
シャーロットさんは躊躇いを感じさせないお辞儀でお願いしてきた。
俺はシャーロットさんやロリエさん、メリスさんやジャードさんと一緒に神武具が刺さっている台座の下まで歩いていく。
「これが神武具か……」
「リュウト……」
遠くから見ても神秘さを感じたものの、こうして近くまで来たら、手に取ろうとすることさえ憚られるのではって思わざるを得ない境界線のような類を感じ取ってしまう。
まぁ、聖剣エクスカリバーに選ばれたシャーロットさんが最後に引き抜いてどうにかなるんだったら、それはそれで結果オーライか。
「ふぅう……。では、やります」
真剣な面持ちで見守られる中、呼吸を整えた俺は聖弓セレスティアロの前に立ち、そっと手を伸ばす。
果たして……?
「ッ!!」
俺がセレスティアロに手を掛けると、眩い光が辺り一面に放出された。
思わず目を瞑った上で、背けるように顔を捩る。
そこからしばらくの時間が経ち、恐る恐る目を見開いてみる。
「……?あれ?」
「うぉ……?」
「こ、これは?」
そこにあったのは……。
「こ、これって……?」
戸惑いながら、神武具の一つにして、聖弓セレスティアロを手に取っている俺だった。
ちょっと待て。方々で聞いている話を含めて今のこの状況って……まさかのまさか?
「あ、あの……。これは……自分が引き抜いたってことにしてしまってもよろしいのですかね?何て言いますか、その……」
「「「「……」」」」
(やはり……リュウト。お前は……)
シャーロットさん以外のソフィア副隊長たちは唖然としている。
それも当然だ。
勇者パーティの一員でもなければ、エレミーテ王国騎士団の一人の隊員でしかない俺がこうして神武具を引っこ抜いて手にしている。
前もって聞いている通りならば、そうなるだろうって話なのに、現実にそうなっている状況となっているのはどうしてって思うしかいられない俺がいる。
「よし!神武具も手に入ったことだし、王都に戻ろう!」
「ちょ、えっ?なぁあ……?」
用は済んだと言わんばかりに神殿を出ようとするシャーロットさんたちをよそに、その場で狼狽したくなりそうな俺なのであった。
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