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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第二章

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第58話 薄氷の攻防

戦闘シーンが目立ちます!

「カァアアア!」

「フッ!」


 俺は魔王軍の幹部の一人であるギルダスとの戦いに身を投じている。

 振り回される斧による一撃は凄まじいパワーが乗っかっているだけでなく、巨躯に見合わぬ機動力と身のこなしも見せられた。

 周囲の空気が重く振動するような迫力を感じさせ、その顔には戦闘を楽しみながら、「自分が勝つ」と言わんばかりの確信が込められていた。


(一歩間違えたら、俺もあの世行きだ!)


 風を裂くような斬撃が俺を襲うも、<感覚操作(センス・コントロール)>で味覚と触角、嗅覚を鈍くするのと引き換えに視力を底上げしながら、ギルダスの体躯を精緻に捉えながら立ち回る。


(でも、見えなくはない!全部いなすか躱す!)

「ここっ!」

「グッ!」


 斧の切っ先だけでなく、ギルダスの目線や肩の動き、呼吸や斧を振るう時の歩数まで、攻撃する際に怒る予兆を先に察知しながら攻撃を外していく。

 僅かな隙を見つけていくと、俺は片手剣による斬撃を浴びせていく。


「みみっちいな!」

「ハァア!」


 ギルダスは、皮一枚しか当てられない状況に苛立ちながら、縦横無尽に連続して大斧を振り回す。

 単なる暴力的で隙だらけの攻撃に見えるかもしれないけど、ギルダスが振るう一つ一つの剣戟には力だけでなく、熟練された剣士のような技術も重ねられている。

 少なくとも、並みの胆力しか持たない者であれば、その連撃から生じる風圧と威圧感だけで、動きを止めてしまったがために一瞬で真っ二つにされるだろう。

 いや、ベテランの実力者でも相手になるかどうかも疑問符を抱いてしまいそうだ。

 正直に言って、回避や受け流しを続ける俺も常に紙一重だ。


「ギルダスの連撃をあんな風に避けるかいなし続けるなんて……。クラークでもできなかったわよ……」

「リュウトさん。凄い……」

(お姉様から聞いてはいたけど、これほどとは!)


 俺の動きを見ているロリエさんやメリスさんは感嘆の表情を見せている。


(もう少し……。もう少し……)


 二人の後ろではシャーロットさんが集中力を高めながら、魔力を練り上げていく。

 あともう少しだ。


「フンッ!」

「グオッ!」

(この野郎!)


 俺はギルダスの水平斬りに対して斜め下に屈みながらヘッドスライディングで躱し、空いた距離になったところで弓に持ち替え、“爆撃の矢”を当てる。

 与えるダメージは致命に至らせられないものの、確実に積み重なっている。

 しかし。


「凶刃・王牙乱舞(おうがらんぶ)!」

「ぐぉおお!」


 次に飛んで来たのはどす黒い魔力が込められた数々の漆黒の衝撃波だった。

 ロリエさんとメリスさんで自分たちやシャーロットさんを守り、俺は必死で躱す。

 飛んで来た一つを剣で弾こうとしたものの、完璧には流し切れず、脇腹を掠った。


「ぐぅう!」

「まだまだこれからだぜぇえええ!」


 ギルダスは己を奮い立たさんばかりの咆哮を上げる。

 勇者パーティを苦戦させたことのある魔王軍の幹部にして歴戦の猛者なだけに、易々と倒れてはくれない。

 その時だった。


「くっ!」


 一瞬であるが、呼吸が乱れ、身体が重く感じた。

 その感覚には覚えがあったけど、時間をかけて思い返す余力は今の俺には無い。

 

「隙ありだ!」


その僅かな変化をギルダスが見逃すはずはなかった。

一気に俺との間合いを詰め、斧を袈裟に振り抜く。


「カァアアア!」

「うぉおおお!」


 俺は身を捩って回避した。

 ……と思った。


「そう避けると思ったぞ!」

「うっ!?」


 斧をスムーズに操るギルダスが繰り出したのは棒術のような突きであり、その柄の先端は吸い込まれるように俺の鳩尾に突き刺さる。


「斧で斬るだけが能じゃねえぞ!」

「ぐぅううう!」


 ギルダスの驚異的な腕力から放たれたその突きの威力は凄まじく、俺の身体は地面を滑っていく。

 重い鉄棒でどつくような衝撃を受けた俺の口の中には鉄錆のような血の味が広がっている。


「ガハッ!」

「ほう……」

(あのタイミングで後ろへ飛ぶとは……)


 俺は当たる直前に後ろへ飛んだため、いくらか衝撃を流すことができたものの、元の威力が凄まじかったのもあって、少なからず吐血してしまう。

 柄の先端が丸まったような形だったからいいようなものの、槍の穂先のように鋭く尖っていたら、俺の身体を間違いなく貫通していただろう。

 それほどの一発だった。


「はぁ……はぁ……」

「まだそんな目ができるのか。勇者でもなければ、頑強そうな戦士のような見てくれじゃねぇのに大したタフネスだ!」


 品定めを終えたような表情をしたギルダスに対し、俺は黙って睨み返す。

 正直に言うと、あばら数本や内臓の一部が潰れかけているのではって思いたくなるようなダメージを受けている。

 冒険者時代にも似たような怪我を負いながら戦ったシチュエーションは何度かあったって思えば、耐えられなくはない。

 だが、相手は魔族であり、魔王軍屈指の実力者であることを思えば、受けるプレッシャーは凄まじい。

 少なくとも、俺一人ではここまで戦えていなかたって思えてならない。

 いや、『戦鬼の大剣』時代のメンバーで挑んだとしても、戦いになったかどうかさえ、危ういくらいだった。


「消えろ!」


 ギルダスは勝負を決めんばかりに再び斧を振り上げ、トドメを刺さんばかりに落石のような斧の斬撃が振り下ろされる。

 だけど……。


「頃合いだな」


 俺はギルダスの唐竹割りの一閃を紙一重で躱す。

 俺が見据えた先の、ギルダスが気配を感じ取って思わず振り向いた先には……。


「ありがとう。リュウト。こっちは準備オッケーよ!」


 聖剣エクスカリバーを正眼に構えるシャーロットさんの姿があった。

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