第53話 【Sideリリナ】お仕事とお見舞い
リリナ視点のお話です!
リュウトたちが遠征に出向いて四日後。
「リリナさん、こっちの分の回復ポーションの補充もお願い!」
「はい!ただいま!」
「リリナさん、指示しておいた薬草って用意できてる?」
「できてます。すぐにお渡しします」
私の名前はリリナ・エスタル。ジョブは僧侶。
私はエレミーテ王国の王宮内にいる。
白を基調にした国章が記された仕事着に身を包みながらせっせと動いていく。
「ふぅう……。まだまだ覚えることがいっぱいだわ」
今の私はエレミーテ王国の王族専属の医療部隊の一員だ。
以前まではAランクパーティ『戦鬼の大剣』のメンバーだったものの、様々なトラブルや不運が重なった末に解散することになってしまった。
だけど、生きているメンバー同士で決めたことだから後悔はない。
「リリナさん、頼んでいたレポートはどうなっているの?」
「できてます!すぐに用意します!」
「頼むよ」
冒険者以外の道を見つけ、今をこうして生きているのだから。
今の私は王族専属の医療部隊に入っているものの、見習い期間中であり、仕事を覚えている段階だ。
入った当初は礼儀作法やマナー、王宮内での振る舞いやエレミーテ王国を取り巻く各国との外交関係、医学や薬学に必要な材料やポーションの種類を含めた座学、先輩に付きながら実践を通して仕事を覚える実務研修など、とにかく覚えることややることが多い。
事務作業も冒険者畑出身の私にとっては中々大変だけど、これも大事な仕事だからと割り切って取り組んでいる。
「リリナ。これは来週のスケジュール表だ。しっかり目を通しておくように。後、今日やった仕事の復習もしっかりやっておくようにね」
「ありがとうございます。承知しました」
先輩の皆様に付いていくのに必死だけど、僧侶の私が自分の得意な魔法を活かしていけるのは本当にやりがいがある。
どんどん成長して、皆の役に立てると思えば、決して苦ではなかったから。
◇—————
「すみません。これとこれと……これもください」
「あいよ!」
お休みをもらった私は王都の城下町にある一軒の八百屋さんに立ち寄り、果物を数点購入し、次にお花屋さんによって綺麗な花を買った。
その足で向かったのは王都の治療院だ。
ここへ来たのは仕事ではなく、私的な理由がある。
手続きを済ませた私は一つの病室に来た。
「はい」
「リリナよ」
「どうぞ」
ドアをノックした私はその向こうにある声の主に入る許可をもらって開けた。
「調子はどう?お姉ちゃん」
「良い感じよ」
目の前にいるベッドの上で上半身を起こしているのはエマ・エスタルであり、私の実姉だ。
そして、私にとって唯一の家族だ。
「これ、お見舞い。お姉ちゃんの好きな果物も買ってきたよ」
「あら。ありがとう。でも、まだ見習いの期間なのにお金は大丈夫なの?」
「少なからずだけど給金も入ってるし、冒険者時代の貯蓄もまだ残っているから大丈夫よ。お金の心配はしなくていいからさ!」
「そう。無理はしないでね」
「心配ありがとう。でも、体調やパフォーマンスを考慮してくれた上で休む時間も取れているから安心して!」
お姉ちゃんは心配そうにしていたけど、現実のところ、本当に大丈夫である。
王宮内でお仕事をさせてもらえているだけに、月々の給金もお姉ちゃんの月々の入院費も問題なく賄える金額であり、六畳一間の個室や食事も支給されたりと、切羽詰まってしまうような生活状況ではない。
むしろ、冒険者時代よりも余力があるのではって思いそうになるほどだ。
だから私の生活は何の問題も無い。
「ごめんね。週に一度はお見舞いに来させているみたいで……」
「いいって。好きでやってるだけだから!それでね、この間は……」
私は最後にお姉ちゃんと会った日から今日に至るまでに何があったのかを話した。
お姉ちゃんもどんなことがあったのかを伝えてくれた。
「退屈してなさそうで何よりだよ」
「リリナこそ、お仕事が嫌になってしまったんじゃないかって少し心配していたけど、それも無さそうね」
「もう、お姉ちゃんったら!」
「「うふふふふっ!」」
世間話のようなことをしていると、明るくも和やかな空気が醸し出されるのだった。
「こうしていると、数カ月前までは考えられなかったわね」
「お姉ちゃん?」
「……」
するとお姉ちゃんはどこか憂いを帯びたような表情を見せている。
まあ、過程が過程だったからね。
「確かに、お姉ちゃんがこうして回復しているのは……。リュウトがいたからだって思うのよね……」
「セアラ様のお陰も大きいよね」
今でこそ、こうしてお姉ちゃんと和やかに過ごせているんだけど、数カ月前だったら現在のような光景になれたとさえ思わなかっただろうな。
私が王族専属の医療部隊になることができたのは以前、王都が襲撃された事件に遭遇した際、私は傷付いた住民や騎士団の人たちの救命活動に当たり、その功績を認められたことが大きな要因となった。
その時は『戦鬼の大剣』の元メンバーにして、エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に転職していたリュウトや聖女であるセアラ様のお陰もあり、今こうして王宮で仕事をする機会を与えられている。
「リリナ」
「何?」
するとお姉ちゃんが微笑みを浮かべながら私に声を掛けた。
「リリナがリュウトさんと出会えたのはきっと運命だと思うのよ。リリナとリュウトさんが同じ時期に冒険者になって、そこから巡りに巡って、私の病気も完治が見えるようになったのはね……。神様が与えてくれた奇跡だと感じているのよ」
「うん」
「あなたがリュウトさんと出会わなかったら、いや、彼の存在が無かったら……。今のような状況にはなっていなかったわ」
「そうかもね……」
私もお姉ちゃんもセアラ様に……そして、リュウトに心から感謝している。
「だからリリナ。リュウトさんとの繋がりは大事にしてね。彼のような人、二度と巡り合えないかもしれないから……」
「分かってるよ。私もいつか必ず、リュウトに報いれるような人になるから!」
そうして、お姉ちゃんとのやすらぎの時間を過ごすのだった。
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