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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第二章

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第51話 ソフィアの苦心

仕事にしても、何にしても、組織を統括する人って責任重大ですよね。

「ソフィア副隊長。このままのペースで行けば、明日にはセラスフォリア王国の国境付近にある神殿まで辿り着く見通しとのことです」

「よし。有事に備え、引き続き警戒を怠らないように!」

「「「ハッ!」」」


 俺はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に入隊して初めての遠征に参加している。

 馬車数台の内、一台は勇者パーティのメンバーを乗せ、他は交代で乗り降りしているような感じだ。

 王都から離れて四日が経ったものの、進み具合は順調だと俺は思っているし、魔物と遭遇しては速攻で対処できている。

 出だしとしては上々だと思っているくらいだ。


「失礼します。そろそろ日が暮れています。夜営できるポイントまでもうすぐです。今日の分はそこまで進んだ方が最適かと……」

「みたいだな。では、そこで夜営にしよう。勇者パーティの面々には私から伝えておく」

「承知しました」


 今回の遠征における責任者であるソフィア副隊長の指示の下、前もって決めておいた夜営ポイントで野宿することになった。


「ふぅう……」

「ソフィア副隊長。お疲れ様です」

「あぁ、お疲れ」

「勇者パーティの方々に進捗状況についての報告でしょうか?」

「まぁ、そんなところだな」

「そうですか。もしかして、勇者パーティの方々って、接するのに精神力を擦り減らすほどに癖があるとか———」

「大丈夫。それはない!むしろ、勇者パーティの面々は全員が好ましい人柄をしているから、リュウトが心配しているようなことにはなってないから、安心して欲しい」

「そうですか」


 平静を装ってはいるが、ソフィア副隊長はプレッシャーもあってか、目に見えない疲労が溜まりつつあるようにも見える。

 今回の遠征の目的は赴こうとしている神殿に眠っているとされている神武具の入手である。

 その結果次第では多方面に大なり小なり影響してくる可能性があるのは確かだ。

 神武具の入手やそれに類する成果次第で、騎士団の立場にも影響するだろうが、元より責任感の強いソフィア副隊長にとっては胃痛な悩みだろう。

 これは俺たちもサポートしなければならないな。

 そうこうしている間に夜営ができる原っぱに到着した後、遊軍調査部隊が中心で夜営の準備を整えていく。

 本隊の一部隊も同行しているものの、こういった遠征における雑務のような仕事を担うのも俺たちの仕事だ。


「アンリ、トロン、テントは?」

「すぐに整えます。少々お待ちください!」

「まずは勇者パーティの方々の分からやります!」


 焚き火の準備をしているアンリやトロンを含めた遊軍調査部隊の俺を含めた若手たちは泊まるテントの設営や食事の準備に追われている。

 しっかり腹ごしらえを済ませておいた方が緊急時はもちろんだけど、食事や睡眠は心身を充実させるための一要素でもあるから、しっかり取っておくに越したことはない。

 夜営が続くならば、尚更だ。

 俺は騎士団から支給された魔道具や日用品などをたくさん保管できる“マジックバッグ”から鍋やフライパンなどの調理器具、“マジックコンロ”や組み立てテーブルや食材を引っ張り出した。


「リュウトさん、私も手伝いますよ」

「俺もやります!」

「ありがとう。じゃあ、アンリは食材を食べやすい大きさに切ってくれ。トロンは俺の方を手伝ってくれ」

「「はい!」」


 アンリやトロンも手伝ってくれるお陰で準備が捗る。


「皆さん!食事の準備ができました!」


 しばらくして、俺は食事を作り終えたことを全員に伝えた。

 献立は肉と野菜を混ぜたスープに焼いたソーセージと目玉焼き、それから付け合わせのジャーキーや乾パンだ。


「おや、良い匂いがすると思って来たら、これまた……」

「あっ。シャーロットさん。それに皆様も……」


 匂いに釣られるように現れたのは勇者パーティのリーダー格であるシャーロットさんだった。

 同じメンバーであるロリエさんやメリスさん、ジャードさんもいる。

 顔合わせの段階で知っているものの、こうして揃って現れると壮観な面子だ。


「これ、あなたが作ったの?」

「はい。料理は得意な方なので、材料が揃っていればこのくらいは……」

「へえ~。美味しそうじゃない」

「早くいただきましょう!」

「そうだな!腹が減ってちゃ戦はできぬってか!」


 シャーロットさんたちは楽しみそうにしている。

 冒険者時代の頃から料理はよく作っていたし、今は亡き両親が作っていた時も手伝っていたからね。

 それに、遠征となったら夜営や野宿が続くことを考えれば、食事は美味しいに越したことはなく、むしろ励みになってくれたら良いなと思っている。

 それから俺たちは焚き火を囲いながら食事を取り、皆の表情からはホッとしたような、明るい空気が流れていた。

 どうやらお口に合ったようで何よりだ。

 その後は張ったテントで身体を休めることとなった。

 ちなみに、魔物や魔族の奇襲に備え、交代制で見張りを行うことになっている。


◇—————


「リュウト、交代の時間よ」

「はい。シーナ副班長も休んでくださいね」

「分かってるわよ」


 俺は見張りをしていたシーナさんと交代することになった。

 既に日は跨いでおり、まだ朝日が昇る時間帯ではないものの、夜明けと共に出発することになっている。

 俺は見張るポジションに向かう。


「あれ?ソフィア副隊長?」

「あぁ。リュウトか」


 その場所にはソフィア副隊長がいた。

 ソフィア副隊長の手には遠征先までのルートや情報が記された地図が握られている。


「もしかして、最終チェックでしょうか?」

「そんなところだな。順当に行けば、今日の夕方には目的地に辿り着ける。近づきつつあるからこそ、慎重に進んでいかなければならない」

「……」


 そう言うソフィア副隊長の顔は険しかった。

 遠征の経験は多くあれど、その責任者を担うのは副隊長の座に着いてから初めてだ。

 プレッシャーを感じずにいられないのも無理はない。

 俺もこんなソフィア副隊長を見るのは初めてだ。


「もっと……。頼ってもいいんですよ」

「え?」


 俺がそう呟くと、ソフィア副隊長はポカンとしたような表情になった。


「今回の遠征における責任者はソフィア副隊長ですけど、何から何まで背負う必要は無いですよ。それに、俺の見る限りですけど、シャーロットさんたち勇者パーティも全員良い人のように見えますし、いざって時には頼ってもいいんじゃないですか?それでも躊躇うならばゾルダー班長やシーナ副班長とか……。何なら、この俺でも構いませんよ」

「リュウト……」


 ソフィア副隊長の顔から強張りが消えた。


「ほう。入隊して半年も経っていないのにこの私に対して随分と生意気な口を叩くようになったな。遊軍調査部隊の皆がお前を認め始めていることに味を占めたのかな?これは評価を少し下げるべきか?」

「いえ、本当にお力になりたいと思っているだけです!本当です!」


 あれ?何か悪いことを言ってしまったか?と思い、俺は慌てて取り繕う。

 すると。


「んふっ!あははははは!」

「ふ、副隊長?」

「すまない。冗談だ冗談」

「は、はぁあ……」


 ソフィア副隊長は不意に笑い出した。

 この人が冗談を言う時もあるんだね。


「確かにそうだな。今回の遠征において、モーゼル隊長を頼ることができなくて、勇者パーティも同行する中で責任者としての全うばかりを考えているせいで、本質を見失いかけてしまったようだ。私が必要以上に張り詰めているのが伝わっているのではって薄々感じていたけど、やっぱりな」


 そう言うソフィア副隊長はフッとしたような笑みを見せた。


「だけど、リュウトの言う通りかもしれないな。勇者パーティの人格や実力を知っているのに、信頼に足りる部下もいるのに一人で思い悩んで、何をしていたんだろうな?でも、お陰で改めて気付くことができた。頼っていい仲間がいるんだって」

「……」


 そして、ソフィア副隊長には吹っ切れたような顔を見せてくれた。

 まだまだやるべきことは残っているけど、それでも気概に満ちた眼だ。


「では、出発までの見張りもだが、ルート取りも見直しておこう。リュウト、相談に乗ってもらって構わないか?」

「もちろんです」


 俺はソフィア副隊長と地図を見ながら出発前のチェックに勤しむのだった。


「……」


———リュウトさんが遠征に付いて来てくれたら、凄く心強いと思うの。あの人は強いだけじゃなくて、いろんなことを知ってそうだし、器用だし、頼り甲斐があるって私は思ってる。

———何より、一緒にいるとホッとさせてくれる気がするんだ。だから初めての遠征なのに、安心して取り組めるんだって思う。


(アンリ。あなたの言っていたこと……本当かもしれないな)

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