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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第二章

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第50話 俺の準備

「まぁ、準備はこんなもんかな?」


 俺は仕事を終えて、騎士団の寮の自室で武具の手入れや戦闘で役に立つ備品や消耗品の整理をしていた。

 明後日は勇者パーティを伴った遠征が控えている。

 重要な仕事になると踏んだ俺はできる限りの準備は備えつつあるものの、ただの緊張と片付けていいか分からない何かを感じている。


「この俺が勇者パーティの方々と行動することになるなんてな……」


 少なくとも、冒険者時代の頃はそんなことを考えるどころかイメージすらしなかった。

 古くから伝えられている勇者とは魔王を討伐するために生まれた存在とされており、話でしか聞いたことのない俺から見れば、勇者パーティのメンツが目の前に飛び込んだ時には驚天動地のような気持ちにさせられた。

 そして、神武具の入手のために勇者パーティと騎士団が手を組んで遠征に出向くことになる日が近づくほど、落ち着きが無くなりそうになる。


「とりあえず、寝るか」


◇—————


 翌日、遠征に備えて非番をもらった俺は王都の城下町を歩いていた。


「串焼き二本」

「あいよ」


 俺は王都の中でもお気に入りの屋台で肉の串焼きを買った。

 遠征に行くとしばらく戻って来れないため、町の空気を感じておきたかったからだ。


「しばらくこれが食べられないってのは嫌だからな」


 食べ歩きに買い物、何が起きるか分からない初めての遠征に行くから、やっておきたいことはできる限りやることにした。


「あれ?リュウト?」

「ん?」


 王都の公園でのんびりしているそんな時、聞き覚えのある女性の声がした。

 その方角に視線をやると……。


「何してるの?今日は非番?」

「リリナ!」


 冒険者時代の仲間だったリリナだ。

 かつてはリリナと共にAランクパーティ『戦鬼の大剣』に所属していたけど、方向性やボタンの掛け違いがきっかけで俺は脱退し、多くの出来事を経て、最終的には解散となった。


「しばらくぶりだな」

「うん、そうだね」

「リリナ、その服装って?」

「あぁ、これね……」


 エレミーテ王国の国章が記された白を基調にした仕事着に身を包んでいるリリナは現在、王族専属の医療部隊、言うなれば王宮で仕事をしているってことだ。

 冒険者時代の服装はもちろんだけど、仕事着姿も青空のような水色の髪もあってか、とても似合っている。

 治療に必要な消耗品が詰まっているだろう紙袋を持っていることから、恐らく仕事に必要な物資の調達だろう。


「隣、いいかしら?」

「いいけど、急いで戻らなくて大丈夫なのか?」

「次にやるべきことは数時間後になるから、少しくらいなら問題ないって教育係の先輩が言ってた」

「そっか」


 リリナは俺の隣に腰を掛けた。

 冒険者をしていた時は、こうして隣同士で話すことが何度もあったな。

 そこで俺の方からまずは口を開く。


「それで、王宮での仕事はどうなんだ?上手くやれてるか?」

「うん。覚えることはいっぱいあるけど、教育係の先輩の面倒見が良いから、仲良くやれてるし、やりがいもあるって思う」

「そうか」


 リリナはまだ見習いの段階であるため、立場は低いものの、職場での人間関係は良好のようであり、俺もホッとした。

 難病を抱えていたリリナの姉であるエマさんも回復傾向にあるとのことらしく、嬉しい気持ちになった。

 それから俺はあることを話した。


「え、遠征?それも、勇者パーティと一緒に?」

「あぁ。しばらく王都を離れることになる。神武具を獲得するためにね」


 俺がそう伝えると、リリナは少し驚いていた。

 王宮内では勇者パーティや騎士団の情報もそれなりに漏れ聞こえている。

 そのため、リリナも流れている噂を知る機会もあったため、俺の口から聞かされても大きなリアクションをされることはなかった。


「期間はどのくらいなの?」

「見立てによると、最短でも二週間くらい。状況や遭遇したトラブル次第では一ヶ月いく可能性もあるみたいなんだ。遠い土地へ行くんだからね」

「確かに」


 言っても、冒険者時代の頃には拠点にしていたスティリアから往復で一ヵ月近くかかる遠いところへ出向くことも何回かあるため、それ自体が億劫とは思っていない。

 だが、相違点がある。


「冒険者の時は一緒だったけど、今は違う。別々の仕事や生活があるってことだよね」

「そうなんだよな」


 リリナは寂しそうな表情をしている。

 冒険者パーティ『戦鬼の大剣』にいた頃はどんなに遠い場所へ行ってもずっと一緒だったけど、俺は遊軍調査部隊の一員、リリナは王宮の医療部隊の一員。

 別々の仕事や立場もあるから、気軽に会いに行ことは前よりも難しくなった。

 ましてや、今回の遠征で何が起きるか分からない。

 俺が大怪我するかもしれないし、部隊の誰かにもしものことがあったらって可能性も否定できない。

 あっ、そっか。


「リリナ。明日、俺は王都を離れることになるけど、一つだけ約束するよ。何が起きても、絶対に生きて帰って来る。それだけは約束させてくれ!」

「ッ!?」


 遠征先でどんな敵やトラブルに遭遇しようが、生きて戻る決意だった。

 俺の言葉を聞いたリリナは呆気に取られたような表情になっている。

 だが、すぐに切り替えた。


「うん。安心して行って来てね。あなたが怪我した時は、私が治すからね!」

「おぉお!」


 リリナはそう言いながら、笑顔を返してくれた。

 「そろそろ時間だ」と言ったリリナと別れた俺は仕事に戻る彼女を見送った。


「何だろうな?吹っ切れたような気分になったよ」


 リリナと話していたお陰で、一つの決心ができたような気分になり、明日の遠征にベストなコンディションで臨めると断言できる自分になれたって思う。

 どこか落ち着きが無いような気持ちの正体が分かったようで、心のモヤモヤしたような何かが取れたと思ってならなかった。


「よし!やってやるか!」


◇—————


 遠征当日。


「全員揃ったな。これより、セラスフォリア王国の国境付近にある神殿への遠征に向かう!皆、行くぞ!」

「「「「「ハッ!」」」」」


 ソフィア副隊長の号令の下、参加メンバー全員が力強い敬礼と共に声を上げる。

 勇者パーティの面々も心身充実しているように見える。


 そして、俺も今回の遠征に対し、気合いを入れながら臨むのだった。

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