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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第二章

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第49話 【Side第六班&ソフィア】遠征に備えて……

第六班のゾルダー⇒トロン⇒シーナ、副隊長のソフィアの順で視点が変わります!

「遠征そのものは初めてでないにしても、いつもとは違うプレッシャーを感じるな」


 俺はエレミーテ王国騎士団の寮の自室で弓や剣の手入れや弓矢を始めとする消耗品の整理に精を出している。

 数日後、俺が率いる遊軍調査部隊の第六班はエレミーテ王国と親交のあるセラスフォリア王国の国境付近にある神殿に祀られている神武具を手にするための遠征することになった。

 遠征そのものの経験はあっても、今回は勝手が違う。


「まさか、神武具の入手に関わることになろうとはな……」


 今回は魔王軍との戦いに身を投じる勇者パーティと共に遠征に出向くことになっているのだからな。

 加えて、遊軍調査部隊のトップであるモーゼル隊長は別件で不在、ソフィア副隊長が仕切る形になる。

 もちろん、俺自身もソフィア副隊長は信頼しているし、その敏腕ぶりや有能さは理解しているものの、得も知れぬ重圧を感じている。


「事情は何にしても、勇者パーティの今後に関わるとなれば、尚更だ……」


 勇者パーティも参加され、神武具の入手が目的であるならば、その結果次第では騎士団の体裁にも関わる。


「今回の遠征はいろんな意味で重要となるだろうな」


 そう呟きながら、俺は遠征に向ける準備を整えていくのだった。


◇—————


「やってみたいって思っているのは本当だけど、いざ、その時を迎えたらな……」


 俺は住まいにしている騎士団の寮の自室で一人、様々な思いを巡らせている。

 楽しみ半分、不安半分……ではなく。


「遠征で必要な道具とかは教えられているけど、初めてとなったらどうもな……」


 そう、俺にとって今回の遠征は遊軍調査部隊に入隊して初のことである。

 王都から遠く離れた場所へ赴いて何かを成し遂げることそのものに憧れがあるのは噓ではない。

 だけど、いざ現実にその時を迎えるとなれば、身体は自ずと緊張してしまう。

 同時にもう一つの考えも浮かぶ。


「ゾルダーさんやシーナさん、ソフィア副隊長やモーゼル隊長も最初の頃は俺みたいな気持ちを抱いていたのかな?」


 俺が所属する第六班の遠征経験のある先輩方も今の俺みたいに初の遠征の時にはどんな風に捉えていたのかだった。

 人生経験が豊富であろうベテランでも、初めてのことには誰でも緊張や不安が襲うものだって思っている。

 若手でしかない俺ならば、尚更のことだ。

 俺はしばらく思考してみた。


「まだ遠征まで時間はある。経験のある人からいろいろと話を聞いてみよう」


 第六班の中でもまだまだ未熟な俺にできることは、時間が許す限りの準備だ。


◇—————


「ふっ!はっ!やっ!」


 あたしは騎士団の訓練場で一人、ロングナイフを模した木剣を振るっている。

 数日後に控える遠征に備えての鍛錬だ。


「今回の遠征はいろんな意味で重要だわ……」


 その遠征にはエレミーテ王国の勇者パーティの面々も参加され、その目的も神武具の入手であり、内容だけでも重く見るべきだと認識するしかない。


「先行警戒もそうだけど、今度こそ、本当の意味で皆の役に立つんだ」


 以前、王都が奇襲された事件に遭遇した際、魔族と化した人間を相手に私は勝つどころか重傷を負ってしまった。

 最終的には何とかなったけど、あたしはまだまだ弱くて未熟だと思い知らされた。

 勇者パーティが一緒ならば、強力な魔物はもちろん、魔族と鉢合わせる可能性も否定できない。

 だからと言って、勇者パーティに甘えてしまいたくもない。

 戦闘はもちろんのことだけど、あたしはあたしにできることで今度の遠征を良い結果で終わらせる。


「次はそうね。身体は動かしたし、遠征先の地図を見ながらどうやって動くべきかをシミュレーションしてみようかな?」


 ボトルに入った水を飲み干すと、あたしは訓練場を出て行った。


◇—————


「必要な消耗品や備品は十分だと思うが、気持ち多めに用意した方が良いか?」


 夜が更けた頃、私は隊舎にある自分のデスクで遠征に関する資料を読み込んでいる。

 できる限りの準備を進めているつもりだが、十分であるかどうか、正直に言えば首を縦に振るのを躊躇う。


「今度の遠征はいろんな意味で責任重大だからな」


 数日後の遠征の責任者を私が務めることになっており、若干プレッシャーを感じ気味だ。

 遊軍調査部隊の副隊長になった今でも、遠征に行くケースは何度かあるものの、全体の責任者を担うのは初めてであるからだ。

 胃が痛くなりそうだけど、任されたからにはやるしかない。

 むしろ、ここで経験しておいた方が確実に今後のためになるだろう。


「お姉ちゃん。クーフェ持ってきたよ」

「おお。ありがとう。アンリ」


 そこへ第六班の一員にして、私の妹であるアンリがクーフェを差し入れてくれた。

 ちなみに、隊舎にいるのは私とアンリだけのため、「お姉ちゃん」呼びやため口を許している。


「アンリ。あなたは遠征に参加するのは初めてよね?不安だったりする?」

「不安って?」

「今までアンリはどちらかと言えば、王都やその周辺の見回りや調査が主な仕事にしていたけど、今回は遠く離れた場所に赴くんだ。私は何度か経験しているから大丈夫だが、アンリから見れば、見知らぬ土地へ足を踏み入れるってことになる。どんな人物でも未知の場所には多かれ少なかれ不安を抱くモノだと思っているからな」


 未知の領域と言うのは大袈裟な言い方かもしれないが、まだ若い部類のアンリにとっては全く経験したことのない場所で責務を全うするのは得も知れない重圧を感じているかもしれない。


「う~ん。不安があるかないかで言えば、あるよ」

「そうだよね」

「でも、行きたくないって思うほど恐いとは思ってないんだ」

「え?」


 意外だった。

 不安や緊張を抱いているかのような言葉が飛んで来ると思っていた。

 それらが無いって言い切りたそうな表情ではないが、強張った様子もしていない。


「初めての遠征そのものは緊張しているよ。だけど、何だろう?私が必要以上に不安を感じないでいられるのは……リュウトさんが一緒だからなんだと思う」

「リュウトが?」


 するとアンリは同じく遠征に参加するリュウトの名前を出した。


「正直、リュウトさんが遠征に付いて来てくれたら、凄く心強いと思うの。あの人は強いだけじゃなくて、いろんなことを知ってそうだし、器用だし、頼り甲斐があるって私は思ってる」

「まぁ……」


 確かにリュウトは冒険者としてのキャリアがあるため、サバイバルの知識や知恵もあるだろうし、実力も本物だ。

 少なくとも、今ではリュウト認めている隊員も多くおり、私やモーゼル隊長も一目置いているからな。


「それにしても、アンリはリュウトのことを随分と信頼しているんだな。初めて彼と出会った時に助けられたことがあってか?」

「それもあるよ。それもある……けど……」


 遊軍調査部隊としてのキャリアはアンリの方があるけど、リュウトは冒険者時代からAランクパーティの一人として厳しい戦いや修羅場を超えてきた経験もある。

 それを加味しても、同じ班であり、窮地を救われた身とは言え、アンリのリュウトへの信頼度はかなり高いな。

 下手をすれば信者になりかねないレベルだ。


「何より、一緒にいるとホッとさせてくれる気がするんだ。だから初めての遠征なのに、安心して取り組めるんだって思う」

「……」


 この子がこんなことを言うなんてね。

 だけど、先の王都が奇襲された事件での功績を鑑みれば、いてくれたら心強いって思えてならない自分もいる。


「それは同感だな。思えば、リュウトがエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に来てくれたのは、ある種の幸運かもしれないな」


 そんなことを柄にもなく呟く私なのであった。

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