第5話 新生活と初出勤
エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の採用試験を受け、合格をいただいた翌日、俺は騎士団の本部に赴いている。
「お~い。リュウト!」
「お待たせしました!」
正門の前には俺の面接を担当してくれたソフィアさん……じゃなくてソフィア副隊長が待っていた。
冒険者の頃は年齢やランクに相当な差が無ければ基本的には砕けた口調で話すことがほとんどだったからな。
騎士団と言う組織に入隊したからには上下関係や礼節も意識しなければだな。
「申し訳ございません。待たせてしまいましたか?」
「私もついさっき来たばかりさ。それに時間ピッタリだから何も問題ない」
「そうですか」
するとソフィアさんは俺の身体をジーッと見ている。
「どうですか?」
「うん。似合うじゃないか。サイズも問題ないようだな」
「ありがとうございます」
俺の服装は先日の冒険者ルックではなく、支給された遊軍調査部隊の一員だと証明する隊服に身を包んでいる。
上質なコットン生地のような感触でいつつも、丈夫さも感じさせる作りになっており、着心地も良くて動きやすい。
ソフィアさんからお褒めの言葉もいただけて嬉しく感じた。
「では、行こう」
「はい!」
俺はソフィア副隊長に付いていった。
入っていくと、多くの職員や騎士団関係者が忙しなく仕事をしており、その中を進んでいく。
「おはようございます!」
「おはよう」
「「おはようございます!」」
「おはよう」
「……」
廊下を進んでいくと擦れ違った職員や甲冑に身を包んだ遊軍調査部隊でないだろう騎士数名がソフィア副隊長にピシッと挨拶をしている。
やっぱり副隊長って凄いんだなと思わせてくれる。
でも、騎士団って遊軍調査部隊とは別の部隊もあるんだとしたら、同じ副隊長でも立場的にバラツキとかはあるのだろうか?
まあ、後で聞いてみるか。
「ここが我が遊軍調査部隊だ!」
「先日、面接をした部屋のすぐ側ですね」
「その通りだ。一旦、ここで待っていて欲しい。私が合図をしたら扉を開けて入ってくれ」
「はい!」
そう言い終えるとソフィア副隊長は隊舎の中へと入っていった。
◇—————
「おはよう」
「「「「「おはようございます!ソフィア副隊長!」」」」」
ソフィアさんが挨拶するや否や、その部下の隊員たちはスクッと立ち上がってはきはきと挨拶をした。
その中にはマッドオーガに襲われたところを俺が助けたトロンとソフィア副隊長の妹であるアンリもいる。
「本日の朝礼を開始する前に先日、我が遊軍調査部隊の採用試験に合格した者がいる。先にその紹介をしたい」
ソフィアさんの言葉を聞いて隊員たちがざわめいている。
「誰だろう?」と興味を抱く者もいれば、難しい顔をしている者もいる。
中には楽しみにしている様子を見せている者もおり、トロンとアンリはそれだ。
「はいはい。気持ちは分かるけど、一回落ち着こう。それでは改めて、新しく入る人物を紹介する。入ってくれ!」
「失礼します!」
ソフィアさんから入室の許可をもらった俺はドアを開けた。
俺の目に飛び込んだのは……。
数十人の隊員たちであり、全員が俺に視線を向けている。
これが……。遊軍調査部隊の隊員たちか……。
それでも、俺は堂々と歩きながらソフィア副隊長の下へ向かう。
「では、自己紹介を……」
「はい」
ソフィアさんに促される形で俺は一歩前に出る。
そして、口を開く。
「皆様、初めまして。本日よりこの遊軍調査部隊の一員となりました、リュウト・ドルキオスと申します!最近まではとあるAランクの冒険者パーティに所属しておりましたが、縁あってここに籍を置くこととなりました。皆様のお役に立てるよう、努めていく所存でございます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます」
「皆、仲良くして欲しい」
俺は挨拶と経歴、決意表明をした。
ソフィア副隊長が仲を深めてくれるようにフォローすると、隊員たちから拍手の嵐が巻き起こった。
どうやら上手くできたようだ。
「リュウトには遊軍調査部隊の第六班に入ってもらう。同じ班の面々とは後で顔を合わせておきなさい」
「承知しました」
俺はソフィアさんが手を向けた方角の班の集団へと合流した。
何とそこには……。
「リュウトさん。一緒の班で嬉しいです!」
「よろしくお願いします」
アンリとトロンがおり、小声で共に働けることを喜んでいる様子だ。
知り合いと同じ班だと少し安心できる。
「リュウトの自己紹介も終わったことだ。これより、朝礼を始める」
それからはすぐにソフィア副隊長が仕切る形で朝礼が始まった。
各班が請け負っている仕事の進捗状況の確認や別の隊と連携して携わった実務の成果、出張や遠征を含めた今後の予定などを概ねであるが共有された。
「それでは、よろしく頼む!」
「「「「「ハッ!」」」」」
ソフィア副隊長の号令で隊員たちが一斉に敬礼する。
そこに俺も続くように敬礼した。
朝礼が終わってそれぞれの隊員は仕事に取り掛かっていった。
「第六班の皆様、よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
俺は所属する事になった第六班の面々に改めて挨拶をすると、全員がしっかりした挨拶をしてくれた。
「リュウトだったね。ようこそ、遊軍調査部隊第六班へ。俺は第六班の班長を務めているゾルダー・ブルガンだ。よろしく頼むよ」
「あたしは第六班の副班長を担うシーナ・ルヴィライよ。よろしくね!リュウト」
「よろしくお願いします!」
オリーブ色の短髪に浅黒い肌が特徴的な男性は第六班の班長であるゾルダーさんだ。
ジョブはレンジャーにして遊軍調査部隊に入ってから約十年の古参であり、他の班からも一目置かれている人物とのことだ。
副班長であるシーナさんは黄色が少し混じった鮮やかな赤いロングヘアをポニーテールにまとめた快活さを感じさせる美人であり、その四肢もすらりと伸びていてスタイルもかなり良い。
ジョブはシーフであり、かつては冒険者をやっていた時期もあることを教えられた。
この人となら話は合うかもな。
尚、ゾルダーさんとシーナさんからは「公の場でなければ『さん』付けで話しても構わない」と言われている。
それからは他の隊員たちからも自己紹介をされ、ゾルダーさんが今日のやるべき事について話し出した。
「今日の第六班の仕事は王都の巡回とその周辺の調査だ。リュウトとシーナ以外は他の班と合流して業務に当たってもらう。今日も一日、締まっていくぞ!」
「「「「「ハイ!」」」」」
ゾルダーさんの号令で俺は他の隊員たちと共に敬礼した。
するとシーナさんが俺の下に歩み寄って来た。
「リュウト。今日からしばらくはあたしと行動を共にすることになると思うから、よろしくね!」
「よろしくお願いします。ところで、しばらくは何を?」
「主にやることとしては、遊軍調査部隊の基本的な仕事を覚えてもらうのがメインだけど、この騎士団の案内や内部情報、最近の事柄の共有。後は……」
「後は?」
もったいぶるような間を作ったシーナさんが急に距離を詰めて来る。
「リュウトって冒険者出身なんでしょ?だったらキャリアとしてはあたしと結構似ているって思ったりもしているのよね~。だからアンタに興味を抱いちゃっているから、昨日ソフィア副隊長に頼み込んだ結果、あたしに任されたって話よ!ジョブは違うけど!」
「な、なるほど……」
シーナさんが俺の教育係を買って出たのも、似たような経歴を辿って来た俺に対する興味の割合が強いモノだった。
良い人そうなのは分かるけど、これまたアバウトな人物だと直感させてくれる。
冒険者から転職してきた者同士、通じるところがあるからなのかな?
「じゃあ、話はこれくらいにしておいて、まずはこの騎士団の中を案内してあげるわ。意外と複雑な部分も多いから、その辺は気を付けるようにね!」
「はい!」
こうして、俺のエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員としての仕事と生活が始まるのだった。
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