第48話 備えと興味
勇者パーティの面々がメインです!
「421……422……423……」
王都にある三階建てのレンガ造りとなっている一軒の家の一室にて、一人の男性がダンベルを抱えながらスクワットを行っている。
そこは勇者パーティと呼ばれる拠点とされる居館であった。
「497……498……499……」
(次の遠征は重大な要素を持っている。俺がしっかりしなければな……)
エレミーテ王国が持つ勇者パーティの一人にして、前衛のタンク役を担っている、戦士のジャード・ヴァランである。
ジャードは現段階においても、勇者パーティの一員と名乗るに相応しい実力を持っているのは誰の目で見ても明らかであるものの、自身を高めることを欠かさない、真面目でストイックな人物である。
パーティメンバーの中では最も歳や経験を重ねているだけに、人生経験も豊富であり、酸いも甘いも嚙み分けるていくだけの処世術も兼ね備えている。
だが、今のジャードの様相は……。
「500!はぁあ……」
(しかし、この開放感で行う鍛錬と言うのは、癖になってしまいそうだな。宿屋や野営では、とてもこんなことはできないからな)
その鍛錬の一環でやっている筋力トレーニング姿は全裸であった。
周囲の目もあって簡単にできなかったものの、今はそれが叶う状況だから遠慮なくやっているに過ぎなかった。
「ふぅう。にしても、先の魔王軍との戦いで戦力の一部を……。あいつが戦線に戻れなくなってしまったのは痛手でしかない。今回の遠征で何かしらの収穫を得なければな……」
そう呟きながらジャードは汗を拭い、部屋着に身を包んで部屋を出て行く。
◇—————
「さてと、俺も少しばかり汗を流して———」
「キャァ!」
「うおっ?ロリエか?」
「ジャード?ビックリさせないでよ!」
「すまん!」
「全くもう」
ジャードが浴室の扉を開けようとした時、そこから出てきたのは同じ勇者パーティのメンバーである魔術師のロリエ・セントフェリスだ。
若いながらも、ロリエはエレミーテ王国において、魔術師としてはトップレベルの実力と潜在能力を秘めており、魔術を用いる者の中ではその才能に一目置いていない者を探し出すことの方が困難を極めると称されるほどである。
「うわっ。汗だくじゃない!一人で筋トレでもしていた感じ?」
「まぁな」
「うぅう……。早く汗を流してきなさい!」
「わ、分かった」
ロリエは悪態を突きながら浴室を去り、自分の部屋に戻るのだった。
「はぁあ!どえらい災難に遭った気がしたわ!」
藤色の薄手の上着やネグリジェ姿のままでぼやくロリエだった。
だが、すぐに切り替えるように冷静さを取り戻している。
「にしても、魔王軍に対抗する神武具の存在が分かったのは良いけど、あの人が再起不能になってしまった直後のタイミングだからな。仮に神武具が手に入ったとしても、それを使える人が果たしているのかな?」
そう呟くロリエだったが、その表情に憂いは帯びつつも、投げやりになったような様相は一切無かった。
「でも、味方陣営が不利になったり、不利益を被ることは避けるべき事実でもあるんだけどね。次の遠征、悪い結果で終わらないようにしないと……」
ロリエは割り切ったような表情をしながら、棚にある一冊の魔術書を開き、熟読しようと努めていく。
◇—————
「シャーロットさん。ただいま戻りました」
「お帰り」
勇者パーティの拠点としている邸宅に帰って来たのは聖女のメリス・フォルティーネであり、同じくエレミーテ王国の聖女セアラ・フォルティーネの実妹である。
入った部屋には当代勇者パーティのリーダー、勇者のシャーロット・セルベリアスがおり、武器の手入れに勤しんでいる。
「お姉さんやご両親との久しぶりの食事はどうだった?」
「楽しかったですよ。ありがとうございます。家族との時間を過ごす機会をいただきまして」
「別に良いわよ。魔王討伐の旅で中々会えてないでしょ?会える時に会っておいた方があなたにとっても精神的に楽になるはずよ」
「おっしゃる通りです」
メリスはエレミーテ王国に帰還した後、一時的に実家に帰っており、遠征に備えてシャーロットたちの下に戻って来たのだ。
「あぁ。そうだ。シャーロットさん。わたくしたちがエレミーテ王国を離れている間に何が起きたかをお姉様から存じ上げたのですが、お耳に入れていただきたいことがございます」
「ん?何?」
「それがですね……」
シャーロットはメリスの姉であるセアラが話してくれた情報を共有され、彼女が自分なりにまとめた手記を受け取る。
「なるほどね。ありがとう。あなたも今日はゆっくり休みなさい」
「はい。お休みなさい」
メリスはシャーロットの部屋から去った。
シャーロットはベッドに座りながら渡された手記を読み込む。
「私たちがエレミーテ王国にいない間に起きた事件や出来事にはビックリしたけど、その時に活躍した遊軍調査部隊に属しているこの人についても急に気になりつつある自分もいるんだよね」
一人の顔写真が映る紙を見ながらそう呟くシャーロットの顔には好奇心と探求心、そこに期待も込めたような表情が張り付いている。
そして、呟いたのは……。
「国王陛下に魔王軍との戦いの成果の報告をした時には正直に言うと半信半疑だったけど、これを見たら益々興味深くなってきそうになるよ。一介の冒険者から転職してすぐに大活躍したから尚のこと。エレミーテ王国騎士団の一部隊の一隊員でありながら、私たちに何を見せてくれるんだろうね?……リュウト・ドルキオス」
シャーロットが気になると感じていたエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員である一人の男の名前だった。
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