第46話 日常と打ち合わせ
日常に戻りつつも、後に重要人物となるキャラが登場します。
「夜間巡回は中々に骨だな」
「そうですね~」
俺はいつも通りのルーティンである業務に励んでいった。
王都の巡回に周辺の調査、他の部隊のフォローまで、多少のいざこざはあれど、それも速やかに解決していく日々を過ごしていった。
今日の俺は夜勤であり、アンリと早朝の巡回中である。
「夜勤手当が出るのは良いですけど、生活のリズムが乱れやすくなりますからね」
「そうだな。眠いか?」
「少しですけどね。それにしても、リュウトさんは平気そうですね」
「俺は冒険者時代に夜営や見張りとか結構こなしてきたからな。生活リズム自体は大きく変わってないんだ」
「それは羨ましいですね」
隊舎に戻る途中でアンリとそんな会話をしていた。
「以上になります」
「うん。お疲れ様!」
俺は早めに出勤していたソフィア副隊長に業務報告を行った後、寮へと戻って行った。
シャワーを浴びたらすぐに寝ようって思った時だった。
「ん?」
俺は騎士団の寮のすぐ近くにある建物の中に入っていく一人の女性が目に入った。
顔はよく見えなかったものの、朝日の光さえも引き立て役にするような金色の髪をなびかせていたのが印象に残った。
この二ヶ月で見たことも会ったことも無いけど、近くに越してきた人とだけしか思わなかったんだ。
そう、この時点では……。
◇—————
「よし!今日はこんなところかな?」
俺は非番の日を利用して、王都から少し離れた平原で鍛錬に勤しんでいた。
弓術や剣術はもちろん、筋トレ基礎的な能力の向上からセンスの磨き上げまで、高められる時には高めておきたいからな。
「それにしても、国王陛下はこんなにも立派な弓や剣を賜って下さるとは……」
俺が手にしている弓と腰に挿している片手剣はエレミーテ王国の国王陛下であるルーフェン・フォン・エレミーテ様の計らいで手に入れることができた。
弓は王宮お抱えの職人によって作られた混合弓であり、竹のようなしなやかさと鋼鉄のような強度を持ち合わせており、手にした時、その上質さが一瞬で分かるほどのクオリティだった。
実際、俺が前に使っていた弓よりも上等であることを示すかのように、飛距離・手回しの良さが格段に上だった。
それだけでなく、ミスリルで作られた従来の片手剣とレイピアを掛け合わせたような長さや厚みの剣までも賜って下さった。
「国王陛下には本当に感謝だな」
俺は弓だけで良いって言ったものの、まさか剣まで賜ってくれたことを知った時には、驚天動地な感覚に一瞬襲われたな。
「だからこそ、俺ももっと精進しなければな!」
願いに応えてくれた国王陛下に報いることができれば。
そう思いながら、俺は鍛錬に勤しむのだった。
◇—————
一日の休みを挟んで出勤日を迎える。
「おはようございます!」
「おはよう!」
俺が出勤すると、遊軍調査部隊の面々から挨拶を交わされていく。
当たり前の光景になりつつあるからなのか、この部隊に入ってから随分と馴染んできているなって自分でも分かる。
午前中に一仕事をした後に昼食を取った後、ソフィア副隊長に声を掛けられた。
「リュウト。午後に打ち合わせがある。参加してもらえないか?」
「はい。大丈夫ですよ」
俺は参加することを承諾し、その時間を迎えると、隊舎にある会議室に赴いた。
参加しているのは第六班全員と他の一班、そしてソフィア副隊長だ。
それから定刻を迎え、集められた者たちで打ち合わせが始まった。
「我々、遊軍調査部隊は騎士団本隊と共に遠征へ出ることが決まった。参加するのは今この場にいる者たちだ」
それは遠征についてだった。
遠征とは騎士団が不定期に行っているあらかじめ決められた目的の下、他の地方に赴くことだ。
エレミーテ王国と関りの深い国への武力援助や国境付近の調査など、遠征の目的は多岐に渡る。
「赴く場所はエレミーテ王国と友好関係にあるセラスフォリア王国の国境付近にある神殿であり、そこで聖武具の存在が確認された」
ソフィア副隊長の話を聞いて、何が目的なのか、俺は察しが付いた。
「その情報を入手した国王陛下との協議により、我々はその神殿に祀られているとされる神武具を入手することを目的とし、遠征へと向かうことが決定した」
遠征って言葉自体は知ってはいるものの、実際に俺が行くのは初めてだし、その初めてが神武具を手に入れるためとなったら、中々に壮大な内容だって思わざるを得ない。
そこで俺は一つの質問を投げかける。
「さっきから気になっていたのですが、モーゼル隊長は一緒じゃないのでしょうか?」
「残念ながらモーゼル隊長は国王陛下の他国との外交に付き添うため、参加はできない。だから、今回の遠征における遊軍調査部隊の代表は私が務めることとなっている」
「そうですか」
となると、ソフィア副隊長の指揮の下で動くことになるって意味だな。
いろんな考えを巡らせていた時だった。
「今いる者の中にはこのような疑問を抱いているだろう。『この戦力で大丈夫なのか?』……と。答えから言えば問題は無い。なぜなら……」
会議室にピりついた空気が漂い始める。
数秒後にソフィア副隊長が口を開く。
「今回の遠征において、魔王討伐のために魔族領に赴いていたエレミーテ王国の勇者パーティと共に挑むことが決まっている」
「え?」
その言葉を聞いた俺たちは驚きの表情をするしかなかった。
すると、会議室の奥にある別室に繋がる部屋から複数の人影が現れた。
男性一人と女性三人の組み合わせだ。
だけど……。
その面子の中、長い金髪をなびかせている女性を見た俺は既視感を覚えた。
この人……もしかして?
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