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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第44話 それぞれの道

『戦鬼の大剣』は解散ですが、それぞれが新たな道を歩んで行きます!

 リリナの姉であるエマさんを王都に連れて来てから数日後。


「もう行くんだな」

「あぁ。いろいろ考えて決めたことだけどな」

「あたしもよ!」

「……」


 王都にある馬車が行き交うターミナルにいる。

 そこにいるのは俺とリリナ、かつての仲間であったビーゴルとアキリラだった。

 アキリラはともかく、ビーゴルは頭や上半身の一部に包帯を巻き、頬には数枚の湿布が貼られ、左腕は三角巾で固定されている。


「何だか、寂しくなるな」

「うん。Sランクまでいけなかったのは残念だと思うけど、仕方がないもの」

「アキリラ。それは言わないって皆で決めたはずよ」

「分かってるわよ」

「確かに、ビーゴルの言う通り、寂しさが無いと言えば嘘にはなるな」


 馬車に乗ろうとしているのはビーゴルとアキリラの二人だけ。

 この状況を意味しているのはただ一つ。


「『戦鬼の大剣』は……もう、再起不全も同然になったからな」


 Aランクパーティ『戦鬼の大剣』の解散を意味していることだ。

 パーティのリーダー格だったガルドスが嫉妬心や功名心に駆られた末、魔族に身を落としてしまったことで王都が奇襲される事件を引き起こされ、その時にビーゴルとアキリラはガルドスによって殺されかけた。


「ビーゴル。ちゃんと飯は食えよ」

「分かってる。そのために途中で食い物を買っておいたからよ」


 特にビーゴルは身体を深々と斬り裂かれ、左腕を欠損しかけるほどの重体を負ってしまっていた。

 幸いにも命は助かり、左腕も引っ付いたものの、神経までやられてしまったのもあってか、満足に動かせなくなるほどの後遺症が残ってしまったのだ。

 リハビリ次第では日常生活を送れるようになると担当医も言っていたものの、冒険者としてやっていくにはほぼ不可能だと宣告された。

 それはつまり、ビーゴルの冒険者稼業の引退を余儀なくされることも意味している。

 診断を聞かされたビーゴルは大きなショックを受けてしまい、食事が喉を通らなかったことが何日か続いたらしい。

 そのせいか、逞しかったビーゴルの身体つきが痩せて見える。


「途中まではあたしも一緒だから、そこは安心して!」

「そうか」


 アキリラはフォロー役を買って出てくれるようであり、少しだけホッとした。

 ビーゴルとアキリラはパーティを起ち上げた時の仲だから、どうすべきかも心得ているだろうしな。


「二人はそれぞれの故郷に戻ったらどうするつもりだ?」


 俺は二人の今後について尋ねた。


「何をしようかは明確に決まっていねぇけど、まずは家業を手伝ってみようと思ってんだ。身体を動かす方が性に合っているからな」

「そうか」


 ビーゴルの家は農家であり、三人兄弟の末っ子であるところまでは俺も覚えている。

 兄二人が積極的にご両親を手伝っているため、事情を説明した上で自身も家業の運営に加わろうとしていくつもりらしい。


「あたしは町に戻ったら、冒険者時代の経験を活かして何かしらの仕事を初めてみようと思っているわ。まぁ、いろいろ模索しながらになると思うけど、人の役に立てることをしていくわ。今のリュウトみたいに!」


 アキリラは自分のジョブである魔術師を活かしていくようであり、明確に何をするかまでは決まっていないものの、キャリアもあるから何かしらの定職は見つかるだろうと思う。


「リュウトはこれからもエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員として頑張っていくのでしょうけど、リリナはどうするの?」

「それなんだけど、実はね……」


 興味本位で聞いたアキリラの言葉に対し、リリナはどこか恥じらう様子を見せている。

 リリナの今後については俺も知っているけど、改めて伝える。


「エレミーテ王国の王族専属の医療部隊に転職が決まっている?」

「うん。まぁ、まずは試用期間からなんだけどね」


 そう、リリナは先の王都奇襲事件において、回復魔法による人命救助や補助魔法による戦線強化で貢献していた。

 その功績を認められ、セアラ様の推薦もあって、リリナは王族専属の医療部隊に転職することが叶ったのだ。

 初めてそれを知った時、俺はもちろんだが、一番ビックリしていたのはリリナ本人であるのは言うまでもないのだが。


「最初はどこかのパーティに入ってやり直すつもりだったんだけど、お姉ちゃんが王都の治療院で入院しているのもあるから、合間を縫ってお見舞いやお世話しないといけないからさ。だから王都のどこかで定職に就こうとした中でお話をいただいた時には渡りに船って思っちゃったよ」

「凄いじゃない!」


 アキリラは褒め称えており、俺も思っていることは同じだ。

 冒険者時代のようにドカンと稼ぐ機会は無いだろうが、王宮で仕事ができるとなれば、衣食住は確保されているから、安定した環境でエマさんの治療費を稼ぎながら生活できるのはリリナにとっては願ったりかなったりな話なのは間違いない。

 つーか、待遇や月々の給金とか俺よりもよっぽど良いだろ。


「何だか。あたしたちって、『戦鬼の大剣』を組んでからいろいろあって、これからは冒険者以外の道を歩もうとしてなくない?」

「何だか奇妙な話って感じがしなくもないな」

「そうだね」

「言えてる。本当に様々なことを経験できたよな」


 俺たちは『戦鬼の大剣』時代の出来事を振り返っている。

 一緒に冒険して、一緒に魔物との戦いを乗り越えて、一緒に笑って、一緒に上を目指して、一緒に夢を語り合って……。


「おっ。そろそろ時間だぞ」

「本当だ。あたしたち、行くね。ビーゴル」

「おう」


 馬車が数分後に発射する合図が鳴り、アキリラとビーゴルは荷台に乗り込む。


「リュウト……。リリナ……」

「「ん?」」


 するとアキリラは荷台から顔を出した。

 どこか未練が残っていそうな表情をしており、隣にいるビーゴルも同様だ。


「また会えるかな?」

「「……」」


 その質問に対し、俺とリリナの答えは当に決まっている。


「当たり前だろ!」

「いつでも会いに来てね!」

「おう!」

「うん!」


 再会を約束するメッセージだ。

 歩いて行く道は違うけど、同じ空の下で生きていこうとしているのは皆同じなんだ。

 それからは互いに見えなくなるまで、それぞれの姿を目に焼き付けるのだった。


 また会える日が来ることを信じて……。


◇———


「おう、おはよう」

「おはよう、リュウト」

「ゾルダー班長、シーナ副班長。おはようございます!」


 翌日、俺は遊軍調査部隊の隊舎に出勤し、ゾルダーさんとシーナさんに挨拶した。


「どうした?いつになく活き活きとしているじゃないか?」

「はい。俺の方でも、いろいろと踏ん切りがついたものでして……」

「へぇ。確かに、数日前のリュウトとは違う気がするわ」

「分かるのか?」

「まぁ、元同業者(冒険者)の勘ですかね?」

「ふ~ん」


 シーナさんの言う通り、『戦鬼の大剣』の面々との因縁やその他の事情についてはほとんど解決することができたのもあってか、俺自身も気持ちがスッキリしているのが分かる。

 どんな仕事でもやり切れそうな気分だ。


「「おはようございます!」」

「アンリ、トロン、おはよう!」


 しばらくしていると、アンリとトロンが一緒に出勤してきた。


「リュウトさん、おはようございます!」

「おはよう。今日は一段と気合いが入ってるな」

「はい!お仕事に鍛錬、今日も一日頑張っていきます!」

「そ、そうか……」


 アンリはいつになく溌剌とした姿をアピールしている。

 そう言えば、前にアンリが「リュウトさんは私の憧れです!」みたいなことを言ってたな。

 ともすれば、アンリの明るく元気に振舞うこの仕草もその表れなのかなって思う。

 そんな時だった。


「皆、おはよう!」

「「「「「おはようございます!」」」」」


 モーゼル隊長の豪放磊落な声が響き、班長以下の隊員が敬礼する。

 側にはソフィア副隊長もいる。

 本当の意味で冒険者時代の蟠りのあったメンバーとの関係にキリをつけられた俺は胸を張ってこう言えるだろう。


「全員、揃っているな?これより、朝礼を開始する!」


 エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊第六班・リュウト・ドルキオス……と。

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