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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第43話 あなたがいてくれたから

「よう。リリナ」

「リュウト」


 俺はリリナと一緒に王都の治療院の門の前まで来ている。

 そう、かつての仲間であったリリナと一緒に来たのも……。


「どうだ?お姉さんの容体は?」

「結論から言うと、良い方向に進んでいる。中長期に渡って入院や治療をする必要はあるけど、もしも滞りなくいけば完治するだろうってセアラ様や担当医も言ってた」

「そうか」


 リリナには難病に罹っている姉のエマさんがおり、そのお見舞いで来ていた。

 先日、エマさんの護衛や付き添いの意味で二人の生まれ故郷であるクリナスから王都まで移送した。

 着いた時とタイミングを同じくして、聖女であるセアラ様による聖属性魔法を帯びた回復魔法による治療の結果、病の元凶となっている腫瘍のような物体を取り除くことに成功し、腕利きの医師も一緒に治療し始めたことで完治に向かい始めている。

 そこからは入院となるため、エマさんはしばらく故郷に戻れないものの、それは治療のためには仕方のないこととして受け入れているそうだ。


「ありがとうね、リュウト。一緒に来てくれて」

「今日は非番だから気にするな。俺も様子を見に行こうと思って来ているんだからさ」

「リュウトったら」


 俺はリリナと一緒に治療院に入っていき、面会手続きを終えると、エマさんがいる病室へと向かった。


「お姉ちゃん」

「リリナ。それにリュウトさんも」

「どうも」

「お見舞いに来たよ」

「あら、ありがとうね」

「体調はどう?」

「調子が良いわ」


 病室に入るとエマさんがおり、リリナは綺麗に包まれた花束を手渡した。

 俺がエマさんと初めて出会った時は少しばかり痩せ細っていた印象だったものの、治療の効果があったのか、その時よりも血色が良くなっていて健康的だ。


「それにしても、普通の病室でも構わないのにこんなに立派な個室で入院させてもらえるなんて、何だか申し訳ないって思いそう」

「セアラ様が口添えしていただいたらしいですよ」


 エマさんが利用している病室は個室タイプの部屋であり、共同タイプの従来の部屋と比べれば一人で過ごすには解放感を抱かすような広さであり、ベッドやテーブルに椅子までの家具も質の良い物で揃えられている。

 こうも充実していると、心のゆとりを持ちやすくなり、身体の調子にも良い影響を与えられそうだ。


「失礼します。リリナさん。エマさんの当面の治療計画についてお話したく思いますので、お時間よろしいでしょうか?」

「はい。大丈夫ですよ。それじゃお姉ちゃん。また後で」

「うん」


 少し雑談していると、リリナはエマさんを担当している看護師さんに呼ばれて一旦部屋を出るのだった。

 病室にいるのは俺とエマさんだけになった。


「久々に見ましたよ。あんなに活き活きとしたリリナは……」

「そうなんですか?」

「はい」


 振り返ってみると、俺が『戦鬼の大剣』を抜けてから王都が奇襲された事件を終えるまで、リリナとは本当の意味で活き活きとした笑顔を見ていなかった気がする。

 その間は顔を合わせなかったり、互いにバタバタしていたりとで大変だったからな。


「確か、リュウトさんですよね?今はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員ですが、かつてはリリナと同じパーティに所属していると伺っておりますが……」

「はい。間違いありませんよ。冒険者パーティ『戦鬼の大剣』へ同じ時期に入ったんですよ」

「そうなんですね。あの、差し支えない範囲で構いませんけど、リリナってどんな子だったんでしょうか?」

「どんな子。……と、申しますと?」

「冒険者時代のお話はリリナから聞かされていましたけど、第三者の。かつては同じパーティメンバーだった方のリリナに対する見方も聞いておきたいなって思ったんですよ」


 なるほど、リリナは噓をつくような子ではないけど、姉としては客観的な見解を知りたいって意味なのかってことね。

 まぁ、実の家族としては気になるって気持ちも分からなくはないからな。

 俺はエマさんに冒険者時代の頃や俺が騎士団に入っている頃のリリナについて話した。


「……って感じですかね」

「そうなんですか。あの子らしいな」

「はい。性分はもちろんですけど、リリナの回復魔法や補助魔法には俺も助けられましたよ。正に縁の下の力持ちって役割を見事に果たしてくれていましたから」

「うふふふ。しっかりと役に立っていたんですね。今では信じられない話かもしれませんけど、小さい時のリリナは内向的で人と積極的に触れ合うタイプの子じゃなかったんですよ。それこそ、私の後ろに隠れては付いて回るくらいに。ですけど、最近になって思うんです。今のリリナはあの頃のリリナじゃないって……」

「はぁ……そうだったんですね」


 そんなやり取りを交わす中でエマさんは嬉しくも諦観を交えたような笑みを見せた。


「私……。リリナが冒険者として頑張るようになってから。それこそ、有名なパーティになったメンバーの一員になったんだと知った時は嬉しくて堪りませんでした。実の妹の活躍を嬉しく思わないはずがないもの。それと同時に、何かのきっかけでリリナの身に危険が及んでしまったらって思うと、気が気じゃない自分がいたのもまた事実です。当時いたメンバーはもちろんですが、リュウトさんがいたから、リリナは命や身体の危機に襲われずに生きてこれたんだって思うんです。リリナから聞いてはいるんですが、こうして私にとって夢見ている願いが現実になろうとしているのは……。リュウトさん。あなたのお陰でもあるんですよ」

「いえ、そんな大袈裟な———」

「大袈裟ではありません!リュウトさんがいたから、私はここにいるんですから。そして、リリナとこうして過ごせているのです。だから、リュウトさんたちには感謝の気持ちでいっぱいですよ!」

「……」


 そう言い切るエマさんは確かな思いを抱きながら伝えてくれた。

 ちゃんと向き合うのは初めてだけど、リリナの姉なだけに、妹に負けず劣らずに律儀でしっかりした人だなって思う自分がいる。

 だから、エマさんから忖度の一つも無い褒め言葉を聞いていたら、むず痒くなってしまいそうだ。


「こうして向き合って思うんですよ。リュウトさんがいたから、リリナは無事に生きてこれたんだって。そして、再発してしまった私の病気を治すきっかけをくれたんだって……。だとすれば……」


 一つの答えが解けたように、エマさんは俺に伝える。


「リュウトさんは私やリリナにとって……。命の……いえ、人生の恩人と表現してもおかしくない方だと言っても、大袈裟ではないのかもしれませんね」

「え?」


 エマさんからそんなことを柔らかくもあっけらかんとしたような表情で言われる俺なのであった。


「そ、それは……恐縮です」


 だけど、かつての仲間だったリリナの身内の方にそれを言われたら、俺がリリナと出会ったことにも意味があったのかもしれない。


 そして、冒険者になったあの日に巡り合えた時にできたその繋がりを決して忘れてしまわないことを改めて決心する俺なのであった。

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