第40話 国王陛下との謁見
エレミーテ王国の国王陛下が登場します!
「俺は今、過去一で心臓がバクバクになっているんだが、リリナはどう思う?」
「それを今、言うなんてズルくない?私もなんだけど」
「ご、ごめん」
俺はリリナとセアラ様と一緒にエレミーテ王国の王城内に来ており、謁見の間に近づこうとしている廊下まで来ている。
成し遂げただろう功績を称えるのが目的としても、今この瞬間に立っている。
国のトップと相対するのだから。
「国王陛下がお待ちでございます」
「はい」
「……」
俺の目の前にあるのはエレミーテ王国の王城の中でも最も存在感や重要性があるであろう部屋の扉だった。
この扉の先にエレミーテ王国のトップがいる。
俺とリリナの緊張感は高まる一方、セアラ様は至って平静だ。
経験がある人と無い人とでは心の持ちようが違うのだろう。
「では、扉を開けます」
そして、扉が開いた。
◇———
「お三方、前へ!」
広く洗練された謁見の間。
豪奢でいながらも粛々さを漂わせる空間。
道を作るように騎士団の各部隊のトップや副官と思しき人物たちがずらりと並んでおり、その中には俺にとって直属の上司であるモーゼル隊長とソフィア副隊長もいる。
錚々たる面々とはこのことだ。
中小規模の町で生まれ、今は亡き両親とつつがなく過ごし、冒険者として自由気ままに生きてきた俺にとってはこんな場所や光景とは無縁だと本気で思っていた。
だけど、俺は今、その場所に立っている。
「ルーフェン・フォン・エレミーテ国王陛下。セアラ・フォルティーナ殿。リュウト・ドルキオス殿。リリナ・エスタル殿をお連れしました」
国王陛下の近くまで誘導した一人の騎士に続くように、俺とリリナ、セアラ様は指示に従う形で片膝を床に膝を着けながら頭を垂れる。
沈黙が続くこと五秒ほど。
「面を上げよ」
その言葉を受け、俺たちはゆっくり頭を上げる。
俺は一瞬で空気に呑まれた。
よく整えられた濃い銀色の髪と髭を生やし、豪華な服と外套に身を包んだ壮年の男性こそ……。
エレミーテ王国の国王陛下であるルーフェン・フォン・エレミーテ、その御方だ。
そう名乗る国王様の纏う空気や放つ眼光から来る圧力はまさに王の威厳そのものと言ってもいい。
隣に控えるのはセレーヌ様とエレミーテ王国騎士団のトップであるシュナイゼル団長だ。
「此度の王都が奇襲された事件の解決、誠に見事であった。貴殿らの働きにより、国民に死者を出すことなく乗り切れた。心より感謝する」
「お褒めの言葉、恐悦至極でございます」
「滅相もございません」
俺とリリナは顔に出さないようにはしているものの、正直に言って、胃がキリキリし始めている。
聖女にして侯爵家の貴族令嬢であるセアラ様は慣れたものだ。
「して、其方は我が国の騎士団の一部隊の遊軍調査部隊の隊員であると伺っている。突如として現れた魔族をセアラと共に討伐を果たしてみせたらしいな」
「はい。こちらのリュウトさんが王都を混乱させようとした魔族を討伐した現場をこの目で見届けました。」
陛下の問いにセアラ様が的確に答えた。
「それは見事であった。他にも、王都の住民や騎士団の騎士たちが怪我を負ってしまった時にはリリナ、であったか?」
「はい」
「騎士団の医療部隊に混じって、其方は運ばれて来た負傷者の治療に加わってくれたらしいな。セアラが合流するまでの間、重症患者も診たと存じておる。素晴らしい技量の回復魔法で貢献してくれたことに感謝する」
「勿体なきお言葉です」
お褒めの言葉をもらったリリナは恭しく答えた。
自分で言うのもあれだけど、自由な振る舞いをすることが珍しくない冒険者の中でも、リリナは礼儀正しい方だ。
思えば、俺が『戦鬼の大剣』にいた時からリリナはパーティ内においては外部との緩衝材のような役割を担っていたっけな。
「セアラはもちろんだが、リュウト。リリナ。此度の事件の解決において多大な貢献をした両名に褒美を取らせたく思うが……何が良い?」
「褒美?褒美……」
陛下が褒美を賜ってくれるとのことだが、いざそれを言われてしまったら躊躇いの気持ちが出てきてしまう。
思わずリリナやセアラ様、モーゼル隊長とソフィア副隊長に目線を送ったけど……。
(私に聞かないで!私だって困ってるから!)
(欲張り過ぎず、控えめ過ぎない範囲で良いと思いますよ)
((すまん。そこはリュウトの裁量に任す!))
リリナは困ったような表情を、セアラ様は口角を少し緩める程度の微笑みを、モーゼル隊長とソフィア副隊長はしかめっ面だったものの、そんな心の声が聞こえてならなかった。
こりゃ、助け船が来ないな。
かと言って、「特にありません」とか口に出そうものならば、それはそれで厄介そうだ。
少し考えて出た望みの褒美は……。
「でしたら。新しい弓が欲しい。ですね」
「ほう。そんなことで良いのか?」
「はい。私のジョブはレンジャーですので、仕事にしても、戦闘にしても弓を得手とします。本当のことを申し上げますと、今使用している弓は手入れこそ欠かさずとも、それなりの年季が入っているんですよ。ですから、これを機に弓の新調も一緒にできればと思っております」
普段から得手としている弓を提示した。
すると陛下は口を開いた。
「うむ。良かろう。リュウトには余の名前の下、現在使用している物よりも更に上質で優れた武具を提供すると約束しよう。余にできる限りであれば、望む弓を作らせよう!」
「ありがとうございます!」
俺の褒美についてはこれで終わりのようだ。
続いてリリナだけど、彼女の場合は少し毛色が違った。
「褒美……と、申しますか、私の場合は物やお金の類ではなく、一つのお願いがあるのです。よろしいでしょうか?この場で打ち明けるには憚られるだろうことですので……。もちろん、叶う限りで全く問題はございませんので!」
「そうか。この場で言うのを躊躇われるとは。良かろう。セレーヌ。謁見の時間が終わった時、リリナと話す機会を設け、その願いを聞いた上で要求案を纏めて儂に報告しなさい」
「承知しました。国王陛下」
俺はリリナの要求の中にある「この場で打ち明けるには憚られる」と言うセリフに一抹の疑念を抱いたものの、それからは先の事件についての洗い直しのような問答の繰り返しとなった。
そうこうしている間に。
「以上。謁見の時間を終了とする!」
俺たちは国王陛下との謁見を終えることになった。
それからセアラ様は王城を後にして、リリナは従者に導かれるままにさっき言っていたお願いについて詰めるため、別室に案内された。
それで俺は……。
「お疲れ様」
「どうだ?陛下との謁見は?」
「胃に穴が空くんじゃないかって冷や冷やモノでしたよ」
進む廊下の途中でモーゼル隊長とソフィア副隊長に迎えられながら合流するのだった。
まさか、エレミーテ王国の国王陛下との謁見に出向くなんて夢にも思っていなかったのもあるけど、何かしらの失礼を働いて不敬罪とかになるのではって考えてあの場にいる自体、中々にストレスが掛かるって思わざるを得ない。
「にしても、褒美の内容はあんなので良いのか?弓を新調したいくらいで」
「むしろ、あれで十分過ぎるって思っているくらいですよ。必要以上にあれが欲しい、これが欲しいって言い出すのも、何だかみっともない気もしますので」
「ははっ。リュウトらしいな」
「でも、その気概も悪くないわ」
そう言う俺の気持ちを聞いたモーゼル隊長とソフィア副隊長はフッと笑うのだった。
「にしても、お前のかつての仲間だったリリナのお願いなんだが、一体何なんだろうな?あの場で言えないってことは、人には言えないユニークなお願いとか?」
「そこまでは分かり兼ねませんね」
そんなやり取りを交わしながら、俺たちは王宮を後にするのだった。
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