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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第39話 王女との邂逅

エレミーテ王国の王女様が登場します!

「あ、あの……」

「どうした?」

「これから俺たちが向かうところってやっぱり?」

「おう。ここだぜ」


 そんな会話をモーゼル隊長と交わしながら、俺はある場所の門へと辿り着いた。


「ここが……エレミーテ王国の王宮ですか?」

「おう!」


 他でもない、王都エメラフィールにおいて最も有名にして、象徴とも言える、エレミーテ王国の王宮だ。

 門番の騎士二名にモーゼル隊長がアポを取っている旨を伝えると、事前に伝えられているからか、跳ね橋は降り、門が開いていく。

 俺たちはその門を潜り抜けて入っていく。

 冒険者時代に依頼や用事で王都を訪れる機会はあれど、今回ばかりは緊張感が否応なしに高まる。

 騎士団でもそれなりの地位が無ければ、入ることさえ許されない王宮の中に入ろうとしているのだから。


「近くで見ると大きいのもそうですが、煌びやかさの中に厳かさや風格を感じますね」

「だろ?慣れているつもりだけど、俺も初めて見た時の感想やリアクションは今のリュウトと同じだったぜ。ソフィアもそうだったろ?」

「私は別に」

「あら?マジで?」


 城内には細くも広い石畳が敷かれた中庭が目に飛び込み、周りには緑豊かな自然を感じさせるほどに美しい植物が咲き誇っており、その中心には噴水が設置されている。

 心なしか、噴水から放たれる清らかな水の流れから発生する滴るような音によって、自然とリラックスさせてくれるような気分になりそうだ。

 そんなことを思いながら王宮の室内に入っていく。


「うおっ。これは……」

「一言で表すなら?」


 モーゼル隊長にシンプルな質問をぶつけられながら、自分なりの表現を口にする。


「ただひたすらに……豪華です」

「やっぱりな」

「まずは客間へご案内いたします」


 中へと踏み入った瞬間、豪華絢爛と言うワード以外見つからないほどに雄大で立派な玄関が俺の目の前に広がっている。

 硬さと清廉さを感じさせる大理石で敷き詰められた床には細長い赤のカーペットが敷かれており、壁には高級な装飾品が掛けられており、王宮を支えているだろう頑丈に作られた数本の柱がそびえ立っている。

 それから俺たちは従者の方にまずは客間まで案内された。


「こちらでございます」

「ありがとうございます」


 しばらく待ってもらうための客間まで来た俺たちは扉を開けると、またも言葉を失った。


「流石は王宮。客間までレベルが違いますね」


 客間と呼ぶにはかなり広く、シンプルでいながらも清潔感と洗練さを感じさせる空間であり、繊細な細工が施された家具や調度品が何点か置かれているものの、武具以外の高級品とは縁遠い生活をしてきた俺が見てもすぐに分かるくらいの高級品で揃えられている。

 冒険者時代では考えられない光景の数々に目が眩みそうだ。

 そう思っている時だった。


「あれ?リュウト?」

「ん?え?」


 奥側のソファに座っている一人の女性が俺を呼び、その方角に目をやった瞬間、驚きの表情に変わった。


「リリナ?」

「リュウト!どうしてここに?」


 何とリリナだった。

 どうしてリリナが王宮に呼ばれているのかって戸惑いながら、俺は駆け寄った。


「王都に滞在していたら、冒険者ギルド本部から連絡が届いたの。中身を見てみたら、王宮に来て欲しいって書いてあったのよ」

「あ~。もしかしたら、王都に住まう住民や騎士たちの救護活動に一役買ったからじゃないか?確か君、キメラの集団と戦っていた時、回復魔法や補助魔法でいろいろ助けてくれたよな?その功績が認められたんじゃないかな?」

「え?そうなんですか?そう言えば、あなたは、えっと」

「あの時は切羽詰まっていたからな。ちゃんと挨拶ができていなかったから、改めて……」


 モーゼル隊長とソフィア副隊長はリリナにしっかりと自己紹介をした後、リリナも丁寧に自分のことについても話した。


「そうですか?そのシーナさんと言う方、助かったんですね」

「あなたの回復魔法のお陰で大事にならずに済んだんだ。何でも、傷ついた隊員や住民たちの治療活動にも取り組んでくれたようだな。お陰で、死者ゼロで乗り切ることができた。改めて感謝する」

「いえ、滅相もございません」


 ソフィア副隊長は感謝の気持ちをリリナに示した。

 リリナは謙遜したものの、「同じ部隊の人間を救ってくれた以上、感謝の念は伝えたい」とソフィア副隊長は言った。

 本当に律儀な人だな。


「そう言えば、呼ばれた人って、リリナと俺たちだけでしょうか?」

「いや、もう一人いる。お前にとっても縁のあるお方だ」

「もう一人?」

「失礼します」


 他に誰が来るかを確認しようとすると、一人の女性の声が響く。

 その人物を見て、俺は驚きを隠せなかった。


「あなたは?」

「少しぶりですね。リュウトさん」

「セアラ様!」


 エレミーテ王国が抱える聖女、セアラ様だった。

 セアラ様も王都で起きた事件を解決するのに大きく貢献したと聞いてはいたけど、まさか同じタイミングで呼ばれていたとは。

 むしろ、当然かと思えば自然かな?


「モーゼルさんやソフィアさんも変わらないようで何よりです」

「いえ、そんなことは……」


 モーゼル隊長とソフィア副隊長はひたすらに謙遜している。

 騎士団の中でも一定の地位がある二人でも、聖女にして侯爵家の令嬢でもあるセアラ様には頭が上がらないのだろう。

 そうこうしている時、ノック音が鳴った。


「失礼します。謁見まで少々お時間がございますので、エレミーテ王国第一王女様が初めてお会いされるリュウト様とリリナ様にご挨拶をしておきたいと通達がございます」

「はい、大丈……ん?今、何と?」

「エレミーテ王国第一王女様がリュウトさんとリリナさんにご挨拶をしておきたいと従者さんの方が仰っていましたけど……」

「「え?」」


 セアラ様に補足され言葉を……。耳を疑うようなセリフを聞いた俺とリリナは固まった。

 晴天の霹靂とはこのことを言うのか?

 そうこうしているうちにその時間は来るのだった。


「失礼いたします」

「リュウト」

「はい」


 俺とリリナは膝を床につけながら頭を下げている。

 扉が開くと、確かな品を備えたような澄んだ声が客間に届く。

 いかにも強そうな護衛の騎士二名と一緒に入ってきたのは白を基調にした豪華なドレスを身に纏い、頭部にはティアラと翡翠色に輝く髪飾り、首元には国章が刻まれた立派な首飾りを付けており、ウェーブのかかった白銀色の髪は腰まで伸びている。

 輝くような紺碧色の瞳は吸い込まれてしまいそうになるほど深く、陶磁器のように透き通る白い肌もあって、まるで絵画から飛び出したような美貌をしている。


「初めまして。わたくしはエレミーテ王国第一王女。セレーヌ・フォン・エレミーテでございます。この度は王宮まで足を運んでいただき、先日起きました王都の事件を解決することに多大な貢献をしていただき、誠にありがとうございます。第一王女の名において、ここに感謝の意を表します」

「いえ、こちらこそ……」


 俺の前でドレスの裾を摘まみながら淑女らしいお辞儀をしている人物こそ、エレミーテ王国の第一王女であるセレーヌ・フォン・エレミーテ、その御方である。

 国の王族がわざわざ挨拶に来るなんて、いろんな意味でサプライズじゃないか。

 前日に国王陛下を始めとする王族を前にした時の作法はソフィア副隊長から教わったものの、いざ本人を前にしたら緊張が止まらない。


「お顔を上げていただいて構いませんよ。今は気を楽にしてくださいませ」

「は、はい」


 セレーヌ様に促される形で頭を上げる。

 こうして相対すると、所作や仕草を見るだけでこの上なく洗練されているのが分かり、これが王族なのかって感じさせる。

 モーゼル隊長とソフィア副隊長、セアラ様は対面した経験があるのか、ピンと背筋を伸ばしたまま平静を崩していない。


「謁見の前にわたくし自らの目でお二人の姿を確認しておきたく思い、足を運ばせていただきました。ご迷惑でしたか?」

「いえいえ、滅相もございません!こちらこそ、セレーヌ王女とご対面できたことを心より光栄に申し上げます」

「わ、わたしもリュウトと同じでございます」


 こうして向き合うと、何だろう?

 神々しくも、威厳や品格に溢れるようなオーラを感じる。


「先日の事件におけるお二人の活躍は存じ上げております。リュウトさんは潜入していた魔族の一人を戦いの末に討ち取ったことによって王都に安寧をもたらしました。リリナさんは傷ついた隊員や住民の治療に協力していただけただけでなく、キメラの討伐にも加勢をしたことによる戦線強化に貢献した末、事件の鎮静化をもたらす一助を担っていただきました。一介の騎士団の隊員や冒険者とは到底思えない功績を称えたく思い、まずはわたくしがこの場に足を運ばせていただきました所存です。本当にありがとうございます!」


 そう言いながらセレーヌ様は頭を下げた。


「そ、そんな、頭を上げて下さい!」

「そうですよ。リュウトや私もどうにかしたい一心でやっていただけですので!」


 俺とリリナは必死で取り繕った。


「ふふっ。我が国の騎士団の方たちや王都の住民を守り抜く貢献をしながら、当たり前のことを当たり前のようにやったと振る舞えるその姿勢。わたくしは好ましく思いますよ。そのような性分や人柄でしたら、わたくしのお父様にして、エレミーテ王国国王陛下であられる、ルーフェン・フォン・エレミーテも拒むことはないでしょう」

「「は、はぁあ……」」


 そう言われると照れたくなりそうだが、堂々と表に出す勇気は正直に言ってゼロだ。

 なぜならば……。


「失礼し……。うっ!セレーヌ様。いらしてたのですね」

「はい?どうされましたか?」

「先ほど国王陛下より、謁見の準備が整ったと御報せがございました!」

「そうですか。すぐに向かわれるとお伝え下さい」

「ハッ!」


 セレーヌ様と伝令係の騎士がそんなやり取りを終えると、俺はすぐに悟った。


「わたくしは先に戻らせていただきますので、これより正式に謁見の場を設けさせていただきます。モーゼルとソフィアは遊軍調査部隊の上官として、謁見における準備でわたくしに付き添ってください」

「「ハッ!」」


 モーゼル隊長とソフィア副隊長は遊軍調査部隊の代表として、謁見における顔役として同席することとなり、セレーヌ様と一緒に去って行く。

 去り際に「どうか失礼がないように!」と無言のメッセージを残しながら。


「国王様との謁見か」

「大丈夫ですよ。先ほどの丁寧な態度を崩さなければ、波風を立てずに終えられますよ」

「はぁあ……」


 セアラ様はそう言ったものの、俺の中の緊張感が収まることは決してなかったのである。

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