第36話 事件は終幕へ
事態は終幕へと向かいます!
「喰らえ!豪魔螺旋拳!」
「グガァアアアア!」
モーゼル隊長を筆頭に、王都の一区画に現れたキメラの集団を相手取っていた遊軍調査部隊の隊員たち。
螺旋のような渦を右腕に纏わせたモーゼル隊長の一撃はキメラの鳩尾に決まり、その身体を貫通させるほどのダメージを与えた。
ボロボロになった身体はうめき声と共に消滅するのだった。
「よし。これで全部だな」
「はい!周囲を確認しましたところ、他にキメラを含む魔物は確認されませんでした!」
「そうか。手間をかけさせたな」
どうやら全て始末できたようだった。
モーゼル隊長はすぐ近くにいる一人の女性に向き直る。
「それにしても、いつも以上に身体が軽く感じたように思えたよ。傷ついた隊員や国民の方々の治療だけでなく、俺たちのフォローまでしてくれて本当に感謝だぜ」
「いえ、恐れ多いです」
その相手は『戦鬼の大剣』の僧侶であるリリナだった。
リリナは王都が騒ぎとなっている中で、傷ついた遊軍調査部隊の隊員や国民の治療に当たってくれただけでなく、前線で戦うモーゼル隊長たちへ補助魔法によるパワーアップで戦闘に貢献してくれていた。
「あの、今回の騒ぎって?」
「あぁ。魔物が結界を掻い潜って王都に紛れ込む自体があり得ない現象である以上、間違いなく人の手で仕組まれたモノなのは明白だからな」
モーゼル隊長は今回の事件における見解を示した。
そこへ隊員の一人がやって来る。
「隊長!ご報告です!ソフィア副隊長より、貴族街周辺で発生したキメラの群れの討伐及び避難活動が完了したとのことです!」
「そうか。我々はソフィアたちと合流しよう。その後、発生した箇所を中心に周辺の調査と事件の究明に当たるぞ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
そこからの対応は殊の外早いモノだった。
ソフィア副隊長と合流したモーゼル隊長を中心に避難した国民の安全確保は騎士団本隊と担い、魔物を保存する魔道具を含んだ危険物の確認や怪しい人物がまだ潜んでいないかの捜索まで手抜かりなく進めていった。
魔族と化したガルドスや放たれたキメラによって大なり小なり傷ついた者もいるため、回復魔法を得手とする騎士団お抱えの僧侶や治癒師も治療に力を入れていく。
国民の安全と平和を守るのが騎士団の役目だから……。
「モーゼル隊長!」
「おう!リュウトか!セアラ様もご一緒で!」
「お待たせいたしました。わたくしも傷ついた方々の治療に当たらせていただきたく存じます」
「それは有り難きことです!そこの二人!セアラ様をご案内しろ」
そこへ俺とセアラ様が合流する。
続いて、モーゼル隊長が「セアラ様には重症患者の方をお願いしていただきたい」と伝え、手すきになっている隊員に案内をさせた。
「リュウト。お前がかつて所属していたパーティの僧侶の女性冒険者が、確か……」
「リリナですか?」
「そうそう、そのリリナって子なんだがな」
「彼女が何か?」
モーゼル隊長が俺にリリナのことについて口を開いた。
「いろいろと助かったんだよ。怪我人の治療はもちろんだが、キメラの討伐にも補助魔法のお陰でスムーズにいったんだわ。腕は抜群だから、できればスカウトしたいくらいだ!」
「そうですか?」
快活に笑いながらリリナを認めるモーゼル隊長だった。
かつての仲間とは言え、忖度抜きで褒められると俺も嬉しくなる。
「そう言や、その子はあっちで怪我した住民たちの治療に当たってるぜ。会ってきな」
「し、しかし……」
「ちょっとくらいなら良いぜ。積もる話もあるだろうからな」
「はい……」
モーゼル隊長はそれだけ言い残すと、仕事に戻った。
◇———
「ハイキュア!」
王都の住民を中心に集められている部屋にて、リリナが治療活動に当たっている。
リリナは目の前にいる少女に回復魔法のハイキュアを掛ける。
短杖の先端にある魔石が放つ光を浴びること約十秒。
「どうですか?」
「あれ?痛くない!痛くないよ!ママ!」
「本当?良かった!良かったよ!」
少女は運ばれた時にはキメラの襲撃に巻き込まれてしまったせいで打撲や裂傷の怪我を負ってしまっていた。
そこへリリナも手伝うことになり、回復魔法を施す形で傷を癒していたのだ。
痛みも取り除かれたことを嬉しく思った少女は母親に抱きつき、母親は安堵の涙を流す。
「冒険者様。娘を治していただき、本当にありがとうございます」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」
「お姉ちゃん!ありがとう!」
「どういたしまして」
リリナは少女と母親に感謝されると、柔和な微笑みと共に言葉を返した。
部屋にいる人の大半は回復魔法が使える者の奮闘のお陰で怪我も概ね治っており、心なしか、穏やかな空気だ。
騎士団の関係者からもお礼を言われたリリナはもうすることも無いと思いながら、部屋を出たところに……。
「あっ!」
「うぉ!」
「リュウト!」
俺が現れた。
「リリナ。ここにいたんだな」
「う、うん。リュウト、大丈夫?」
「俺は平気だ。治療も終わってる」
「そうなんだ……」
「「……」」
沈黙の空気が流れてしまった。
そんな時だった。
「リュウト。その……ガルドスは?」
「それは……。実はな……」
リリナの問いに対し、俺は口を紡ぎながらも、事の一部始終を伝えた。
俺とガルドスの戦いの結末を。
◇———
それから俺とリリナはある場所に向かった。
「よう」
「傷は大丈夫?アキリラ」
「リリナ。それにリュウトも……」
一時的に要入院が必要な怪我人を安静にさせておく部屋に入ると、その中の一つのベッドにはリリナと同じく、かつての仲間であったアキリラがいた。
身体の要所に包帯を巻かれ、湿布を張られているものの、体調そのものは平常に戻りつつある感じのようだった。
「具合はどうだ?」
「ほんの少し痛みは残っているけど、リリナの応急処置や治療に当たってくれた人たちの腕が良かったのもあるからかな?傷の痛みは大体感じないってところね。しっかりと治療を受ければ、退院もすぐだろうってお医者さんも言ってた」
「そうか」
回復の傾向に向かっているのが分かるくらい、アキリラの体調は良かった。
ビーゴルは命こそ落としていないが、未だに意識不明であり、別の部屋にいる。
「リュウト。その……ガルドスは?」
「……死んだよ。魔族と化したガルドスは俺の手で葬った」
ガルドスの安否を尋ねられた俺は迷いながらもアキリラに本当のことを……その顛末について正直に話した。
どうして魔族になってしまったのか。
戦いの行く末からその中で対話した内容。
そして、最後にガルドスが謝罪の言葉を口にしながら消えたことを。
「そっか……そっか……」
全てを聞いたアキリラは俯きながら、強い力で手のひらを握り締めながら涙を零すのだった。
俺とリリナはその姿を見届ける事しかできなかったんだ。
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