第35話 決着の時
かつての仲間との決着が着きます!
「ガハッ!ゲホッ!」
「ガルドス!」
膝を着きながら血を吐いているガルドスの身体は既にボロボロだった。
魔族となったことによって強大な力を得たものの、戦いの中で無理を重ねに重ねた代償に、身体が壊れ始めているように見える。
「リュウトさん!」
「セアラ様!」
「大丈夫か?」
そこに駆け付けたのはエレミーテ王国が保有する聖女の一人であるセアラ様であり、先日の合同調査プロジェクトにも参加してくれたSランクパーティ『夜天の宝剣』を率いるアルベルトさんやそのメンバーもいる。
セアラ様は王都周辺に魔物を寄せ付けない結界を張る仕事をしており、アルベルトさんたちがその護衛で出払っていた。
恐らく、王都がただならぬ騒ぎになっていることに気付いて戻って来たのだろう。
「コイツは魔族か?」
「はい」
「状況はどうなっている?」
アルベルトさんの問いに対し、俺は答える。
目の前にいるのが『戦鬼の大剣』のガルドスであり、魔族に身を墜としたことや王都でキメラの集団が現れたことなど、分かる限り、簡潔に伝えた。
「よし。我々はキメラの集団の殲滅に当たろう」
「ありがとうございます」
状況を知ったアルベルトさんたちは王都に残っている騎士団や冒険者パーティの加勢に向かうのだった。
一方、残っているセアラ様はガルドスを見つめる。
「リュウトさん、あの方は確か……」
「ガルドスです。見ての通り、魔族に身を墜とされました」
「詳しい話は後日お伺いするとしまして、まずは———」
「ぐぅう、うぅうう」
「「ッ!?」」
その時、ガルドスは蹲りながら、唸るような声を出した。
少なくとも、戦闘を継続するのは困難だろう。
「まだだ。俺はまだ、リュウトに———」
「ホーリーバインド!」
「ぐわっ!」
セアラ様は聖属性を伴った魔法の鎖でガルドスの四肢を拘束した。
やはり魔族相手には効果覿面なのか、ほとんど動けていない。
「クソッ!離せ!」
「無駄です。あなた程度では自力で抜け出すことも叶いません」
セアラ様はガルドスに向かって冷たく言い放つ。
普段はお淑やかだけど、敵対する相手には容赦の欠片も見せないってところが恐い。
「リュウトさん。“破魔光の矢”を!」
「はい!」
俺は成す術なく動けないガルドスの下に歩み寄る。
合同調査プロジェクトでも使用した“破魔光の矢”だけど、幸いにもストックとして何本か残っていた。
俺はそれを携えながらガルドスに狙いを定める。
「ガルドス……」
「ぐっ。うぅう……」
ガルドスは俺を睨んだままでいるものの、重なったダメージやセアラ様の魔法もあって、もう成す術が無いのは明らかだった。
「リュウ……ト」
「ガルドス……」
「認めたくねえ。ここで負けを認めちまったら、俺が間違ってて、お前が正しいってことを受け入れる羽目になっちまう。それだけは絶対に許さねえ!お前にだけは。お前にだけは、絶対に……」
詰んだも同然なのに、ガルドスは負け惜しみの言葉を並べ続けている。
その気になれば、命を奪うのは簡単な状況だったけど、あえて俺は問うた。
「ガルドス。何でこんなことを?」
「澄ました顔してんじゃねぇぞ!『戦鬼の大剣』が今まで上手くいったのも、早い段階でAランクパーティまで登り詰めることができたのも、リュウトが、テメエがいたからだって周りの連中がほざいてやがったんだよ!『戦鬼の大剣』のリーダーはこの俺なのに、何で?何でテメエの方が認められてんだよ?それが気に入らねえから俺は……」
ガルドスはさっきまでの殺意に満ちたような様相から、次第に悔しさと怒りが入り混じったような表情へと変わっていった。
その本音を聞いて一つだけ理解できたことがある。
ガルドスはただ……自分の生き様を認めて欲しかったんだって……。
「いいか!ガルドス!よく聞け!」
「あぁ?」
本心をぶつけられたならば、本心でぶつからなければならない。
「俺が冒険者になったばかりの頃、お前とアキリラ、ビーゴルから『戦鬼の大剣』に誘われた時、本当に嬉しかったんだ。駆け出しの頃から一緒に冒険していく中で時には喧嘩して、時には羽目を外して馬鹿みたいにはしゃいで、夢とか語り合って。楽しかった。大事な存在だって心から思うようになった」
俺の心の中でガルドスたちとの思い出が蘇る。
「将来はSランクになるんだ!」って夢を朝まで語り合ったこと。
初めての夜営で戸惑いながら助け合ったこと。
初めて依頼を失敗してしまった時には納得がいくまで反省会をしたこと。
「かけがえのない仲間だからこそ、俺はそんなお前らを守りたい、失いたくない、役に立ちたい、力になりたい。そう思ったからこそ、俺は自分を研鑽し続けることができたんだ。その原動力をくれたのはリリナとアキリラにビーゴル。そして、ガルドス。お前なんだよ。皆がいたから、俺も強くなれた」
「リュウト……」
俺の言葉を聞いたガルドスの顔は憑き物が落ちたようにも見える。
袂を分かつことになってしまったけど、今の俺がいるのはガルドスたちがいたからなんだよな。
「ぐっ!」
「ッ!?」
その時だった。
力が尽きかけてきたのか、ガルドスの身体が風で崩れゆく砂の城のようにボロボロと崩れ落ちていく。
下半身から塵と化していき、風前の灯火であることを示しているのは誰の目から見ても明らかだ。
「リュウト!」
「ガルドス!」
俺は“破魔光の矢”を番えて弓を引き、ガルドスの心臓を射貫いた。
矢が刺さった箇所を中心にガルドスの身体を包み込んでいくように広がっていく。
「リュウト……」
するとガルドスは小さく口角を上げながら伝える。
「今まで、すまなかった。アキリラたちにも伝えてくれ。『俺の我儘でこんなことになって、すまなかった』ってよ。俺に引導を渡してくれたのがお前なら、悪くねえや。だから、ありがとうな。先に待ってるぜ……」
「あぁ」
完全に消滅する間際のガルドスが見せたのは、儚くも穏やかな表情だった。
俺が初めて出会った頃のガルドスの面影が垣間見えたような気がする。
そして、黒い塵と化したその残滓はまっさらな虚空へと消えていき、俺とセアラ様はその行く末を見届けるのだった。
……さようなら。ガルドス・ハリブザー。お前のことは……絶対に忘れないから。
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