第33話 対峙の瞬間
因縁の戦いが始まります!
王都の城下町が凄まじい爆発音が発生したところを目指し、俺とリリナはその場所に駆けつけた。
そこで俺は目の前の異形の人物を目にした。
「ハハッ!探したぜ!リュウト!」
「ガルドス……」
かつて俺が在籍していたAランクパーティ『戦鬼の大剣』のリーダー格であったガルドスだった。
だが、輝くような金髪はその色味を微かに残しているだけの闇のような漆黒に染まっており、黒く染まった肌と赤褐色の眼、不規則に刻まれた不気味な紋様が身体中に刻まれている。
最近、魔族であるゲルデズと相対した経験があるだけに、何がどうなっているのか、俺にはすぐに理解できた。
そして、深刻な表情で俺が問う。
「お前……魔族になったのか?」
「そうだ。俺は大きな力を得るために魔族となったんだよ!リュウト!お前を殺すために!お前を否定するためにな!」
「なっ?」
「何だと?俺を……殺すために?そのためだけに魔族に身を墜としたのか?」
嘘だろ?俺に勝ちたいがために、俺を殺したいがために、そんな理由で?
側にいるリリナは傷だらけになったシーナさんに回復魔法を掛けて応急処置を施しているが、ガルドスの言い分を聞いて絶句している。
事例そのものはかなり少ないものの、私利私欲で魔族に取り入ってしまおうとする人間も悲しいことにいる。
魔族と言う概念そのものが人間にとっての忌避の対象に、その行いそのものが人間としての一線を超える禁忌なるのだから。
「ガルドス!お前、自分が何をしたのか分かっているのか?」
「分かってるさ!お前を地べたに這いつくばらせてやれるなら、俺は何だって受け入れたって構いやしねえ!この姿はお前への宣戦布告なんだよ!リュウト!お前は俺の屈辱の象徴なんだからな!」
「屈辱の象徴?」
耳を傾けると、支離滅裂な言葉を並べているだけに思えるが、ガルドスが何を言いたいか、全てではないが一部分かったことを伝える。
「お前……俺が憎いのか?そんな姿になってまで、俺を?」
「憎い?違う。俺はお前の、リュウトの全てを壊してやりたいだけなんだよ!テメエが俺よりもいい気になるなんて許されねぇえんだよぉおおおお!」
「ッ!」
そう吠えるガルドスの目はどす黒く濁っている。
それこそ、人外のような生物と揶揄されても文句が言えないほどに。
「だからよぉお……リュウト!死んで俺に懺悔しろよ!」
「ガルドス……」
言葉での対話はほぼ不可能と判断した俺は弓を構える。
その時だった。
「何だ?」
「言っただろ?リュウト。お前の全てを壊してやるってな!」
「うっ!」
俺が今いる場所から距離のある二ヵ所から大きな破裂音が轟いた。
それと同時にガルドスが剣を振りかざしながら、俺に突進する。
◇———
「グガァアア!」
「キャァアアアア!」
城下町から数キロ離れた貴族街周辺、そこに住まう人々が逃げ惑っていた。
暴れているのは魔物ではない。
「何だ?あの化け物は?」
「ゴブリンやオークのような魔物じゃないぞ!」
「おぞましい!誰か助けて!」
魔物ではなく、禍々しい魔力を帯びたキメラだった。
王都には聖女のセアラ様を始めとする宮廷魔術師や冒険者の魔術師の手伝いで魔物を入れさせない結界が張られているため、通常は王都に魔物が現れること自体あり得ない話だ。
それが人造的に生み出されたキメラならば尚更である。
だが、現実にそれが起きている。
つまり、事故ではなく、誰かによって仕組まれたと結論付けるには充分だ。
「ゴガァアアアア!」
「うわぁああ!」
「助けて!助けてくれ!」
先日、エレミーテ王国騎士団と冒険者パーティの合同調査プロジェクトで遭遇したキメラのような体躯や力を誇ってこそないものの、普通の人間の倍はあり、少なくともキャリアのある冒険者や騎士でないと対処できない。
それが十体以上と数が多く、貴族の護衛の私兵が次々と倒されていく。
おまけに別の場所でもう一つのその集団が暴れているから、正に大パニックだ。
「きゃっ!」
「ママ!うっ!」
「グルルルルッ!」
「あ、あぁあ……」
そんな時、幼い女の子と一緒に逃げていた母親が石ころに躓いた拍子に転倒してしまい、そこに一体のキメラが目を付ける。
魔物はおろか、戦闘とは全く無縁の人々からすれば、それは恐怖以外の何物でもない。
ただ、その場で怯え、震えるしかできない。
「ガァアアアア!」
「「あぁああああ!」」
キメラの振るう腕が母子を襲うその時だった。
「ギャァアアアア!」
「「え?」」
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
どこからか放たれた“爆撃の矢”によってキメラの額に命中し、爆発と共にその頭部は吹き飛び、倒れ伏した。
矢を放ったのは遊軍調査部隊の第六班の班長であるゾルダーさんだ。
それだけではない。
「近辺の安全シェルターに避難させろ!一人でも多くの国民を救うのだ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
その現場で指揮を執っているのはソフィア副隊長であり、隊員たちに指示を飛ばす。
更にはキメラから国民たちに及ばぬよう、騎士団本隊の騎士たちも駆けつけてくれた。
加えて、別の場所で同じく発生したキメラの集団をモーゼル隊長が隊員たちを引き連れ、まだ王都に残っていたAランクの冒険者パーティと共に対処に当たっている。
「もう大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
ソフィア副隊長は優しい笑顔でキメラに襲われていた母子を安全シェルターに避難させた。
(城下町方面で起きた爆発から時間差によるキメラの集団の奇襲。明らかに異常だ。少なくとも、何者かの手によって仕組まれたに違いない)
普通ならば考えられない事態の連続を不審に思いながら、ソフィア副隊長は目の前のキメラに苦戦する隊員たちを援護するのだった。
◇———
「ふふふ……。二日で二カ所しかキメラを収容させておいた、時限式で解放させる魔道具を設置できなかったけど、面白いことになってきているわね」
王都にある高い建物の屋上から、黒いフードとローブに身を包んだ人影があった。
まるで、演劇でも楽しむかのように王都が混乱してる様相を見ている。
それから不意に吹き荒ぶ風と共に被っているフードからその素顔を覗かしたのは……?
「ゲルデズの遺した実験体のキメラもだけど、魔族となったガルドスにはいろいろと頑張ってもらわないとね。あのお方のためにも……」
今起きている事態を引き起こした張本人にして、人間とは思えない深紅の瞳を輝かすシェリーだった。
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