第30話 かつての仲間からの頼み
ここから話が更に動いていきます!
「ゾルダー班長。報告書を作成しました。ご確認を」
「ふむふむ。うん、問題ない。初めの頃よりも上手く書けるようになっているじゃないか!」
「ありがとうございます。では、城下町の見回りに行って参ります」
「おう。頼んだぞ」
「トロン、行こうか」
「はい!」
エレミーテ王国騎士団と冒険者パーティによる合同調査から二日後、俺は一日の休みを挟んだ後、遊軍調査部隊としての通常業務に励んでいる。
慌しいながら、俺はいつもの日常へ戻れたことに少なからずホッとしている。
「あれから二日しか経っていないのに、何だか久しぶりって気がするよ。トロンと一緒に見回りに行くのって」
「え?そうですか?」
「まあな。あの一日が濃かっただけにかな?」
同行しているトロンと城下町を見回りながら、俺は呟いた。
合同調査の前から知らされた情報だったが、調査先のダンジョンに魔族が潜んでいたばかりか、キメラと言う複数の魔物で合成された生物の研究や量産を企てていた魔族ゲルデズと出くわし、戦闘に発展した。
最終的に勝利はできて、死者を出すことなく終えられた。
「調査で発見された物って、どうなるんでしょうか?魔族が使っている所有物ならば、気味が悪くて廃棄しそうな気もするんですけど……」
「魔族が使っていた物や魔道具の研究ははその対抗策を掴むきっかけにもなるから、研究者たちが解析が終わったら、その後どうするかを決めるらしいぞ。まあ、厳重に取り扱うのが前提であるけどな」
「そうなんですね」
発見物は騎士団が厳重に管理しており、魔族が扱う物の研究は慎重かつ確実に行うため、すぐに答えは出ないだろうけど、後はその道の専門家に任せるのが賢明だ。
俺たちは自分の仕事をするだけだ。
◇———
「あ~、美味かった!」
正午、俺は騎士団専用の食堂で昼食を取り終えた。
美味しい料理を食べ終えた俺は気分良く午後の仕事に励もうとした時だった。
「リュウト」
「はい?」
「リュウトにお客様が来てるぞ」
「俺にですか?」
ソフィア副隊長から俺に来客を伝えられ、一緒に応接室へ足を運ぶ。
扉を開けた先に待っていたのは……。
「リュウト……」
「リリナ?」
その相手はかつて俺が所属していた『戦鬼の大剣』の一員であるリリナだった。
だが、浮かない顔をしていることから、何か困りごとなのは分かる。
「リリナ、どうしたんだ?」
「実はね……」
俺とソフィア副隊長はリリナから話を聞かされた。
その内容は……。
「ガルドスとシェリーが行方を晦ました!?」
「うん。合同調査プロジェクトが終わってから宿に戻ると、ガルドスたちが大喧嘩しちゃったんだ。それからは各々で食事を取ったんだけど、その翌日、ガルドスとシェリーの二人だけが帰って来なかったの。昨日の段階ではアキリラとビーゴルも気にする素振りを見せなかったんだけど、今日になって流石に心配になったみたいで……」
「アキリラとビーゴルは?なぜ一緒ではないんだ?」
「二人にはガルドスとシェリーを探しに行ってもらってる」
「なるほど」
俺たちは行方不明になった騎士団の人間や国民の捜索も仕事としている。
その中に冒険者も含まれてはいるが、余程のことが無い限り、基本的に自分のパーティ内で起きた厄介事は自己責任で対処するものだ。
それを踏まえた上でリリナが俺や騎士団を頼ってきたのも、理由は大体察しが付く。
「本当なら私たち『戦鬼の大剣』のメンバーでどうにかするべきなんだけど、何だか……。嫌な予感がしてならないの。私たちだけではどうにもできないような何かが……」
「リリナ」
「リュウトはもう、エレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊の一員であって、『戦鬼の大剣』のメンバーでもなければ、冒険者でないのも分かり切った上でこんなことをお願いするのもおかしな話だけど……」
リリナは苦しそうで切なそうな表情で口を開く。
俺は黙って聞く。何をお願いしてくるのか、当に分かりきった上でだ。
「ガルドスとシェリーを探して下さい!私にできることがあったら、何だって協力します!お願いします!」
「「……」」
リリナは精一杯の気持ちで頭を下げた。
それを見た俺はソフィア副隊長と目を合わせて頷く。
「分かった。探してやるよ」
「ツッッ!ありがとう!リュウト!」
リリナは泣きそうな表情で俺に感謝してくれた。
「ソフィア副隊長!」
「分かってる。それでは、まずはこちらの書類に必要事項の記入をお願いします」
それからはソフィア副隊長が主導して手続きを進めていく。
「では、こちらの書類を我が隊の———」
「それならオッケーだぞ!」
「「「ッ!?」」」
そこへモーゼル隊長が応接室に入ってきた。
「この方って確か……」
「遊軍調査部隊の隊長だ」
「話なら聞かせてもらった!ソフィア!その書類を貸してくれ!」
「はい、どうぞ」
驚くリリナをよそに、モーゼル隊長はソフィア副隊長から書類を受け取り、テーブルにある羽ペンでサインを書いた。
それが書かれた書類は捜索を引き受けることを意味している。
「ほれ!これで捜索は受理された」
「ありがとうございます」
「ガルドスやシェリーたち『戦鬼の大剣』は合同調査の失態のペナルティはまだ決まってないからな。行方不明のままじゃ冒険者ギルド本部も困るだろ。ソフィア、さっきの話を下に手が空いている隊員たちにガルドスやシェリーを探し出すように指示してくれ!」
「かしこまりました」
「リュウト。後で人手を寄こすから、彼女と一緒に探すんだ」
「承知しました!リリナ!俺は装備品とかを用意してくるから、先に門の前で待っていてくれ!」
「うん!」
俺はリリナと一緒に応接室を出て、ガルドスとシェリーの捜索に向かうのだった。
◇———
「はぁ……はぁ……」
「ビーゴル!」
「アキリラ!」
「見つかった?」
「いや、まだ見つけられてねぇ!そっちは?」
「こっちもダメ!」
一方、ガルドスとシェリーを探しに城下町へ繰り出していたアキリラとビーゴル。
だが、結果は芳しくないようだ。
「クソッ、どこ行っちまったんだよ?」
「ガルドスには困ったものだわ!周りを顧みないところはあったけど、ここ最近ではそれが顕著よ!」
「だよな。リリナは?騎士団に捜索を願い出てんだろ?」
「まだ合流できてないわ」
アキリラとビーゴルはまだ探していない道を歩きながら見回している。
「ねぇ、ビーゴル。後でリリナにも話すつもりなんだけどさ」
「何だ?」
アキリラはビーゴルを見やりながら語り掛ける。
「一昨日の一件以来から考えていることがあるのよ」
「何をだよ?」
「近々伝えられるペナルティの内容によってはあたしたちのこれからが決まると思っているのよ。だからね、仮に降格とかを免れたとしても、私たちって……ん?」
「どうした?アキリラ」
するとアキリラは何かを見つけたような仕草を見せて足を止めた。
ビーゴルはアキリラが向いた先に視線を送った。
「被ったフードからちらりと見えたけど、あの髪色や雰囲気、もしかして?」
「アキリラ?」
アキリラはフードで顔を隠した黒いローブ姿の人間を見て、一目散に追いかけ始め、ビーゴルもそれに続く。
その様相を……。
「あれ?」
「アンリ、どうしたの?」
「シーナ副班長、あの人たちって?」
城下町をシーナさんと巡回しているアンリがアキリラとビーゴルの二人が誰かを追いかけていく場面を目撃した。
「確か、『戦鬼の大剣』の戦士と魔術師の方ですよね?」
「何してんだろう?」
だが、この時点で全く知らなかったんだ。
王都エメラフィールが激烈な状況に襲われてしまうことを……。
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